常陸太田市地域おこし協力隊OG長島さんとおかあさんらがつくる「いいあんばい」の里美御膳

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茨城県常陸太田市里美地区。この地区にある荒薪邸という築150年の素敵な古民家で、季節ごとに期間限定のレストランが開催されています。

「里美地区で代々伝わってきた家庭の味を“御膳”という形にして、みなさんに味わってもらいたい」という思いで元地域おこし協力隊 長島由佳さんが中心となって開催している「里美御膳」を味わいに里美へ行き、お話を伺いました。

パッチワークのような里山の風景

常陸太田市の北部、福島県との県境に位置する里美地区。水戸から水郡線に乗って「常陸太田」駅へ。そこからバスで1時間弱で里美に到着します。常陸太田市は土地の85%が森林というだけあって、今回訪れた里美も緑が豊かで、濃い緑や薄い緑、そして山のところどころに咲く花がまるでパッチワークのよう。清々しい空気に包まれ、そこに立つだけで心が洗われるようでした。

今回「春の里美のひるごはん」と題する期間限定レストランが開催されたのは古民家の荒蒔邸。私がお伺いしたのが日曜日ということもあり、多くのお客様が到着した時には既に里美御膳を楽しんでいらっしゃいました。

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立派な門構えの中をくぐり、タンポポの咲く庭を通り、会場となる母屋へ。築150年と歴史ある古民家で、土間にはかまど、玄関をあがると大きな囲炉裏、とても太い梁、広々とした空間。こんな素敵な場所でお昼ご飯が食べられると思うと、一歩入った時からワクワクしっぱなしです。そして同時に懐かしくホッとする雰囲気でもありました。

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ちなみにこちらの荒薪邸は貸し別荘タイプの農家民宿としても営業されています。常陸太田市は蕎麦もとても有名で、宿泊すると蕎麦打ち体験ができたりもします。家族や友人と、かまどでご飯を炊いて、道の駅で買い物をして旬のものをこんな素敵な空間で楽しむことができたら最高ですね。

 

「いいあんばい」のおかあさんの味

「里美御膳」では、里美に長年暮らすおかあさんたちが地元の旬の食材を使って作る家庭料理を味わえます。そこには、里美で代々受け継がれている知恵と技術がぎゅっと詰まっています。

今回は「春の里美のひるごはん」ということで山菜をはじめとして、春の味覚がたっぷりの内容となっていました。

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竹の子の土佐煮、アサツキの酢味噌和え、こごみの胡麻和え、しいたけの甘辛煮、切り干し大根、手作り刺身こんにゃく、キャベツの重ね漬けと花わさびの漬物。どれもまさしくコンセプトの通りの「いいあんばい」。特に酢味噌和えや胡麻和えのいいあんばいには心がほっこり。そしてキャベツの重ね漬けはおいしいのはもちろん、見た目の美しさにも感激。そして、お料理を運んでくださる時に食材について色々と教えてくれるのも、里美御膳のいいところです。花わさびというのは初めて聞いた!と言ったら実際に現物も見せてくれました。

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季節の天ぷらは、たらの芽、うどの葉、こごみ、たけのこ、かきあげ。そして名前がかわいらしい、ねぎぼんぼん。ねぎぼうずとも言う、ねぎのお花の部分です。

そしてなんと里美牛の焼肉まで。高級黒毛和牛ですが、休耕田で飼料を作ることにより、里山の美しい風景を守ることにもつながる環境に優しいお肉なのだそうです。そして、横にある肉巻きの中のお野菜ももちろん里美産。

ボリューム満点の里美御膳はまだ続きます。汁物の卵とじは山みつばのとてもよい香り。使われているお味噌は、里美御膳を作っているおかあさんのお一人がこうじ屋さんのため、そちらのお味噌が使われています。そして刻んだ花わさびの葉が入ったごはん。花わさびもおかあさんが杉林の中で育てているとのこと。花わさびは里美でも人気で直売所に出たらすぐに売り切れてしまうのだとか。里美御膳の会場でも販売していましたが、あっというまに完売でした。

〆のデザートは桜ゼリー。がまずみという木の実のシロップが使われていてピンクでかわいらしいゼリーでした。

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おいしいうえに、どの一品にもおかあさんたちの優しさを感じられて、食べ終わった頃にはお腹も心も大満足。

 

おかあさんたちに里美に住んでいてよかったなと思ってもらえるように

この里美御膳を立ち上げたのは合同会社ポットラックフィールド里美代表の長島由佳さん(下記写真:左)。2011年4月より3年間、地域おこし協力隊としてこの里美地区で活動後、「里美が好き、里美にいると幸せ。このままここで暮らしていたい、里美で働きたい!」ということで里美に定住。合同会社ポットラックフィールド里美を2015年3月13日(サトミの日!)に設立し、地域資源を活かした教育研修事業や、地域づくり事業、他地域のアドバイザー事業など、幅広く活動されています。

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大学卒業後、国際関係の仕事をしたいという思いで旅行会社に就職した長島さんは、次のステップを模索する中で地域おこし協力隊として里美地区に赴任しました。里美の水プロジェクトの立ち上げ、特産品である里美珈琲の商品化と販売、情報発信事業、そして里美御膳をはじめとする食に関する事業などを中心に活動してきました。

中でも「里美のおかあさんが作る料理のおいしさに魅了された」ということで、食に関する事業は里美御膳の他、「里美旬彩」という卓上レシピを地元のデザイナーと制作したり、食に関するツアーや料理教室を企画運営したりと様々取り組んできたそうです。

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「おかあさんたちの味を多くの人に伝えて喜んでもらえることで、おかあさんたちが日々をもっと幸せに、里美に住んでいてよかったなって思ってもらいたい」と長島さんは言います。

 

笑いのたえない明るいまかないタイム

里美御膳を堪能させていただいた後、おかあさんたちと長島さんのまかないタイムに私もお邪魔させていただきました。お伺いした日に腕をふるってくださっていたのは5名のおかあさん。日によってシフトを組んでいて、全部で6名のメンバーがいるそうです。

おかあさんたちのまかないタイムは御膳の残りものに加えて、持ち寄ったおかずやフルーツなどがテーブルにずらっと並んでいました。にぎやかで楽しそうで、いつも喧嘩しながらやっている、なんて笑いながらもその盛り上がりはとどまることを知らず、本当に明るくて元気なおかあさん方。そしてその横でその様子を見て微笑みながら一緒にまかないを食べる長島さん。もっと食べなさい、これも食べなさいとおかあさんたちが長島さんに言う様子などからも、これまで長島さんがおかあさんたちと築いてきた関係性、そして一緒に歩んできた同志の絆みたいなものが見えたような気がして、素敵な雰囲気でした。

そんな楽しくまかないを食べている間にも今日のこれはちょっとしょっぱいな、などと味のチェックと反省も。こうして、里美御膳は進化しているのだなと感じられた一面でした。

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ちなみに春の里美御膳は今回が初めてだったそうです。特に山菜などはタイミングが毎年違って食材の準備やメニューの考案がなかなか難しいのだとか。今年はちょうど竹の子もあり、山菜もたっぷり。そんな春の里美ごはんを食べられた私は幸せです。

知恵や技術、里美の旬、そしておかあさんたちの存在。全てがあるからあたたかくておいしい「里美御膳」。まかないタイムをご一緒させていただいたことで、おかあさんたちのパワーと明るさもその隠し味の一つなんだな〜と感じました。

おかあさんたちからすると日常の料理。一方で、そういう日常が都会や若い人から残念ながら少しずつ消えてしまっています。でもこういう里美御膳のような試みで触れることができるし、思い出すことができます。これ作ってみようかなと思うことができたらそれはまた未来に繋がります。食べる人もつくる人も幸せになり、豊かな食が未来に少しでも残ってほしいと思います。そしてそれを実現できるひとつが里美御膳だと思います。

これからもこの素敵な取り組みが、たくさんのお客様とおかあさんたちの笑顔を生み出しますように!

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松永直

松永直MATSUNAGA-nao

東京都出身。料理家および食に関するライター。
大学卒業後、マーケティング会社勤務を経て料理の道へ。主な活動は出張料理、食品メーカー向けメニュー開発、地域と都市をつなぐフードイベント企画・運営、企業や学校での料理教室など。
また、地域おこし協力隊として移住した友人と「しまの食堂」を立ち上げ、愛媛県上島町の食材を使った料理を都内各地で提供している。

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