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2016年8月17日 ココロココ編集部

写真を通して地域の魅力を再発見!「長浜ローカルフォトアカデミー」キックオフセミナー イベントレポート

滋賀県湖北に位置するまち、長浜市。美しく豊かな自然環境に恵まれ、「戦国の聖地」、「観音の里」、「長浜曳山まつり」等多くの歴史的遺産があります。戦国時代、羽柴秀吉が築いた自由都市・長浜は古くからの渡来の文化や産業を受け入れる進取の気性と住民自治の心が息づくまちです。

そんな長浜市で、2016年7月3日(日)「長浜ローカルフォトアカデミー」のキックオフセミナーが行われました。ローカルフォトとは、「地域の写真」のこと。長浜市も一部地域では過疎化が進み、地域を元気にするために何かできないかと考えていました。そんな折に、小豆島在住の7人の女性が島の魅力をカメラを通して伝える「小豆島カメラ」プロジェクトをはじめ、全国各地でカメラを使った地域活性のプロデュースをされている写真家のMOTOKOさんとご縁があり、長浜市を再び元気にするための「ローカルフォトアカデミー」をスタートすることになりました。

これから始まる「長浜ローカルフォトアカデミー」では、写真家・MOTOKO(大嶋素子)さんと堀越一孝さんたちが、地域に関心を持つ方々と一緒にまちを歩き、見つめ、語らい、そして考えます。

カメラメーカーの「オリンパス」と協働で開講する、写真を通してまちを元気にする「長浜ローカルフォトアカデミー」。「地域の写真」とは一体どのようなものなのか。写真を通して地方と関わるローカルフォトの魅力を探るキックオフセミナーに行ってきました!

今回のキックオフセミナーの主催はMOTOKOさんと堀越さん。ゲストには月刊「ソトコト」編集長 指出一正さんと、写真評論家のタカザワケンジさんをお招きし、ローカルフォトについて考えてみました。

まちと写真の関係性~ローカルフォトのおもしろさ~

まずは、月刊「ソトコト」編集長 指出一正さんに、まちとメディアの変化、そしてローカルフォトについてのお話を伺いました。

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▲月刊「ソトコト」編集長 指出一正さん

「近年、日本のローカルではおもしろい動きが続々と出てきています。長浜市もその一つ。シェアスペース「湖北暮らし案内所 どんどん」は農業、食品、環境など様々なテーマのイベントが開催される、湖北に住まう人たちが集う場所となっています。ソトコトでは、このようなおもしろい地域を訪れ、その地域の人と同じ立ち位置に立って、取材をしています。」と言う月刊「ソトコト」編集長の指出さん。長浜市以外にも徳島県神山町、新潟県十日町などの事例や取材した時のことを紹介し、地域との関わり方について具体的にお話しいただきました。

MOTOKOさんは、ご自身の経験から「おもしろいこと」の変化についてこのように言っています。「まちがメディア化し、雑誌が回覧板化してきたように思います。10年程前は『おもしろいこと』と言えば、東京や大阪にあって、それを見つけるために雑誌を買い、東京に行くなどの投資をしていました。今では、田植えやリノベーションなど「自分ごと化」できるものになり、『おもしろいこと』の在り方が大きく変わりました。みんな、暮らしの中から自分で楽しめるものがある事に気づいたんですね。」

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▲写真家MOTOKOさん

「旅行の在り方も変化しています。今までは“場所を訪れる”ことが主流でしたが“人に会いに行く”ことを目的とした旅行へ変化しています。これは、地域を新しい視点で再発見する人が増えてきたことが関係しています。再発見した地元の方や移住者がSNSなどで情報を発信すると、それを見て『おもしろい!』と感じた人が、その土地を訪れます。」

ローカルフォトを通じて「今、長浜市でおもしろいことが起こっている!」ということが伝わる写真を発信し、まちの外から来た人に「長浜の人が今までになかった魅力を作っている」と感じてもらい、関係人口を増やす。そうすると、さらにまちはおもしろく変化をします。今や、地域でおもしろいことをしている人は、その土地の資源となりつつあるのです。

 

ローカルフォトの歴史と現在 〜写真の誕生から「表現」に至るまで〜

つづいて“写真のことを分かりやすく伝える”写真評論家・タカザワケンジさんに「世界のローカルフォト」についてのお話しを伺います。

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▲写真の歴史についてお話しするタカザワケンジさん

1839年に写真が発明されてから、時代の節目となるような瞬間に立ち会い、現実を広く社会に伝えてきました。写真を多用するマスメディア(雑誌、新聞など)が台頭してきた1930年代後半、当時のフォトジャーナリストたちはバリやチュニジア、アメリカなど世界中を旅して撮影し、ローカルを表現しています。
この当時、写真は外からの目で地域の実情を伝え、また外(欧米)の人が地域(アジアなど)を知る大切な手段でもあったのです。プロのカメラマンたちは “写真を見たら、欧米の人々はどう感じるか”を計算して撮影し、各国の珍しいもの、美しいものを撮影し続けました。

「では、ここからは日本のローカルフォトについてご紹介しましょう。」
岩手県遠野で、「写真のおじさん」として親しまれた写真家・浦田穂一は、県外からの移住者でした。知り合いのいない、一度も訪れたこともない遠野の地に家族揃って移住してきた浦田は、まちや暮らしの写真を撮り続けることで地域のコミュニティに入っていった人物です。
「浦田さんっていうと、『あぁ、カメラの人ね』っていうぐらい浦田さんは遠野で有名だったそうですよ。」

「ローカルフォトの歴史は、地域の外の人の視線で撮られているものが多く残っています。人は同じ場所にいると、なかなか写真を撮らないのですが、どこかに出かけたり、新しい経験をすると写真を撮りたくなるようです。長浜ローカルフォトアカデミーでは、外からの視線で撮影した人と、地元目線で撮影した人で意見交換ができると面白い化学反応が起こるのではないでしょうか。」と言うタカザワさん。

参加者の皆さんがとても熱心に、スライドで流れる写真を見ているのが印象的でした。
歴史を振り返ると、多くの写真家が地域に関心を抱き、暮らしや土地、風俗に着目した写真を撮影しています。今回、ローカルフォトの歴史を知る事で、撮影する時の意識も変わりそうです。写真を介して地域に入ったり、新しい長浜の魅力を見つけることもできるかもしれません。

 

民俗学者 宮本常一の写真からみるローカルフォトとは?

第3部は、宮本氏の撮影した写真と地域をキーワードとしたトークセッションが行われました。日本を代表する民俗学者の一人、宮本常一(1907-1981)は日本中を調査しに歩き回り、記録に残すための手段としてオリンパスのカメラで日本各地を撮影しました。
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「宮本先生が訪れた山口県の阿武川、下北半島など全国様々な地域を、僕も訪ねて行った事があるんです。」そう切り出した指出さんは、前職のお仕事でも全国各地を訪ね歩いていたそうです。

また、昭和30〜40年代にかけて、宮本氏が行った地域と、現在課題を抱えている地域が不思議なことに同じなのだそうです。
「課題はありつつも、面白そうな地域が時代を超えてシンクロしているのではないでしょうか?宮本常一の見た視点がとても重要なのではないかと思います。現在はSNSにはきれいな風景や花などの“口当りの良い”写真が多いですが、その物事の本質を見るためには、撮影の許諾をとったり、意図をお話したりと煩わしい事もありますが、“きれいなだけじゃない”写真を撮ることの意味が重要になってきていると思います。後世に伝えないといけないもの、まちの宝を守り続けるために、見るものを変えないといけないのではと思った時に、宮本常一の写真が思い浮かびました。」と言うMOTOKOさん。

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▲左:フォトグラファー・プランナー 堀越一孝さん

「写真は、“上手い”“下手”はあまり関係ありません。宮本氏の写真は決して上手いものではありませんが、写っているものがとても面白い」と言うタカザワさん。 「『撮りたい』という気持ちを純粋に自分の中から出すことが大切です。構図がずれていたり、ちょっとボケていても、被写体は写っているんです。写真には“発見する力”があるのです。」

宮本常一の歩いて来た道、写真からローカルフォトの本質を教えていただきました。
「好奇心を動かす被写体、撮りたいという気持ちを大切にして撮影すると、社会や後世に気づきを残すことが出来るのではないでしょうか。」と言うのは、フォトグラファーであり、現在長崎県で地域おこし協力隊として活動している堀越さん。以前、行った滋賀県に暮らす米農家の撮影取材や、現在の写真をキーワードとした活動と重なる部分もあったようです。

地域に入るきっかけにもなるほど、大きな可能性を秘めているローカルフォト。ローカルフォトを通して、長浜市との新しい関わり方や魅力を再発見してみるのもいいですね。

 

交流会でローカルフォト、長浜の魅力を語り合う

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キックオフイベントの後は、ゲスト・参加者での交流会が開催されました。初めて長浜市に訪れた方、ずっと長浜市に住んでる方、大阪から3時間近くかけて来た方など様々な方々が長浜市に集まりました。「ローカルフォト」をキーワードに多くの方が集まる「長浜ローカルフォトアカデミー」。その活動にますます注目です!

「長浜ローカルフォトアカデミー」の連続講座は今後、3月までに6回程度開催を予定しています!ポートレート撮影、インタビュー術、コミュニケーション術をテーマに行います。カメラの技術だけではなく、撮影での被写体とのコミュニケーションなど実践的に学ぶ事の出来る時間となります。

詳細は決まり次第、長浜市HP及び長浜ローカルフォトアカデミーのFacebookにて情報発信されます。

■長浜市HP
https://www.city.nagahama.shiga.jp/index.cfm/6,48807,76,609,html

■長浜ローカルフォトアカデミーFacebook
https://www.facebook.com/nagahama.lpa/

長浜ローカルフォトアカデミーの活動に興味のある方は、ぜひ活動状況を見てみてくださいね!

 

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ココロココ編集部

ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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