福井の新しいランドマーク誕生!全国から集うゲストハウスSAMMIE’Sの魅力とは

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「福井」駅の東口から徒歩5分、通称”駅裏”と呼ばれている地域に2015年8月「福井ゲストハウスSAMMIE’S」が誕生した。オーナーは森岡咲子さん。高校まで福井で過ごし、大学進学を機に上京した。就職してからも東京・名古屋と都会で過ごしていた森岡さんが福井に戻って始めたのは、空き家を自分たちで改修するゲストハウスづくり。”セルフリノベーション”を経て誕生したゲストハウス「SAMMIE’S」は今や多くのゲストたちに愛される場所となっている。Uターンを決めたきっかけや地元に戻ったからこそわかる福井の魅力など、森岡さんに熱く語っていただいた。

福井は何もない場所だと思っていました。

「昔は地元が嫌いでした。」と言う森岡さん。人間関係の狭さ、情報の薄さ、刺激の少なさなど、福井に何の魅力も感じず、高校卒業後は東京の大学に進学した。大好きな吉祥寺と下北沢に通い、バイトと旅に明け暮れた学生生活。卒業後も大手建設会社に就職し、都会の生活を満喫していた。地元の友だちからは「もうさっこは福井に帰ってこないだろうな」と思われていたし、何より森岡さん自身も福井に帰るつもりはなかった。

社会人としてさまざまな経験を積み、これから先どんな人生を歩んでいくのだろう。そうぼんやり思い始めていた頃、東日本大震災が起こった。築き上げていた生活が一瞬で崩れてしまう世の中の光景を目の当たりにし、本当に自分がやりたいと思うことは何なのだろうかと、地元・福井にも少しずつ目を向けるようになった。森岡さんは都市部と地元と往復する中で、自分が10代の頃に抱いていた福井の印象とは少しずつ変わっていることに気づく。

山や海が身近にある風景。美味しい空気と水。地元に居た頃は当たり前すぎる景色だったが、都会で暮らしたからこそ、その魅力を再発見するようになった。

「福井に対する印象を大きく変えたのは『福井人』という本との出会いです。私と同世代の人たちが中心となって福井の面白さを発掘していく活動にとても刺激を受けたのと、福井県鯖江市河和田という地区にどんどん県外から魅力的な人たちが移住しているのを知りワクワクしました。『これから福井が面白くなるかも!この流れに私も飛び込んでみたい!』と思うようになったんです。」

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▲福井って実は面白い場所なのかも…そう思うきっかけとなった書籍「Community Travel Guide 福井人」

あんな面白い場所がない!?それなら私が作ります!

そんな時、たまたま福井に戻っていた森岡さんは、ホテルではなくゲストハウスに泊まってみようと探すものの、福井市内にはゲストハウスがないことを知る。

「日本国内や海外を旅していた時によくゲストハウスを利用していました。年齢も境遇も違う旅行者同士が出会ったり情報交換したりする、そんな面白い場所が福井にないなんて…。いつかはできるかもしれないけど、こんな楽しい場所を誰か他の人が作ってしまったら絶対後悔するだろうから、それなら自分で作ってしまおうと思いました(笑)」

そう決めた後の行動は早い。仕事で培った建築や不動産の知識に加え、地元の土地勘もあったことから、あれよあれよという間に物件が決まった。 福井でも”駅裏”のエリアを選んだのは、物件との出会いもさることながら独特の雰囲気にひかれたのが大きな理由だ。

「駅から徒歩圏内にもかかわらず、静かで昔ながらの文化がある場所だなと思いました。何代も前からここで住んでいる方や昔ながらのお店や銭湯(現在休業中)も近くにあって、ここなら絶対いいゲストハウスになるだろうなと。まさに直感です!」

Uターンを機に建設会社を退職。しかし、大好きな建築や不動産の世界とはこれからも関わり続けたい。 「どうせなら、現場の面白さや大変さを自分で体験して、そのプロセスをみんなにシェアしよう!」 と、森岡さんは取得した古民家を自分の手でゲストハウスに改修する決心をした。2015年、3月のことだった。

それからオープンに向けて、森岡さんはコツコツと改修を進めていく。「駅の近くにセルフリノベーションでゲストハウスを作っている人がいるらしい」と森岡さんの噂は人づてやSNS上で広がり、友人だけでなく興味を持った県内外の人が訪れるようになった。壁を塗ったり床を張ったりなど作業を手伝う仲間の輪も次々に広がっていった。

手伝ってくれた人はなんと約300人!SAMMIE’Sはみんなで作り上げた空間だ。

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▲壁塗り大会では大人から小さな職人たちまで大活躍!

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▲手探りで進んだリノベーション。森岡さんの人柄と熱い想いに共感する仲間が増えていった。

こうして2015年8月、「福井ゲストハウスSAMMIE’S」がオープンした。 お披露目会では福井県内だけでなく、東京の友人もスカイプで参加。福井に新しいランドマークが誕生したことに対する皆の期待の高さをひしひしと感じ、背筋が伸びたひと時でもあった。

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▲ゲストハウスの完成をお祝いして行われた「菓子まき」。地元では昔からおめでたい時に行うセレモニーだ。

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▲お披露目会ではSAMMIE’Sの完成を心待ちにしていた多くの方が祝った。photo by TATSUO MAEDA(AURACROSS)

毎日新しい家族が生まれる場所

オープンから3ヶ月。連日、SAMMIE’Sには県内外から多くの人が訪れているが、すでに複数回利用しているゲストも増えつつある。その一人が、今年10月に大阪から福井へ移住した永山恭平さんだ。

もともと人材業界の企業に勤めていたものの、メガネが好きが高じてメガネに関わる仕事を志すうようになったという永山さん。SAMMIE’Sは転職活動で福井を訪れた際の拠点として利用するようになった。

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▲福井にあるメガネ関連企業への転職が決まった永山さん。引越し前日の宿泊ももちろんSAMMIE’Sだ。

「福井は東尋坊や恐竜博物館、鯖江のメガネといったイメージしかありませんでした。でもSAMMIE’Sを訪れる度に、いつも新しい福井の魅力を発見するんです。ただ宿泊する場所として訪れるのではなく、泊まっている人との出会いやふれあいが心地よくて、一泊だけのつもりが延泊してしまうことも…(笑)福井に住むようになっても通いたい場所です。」

SAMMIE’Sに訪れたゲストに対してまず森岡さんが行うのは、「ゲスト同士を紹介し合う」ことだ。

「こちら、○○からきた▲▲さんです」

SAMMIE’Sの定員は10名。多すぎず、少なすぎず、皆が程よくコミュニケーションを取れるちょうどいい人数だ。一晩同じ空間を共にするゲストがどんな人物か、ささいなことだが森岡さんのちょっとした声がけで、お互いの距離が一気に近くなる。

また、SAMMIE’Sには他にもゲスト同士が仲良くなるためのちょっとした工夫がある。それは1階中央のリビングだ。

「お部屋や廊下などは落ち着いた色にしていますが、リビングだけは薄めた柿渋を塗って他のスペースより床を明るくしているんです。みんなが集まる場所はあたたかくて明るい雰囲気にしたいなぁと思って。」

そんな森岡さんの狙いどおり、SAMMIE’Sの中央にある空間には夜になると自然と人が集まってくる。

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▲ほんのり明るい空間に漂う賑やかな雰囲気。ゲスト同士の会話も盛り上がる。photo by TATSUO MAEDA(AURACROSS)

ある人は共同のキッチンで軽いおつまみを作り、ある人は訪れた先で手に入れたお酒をふるまい、またある人は旅の出来事を報告しながら翌日の予定を立てていく…。

「みんなでごはんを食べたりおしゃべりをしたりしていると、翌朝には家族のように距離が近くなっているんです。不思議なもので、その日初めて出会ったのに実は共通の知り合いがいた!なんて偶然もSAMMIE’Sではよくあるんですよ。その度に鳥肌が立つような興奮を覚えますし、そんな光景に立ち会うことができて心底幸せです。」 という森岡さん。

SAMMIE’Sでは毎日のように新しい家族が生まれている。

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▲SAMMIE’Sのリビングでチェックアウト前に撮る記念写真は、さながら「家族写真」のようだ。

宿業を営むことは恋することと似ているかもしれない。

宿業初心者の森岡さんにとって、ゲストハウスの運営は大変なことも多いのでは? そう尋ねると、森岡さんはニコニコしてこう答えた。

「たしかに今は一人で運営しているので、慣れないことばかりです。でも、どうやってSAMMIE’Sを知ってくださったんだろうとか、なんで旅行先に福井を選んでくれたんだろうとゲストのことを考えていると、毎日恋しているような気分になるんです。実際、体力的にはハードだと思うんですが、オープン前よりもお肌の調子はずっといいんですよ。」

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ドキドキしながらゲストを迎え、同じ屋根の下で一晩過ごし、翌朝笑顔で送り出す毎日。チェックアウトはいつも名残惜しくてほんのり切ない。

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▲ゲストを見送る森岡さん。「まるで旅の帰りを待つ、港の女のような心境ですね(笑)」photo by TATSUO MAEDA(AURACROSS)

Uターンをしたからこそ見えた福井の可能性

SAMMIE’Sに泊まるゲストは、ほとんどが観光目的だ。

「Uターンをして良かったなと思うのは、一度都会に出たからこそ、外からの目線で福井の良いところを見つけられること。地元の人にとっては当たり前すぎるような場所でも、ゲストに紹介すると『福井にこんな面白いところがあるなんて!』と喜んでいただけることが多いんです。」

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▲福井のさまざまな情報が集約されているスペース。フライヤーを物色しながら行き先を決めるゲストも多い。

温泉、食、モノづくり、歴史、自然…福井はいろんなニーズに応えられる場所だと言う森岡さん。しかし、実際にゲストの要望に応えようとすると、地域に対する課題が見えてくる。例えば福井の場合、それぞれの観光地が離れているため、1日で回ろうとすると公共交通機関では本数が少なく不便だったり、情報が限られていたりすることも多い。

「SAMMIE’Sを作っていた頃は ”ゲストと自分が楽しめる場所” になればいいやと思ってました。地域のため、とか福井を変えようという思いはなかったんです。しかし、ゲストに福井を楽しんでもらうためにはどうすればいいかを考えると、地域のことに目を向けないわけにはいきません。もっと多くの人に福井を好きになってもらえるように、福井をよりよくしていきたい!行政に対しての働きかけや地域の横のつながりなど、パブリックな部分でも自分が動けることがあるんじゃないか、という思いが強くなっています。」

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▲トイレの壁にはタイルで作った福井県模様が。森岡さんの福井に対する愛を感じる。

福井は今、街も人も変わりつつある。勢いを無くしていた駅前の商店街には少しずつ新しい店舗が生まれ、皆が集える場を作ろうと幅広い年代の人たちが知恵を出し合い、どうすればこの地域が楽しくなるかを本気で考える人たちが増えている。 『福井はこれからきっと面白くなる!』という森岡さんの予感は的中した。

「SAMMIE’Sは自分の子供のようなもの、そして福井はわたしの大事なルーツです。変わっていこうとする福井の街の動きにどんどん絡んでいきたいし、たくさんの人を巻き込んでいきたい。まずはSAMMIE’Sを大事に育てていくことが一番ですが、これからもっと面白いことが実現できるんじゃないだろうかと妄想は膨らむばかりです!」

これからのSAMMIE’Sに、そして福井にますます目が離せない。

福井ゲストハウスSAMMIE’S

所在地:福井市日之出2-6-8
電話:0776-97-9559
https://www.facebook.com/sammies291gh

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取材先

SAMMIE’S オーナー 森岡咲子さん

1986年福井県生まれ。東京大学経済学部卒業。 大手建設会社勤務を経て、2015年にUターン。
福井駅東口徒歩5分の一軒家をセルフリノベーションし、 2015年8月「福井ゲストハウス SAMMIE’S」を開業。 初めて会ったのにそんな気がしない人懐こい笑顔と 人を惹きつける軽快なトークが魅力。

石原藍

石原藍ISHIHARA-ai

大阪府豊中市出身。フリーランスライター兼プランナー。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、自分にとっても心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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