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2016年10月20日 清水美由紀

長野県信濃町 プロスノーボーダー鬼頭春菜さんの自然の中で過ごすシンプル&リラックスなライフスタイル

新潟県との県境に位置する、長野県信濃町に移り住んだプロスノーボーダーの鬼頭春菜さん。

滋賀県出身の鬼頭さんは、スノーボードやSUP(スタンドアップパドルボード:浮力の強いサーフボードに立ち、パドルで漕ぐウォータースポーツ)にまつわる様々な活動をしながら、信濃町の豊かな自然を満喫している。

信濃町での生活の楽しみや、信濃町で暮らすようになった経緯を伺いました。

スノーボード中心の生活を求めて選んだ信州の地

鬼頭さんの仕事は、スノーボードやSUPにまつわることだ。夏はSUP、冬はスノーボードのレッスンやツアー企画・運営を行っている会社「SLOPE PLANNING」を夫婦で運営している。また、北海道ニセコ発のスノーボードブランド「Gentemstick-snowsurf」とプロライダー契約を結び、スノーボードのデザインやカタログ製作に参加するほか、プロジェクト企画や営業方針策定、イメージ戦略・広報といった仕事まで幅を広げている。他にも、「パタゴニア」のアンバサダーや雑誌のスチール撮影、動画撮影のモデルも務める。

SLOPE PLANNINGでの活動風景▲「SLOPE PLANNING」での活動風景

「もともとSLOPE PLANNINGは主人の始めた会社なんです。スノーボードのイベント企画や、ゲレンデのコース設計、レッスンなどをしていて、数年前からSUPのレッスンやツアーも野尻湖で始めました。SUPはスノーボーダーのオフトレにもいいんです。」

野尻湖でSUP▲野尻湖でSUP

鬼頭さんが信濃町に暮らし始めたのは、2008年のこと。16歳の頃に始めたスノーボードにのめり込み、スノーボード中心の生活を送るために滋賀県から長野県へと引っ越したのだという。白馬村、長野市と移り住んだのち、信濃町を選んだ。

「それなりに若かったので、長野市の街の暮らしを楽しみながら暮らしていたんですが、信濃町近辺の山の雰囲気が好きで、もっと山の近くに住みたいなと思うようになったころ、信濃町の今の家に出会ったんです。自然豊かな場所というのが第一印象でした。」
信濃町近郊にはゲレンデが多数あり、一番近いゲレンデには信濃町中心地から車で10分程で到着できる。県境なので、新潟のゲレンデにも約15分というスノーボーダー・スキーヤーにとって、類を見ない好立地なのだ。

ゲレンデから野尻湖を眺める▲ゲレンデから野尻湖を眺める

アクセスの良さはゲレンデに限ったことではないと言う。信濃町の中心地から上信越自動車道信濃町I.C.までは車で約5分、隣接する長野市から新幹線を利用すれば東京まで1時間半だ。また日本海側にも出やすく、約40分のドライブで海まで行くことができる。好きなゲレンデに近いという理由から住み始めた信濃町だが、住むほどに魅力に気づいたという鬼頭さん。

鬼頭さん1

「信濃町に住み始めてからやりたいことが増えていったんです。ライフスタイルと信濃町の環境がぴったりフィットした感じでした。こんな素敵な場所、あんまりないんじゃないかな。一番嬉しいのは、移動時間が減った分、大好きなフィールドに長くいられるようになったこと。家から山を見れば、雲の感じで雪が降っているか、滑れる状況なのかが瞬時に判断できるから無駄がないですよ。」

 

大自然に身を置き、遊び、自然の恵みをいただく

信濃町では、ごくシンプルな暮らしをしているという。夏は、のんびり朝ごはんを食べ、ストレッチをしてから湖でSUPをするか、海まで行ってサーフィンをする。冬は早起きして、スノーボードをして、温泉に浸かる。テラスでコーヒーを淹れてのんびりする。農産物直売所で購入したり、ご近所さんからいただいた新鮮な地場野菜をシンプルに調理する。

信濃町から妙高山▲信濃町の夕焼け。鬼頭さんの好きな風景の1つだそう

「バジルでジェノベーゼソースを作ったり、ダッチオーブンで野菜のグリルを作ったり。『今日の夜は焼き焼きにしよう!』と言って、焚き火台でBBQすることも多いですね。」
県外の友達が遊びに来た時や、他の移住者との食事会にもBBQは欠かせない存在の様子。
「家族ぐるみでよく遊ぶんですが、それぞれの出身地から送ってもらったご当地グルメや食材を持ち寄っていただくのも楽しいんです。」

結婚式▲幸せいっぱいの結婚式

鬼頭さんは、手に届く範囲にあるものを上手に活かしながら暮らし、仕事にしている。今夏行われた結婚式にもそのスタイルが貫かれていた。鬼頭さんがご結婚されたのは、8年来のパートナーであるプロスノーボーダーの丸山隼人さん。結婚式は信濃町の隣町である飯綱町のワイナリーで、そして二次会は信濃町にある野尻湖に面したキャンプ場を貸し切って行ったのだそう。テント泊の人がいたり、ベッドで寝たい人のために近くのゲストハウス「LAMP」を貸し切りにしたりして、集まった参列者とともに森の中で楽しい時間を過ごした。

結婚式▲自然の中での結婚式はとても鬼頭さんらしい

 

リラックスして暮らせる、理想のライフスタイルを求めて

理想のライフスタイルに少しづつ近づいている実感があるという鬼頭さんだが、もちろん最初からうまくいったわけではない。信濃町に引っ越したばかりの頃は仕事がほとんどなく、アルバイトとスノーボードの仕事をかけもちした。

「いつか好きなことを仕事にして暮らしていきたいと、主人と話していました。どうやったら暮らしていけるのか試行錯誤しながら、悩みながら、少しづつやりたい形に近づいていったんです。環境に恵まれてSLOPE PLANNINGを立ち上げることができましたが、ゼロから生み出すというのは、本当に大変なことだし、勇気もいるし。だから、バトルも多かったですよ。」そう笑いながら、話を続けた。「でも、同じことに携わってきたふたりだからできるんです。夫婦で仕事できるのは、心強いですよね。」

野尻湖の朝焼け▲野尻湖の朝焼け

信濃町で暮らすこと。鬼頭さんが理想のライフスタイルを求めて悶々とした時期も、彼女はポジティブなエネルギーで、きっとカラッとした明るい日々に変換してきたことだろう。大自然に囲まれているからこそのハプニングも当然ある。雪でテラスの柵が落ちたり、水道管が破裂したり、遠征から戻ると家が雪で埋まっていて、夜中に車のライトで照らしながら2時間雪かきをしたこともある。

鬼頭さん3

「雪にまつわるエピソードは色々ありますよ。でも、信濃町で暮らして良かったことの方が断然多いんです。毎日何かがあるわけじゃないけど、散歩していたらいい景色に出会えたり、朝日や夕日がきれいだったり。季節を感じながら過ごしていると、心がとても満たされます。香りや気温、色の違いで、四季の変化がとても近くで感じられるんです。春は山菜採り。それから徐々に湖遊びが始まって、夏は登山と、ウォータースポーツ。秋は果物やキノコ狩り。冬はスキーにスノーボード、スノーシュートレッキングもできて、それぞれの季節に合わせた遊びができるのも信濃町の魅力かな。」

自分の思う理想のライフスタイルを実現している一例として、今回鬼頭さんをご紹介した。信濃町で暮らすイメージをするだけでなく、自分のライフスタイルを見直すきっかけになってくれれば嬉しい。

取材先

プロスノーボーダー鬼頭春菜さん

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清水美由紀

清水美由紀フォトグラファー。自然豊かな松本で生まれ育ち、刻々と表情を変える光や季節の変化に魅せられる。物語を感じさせる情感ある写真のスタイルを得意とし、ライフスタイル系の媒体での撮影に加え、執筆やスタイリングも手がける。身近にあったクラフトに興味を持ち、全国の民芸を訪ねたzine「日日工芸」を制作。自分もまわりも環境にとっても齟齬のないヘルシーな暮らしを心がけている。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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