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2016年1月21日 高崎みちこ

【イーハトーブアカデミー】観光でも移住でもない、多拠点居住の先駆者が語る「花巻+α」という生き方~前篇~

花巻市を拠点として縦横無尽に活躍する起業家、『東北食べる通信』編集長の高橋博之さんと『花巻家守舎』の小友康広さん。東京から花巻まで新幹線で3時間。空港や高速道路のアクセスも良好な花巻には、複数の地域を行き来しながら仕事を創り、新たな生き方や価値観を生み出している先駆者がいます。今回はおふたりに大好きな花巻や自らの多拠点生活について語って頂きました。

いきなり移住はできないけれど、自分のホームグラウンドと自分にかかわりのある地域を行き来するという、新たな働き方や生き方に関心のある人が増えています。このなかで花巻市はココロココ編集部とタッグを組んで、2016年から『イーハトーブアカデミー』というプロジェクトをスタートします。『イーハトーブアカデミー』は、首都圏在住者や花巻市民が楽しみながら花巻の魅力や地域課題を共有し、一緒に考える場をつくるというものです。これに先駆けて、“多拠点なシゴトと暮らしを創る――『イーハトーブアカデミー』キックオフ交流会”が12月13日に東京のHAPON新宿で開催されました。

 

都会と地方にはそれぞれの良さがある、ふるさとは複数あってもいい

高橋博之さん(『東北食べる通信』 編集長/NPO法人東北開墾 代表理事/
一般社団法人『日本食べる通信リーグ』 代表理事)

高橋博之さんは花巻市出身。2013年7月に生産者と消費者をつなぐ食べ物付き情報誌『東北食べる通信』を立ち上げました。現在はそのコンセプトに共感する仲間を全国に広げるために、3年で100の『食べる通信』創刊を目指して日本各地を飛び回っています。花巻にいるのは月に数日だけという多忙な博之さんですが、花巻に帰った時は宮澤賢治の「下の畑」の周辺をよく散歩するそうです。

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―――高橋博之さんの話
花巻には早池峰神楽(はやちねかぐら)があり、豊かな精神性が残っています。都会では失われたものが、花巻にはある。例えば神楽を踊るおじさんは、「お面をかぶると神が降臨してきて、俺の体を使って勝手に踊りだすんだ」とか平気でいうわけですよ。そういう豊かな世界観やリアリティは、コンクリートで固められた都会のなかでは感じられなくなっています。

最近の東京の大学生は、親戚づきあいや近所づきあいに憧れるそうです。東京生まれの東京育ちという人が多くて、隣近所の濃厚な関係や豊かな自然がない。だから、そういうものがある地方の暮らしに純粋に憧れるという。僕は若い頃、それがイヤで上京したんですけどね。都市で埋められないものや、都市が喪失した価値は、地方にたくさん残っています。地方から都会に行く回路には就職や進学がありますが、都会から地方に行くための回路は観光と移住ぐらいしかなくて閉ざされている。観光と移住の中間をつなぐ階段がもっと必要だと思います。

都会と地方、どちらにもいいところはあります。だから、これからは都会と地方がそれぞれの強みや弱みを補いあえる関係をつくればいい。ふるさとは1ヵ所じゃなくて、複数あってもいいんです。都会か地方という二者択一ではなく、どちらもパラレルに生きていく。そういう生き方を多くの人ができれば、日本はもっと元気になると思います。みなさんもぜひ、花巻におこし頂ければと思います。

NPO法人東北開墾:http://kaikon.jp
『東北食べる通信』:http://taberu.me/tohoku/
一般社団法人 日本食べる通信リーグ:http://taberu.me/

 

花巻が大好き、チャレンジしたい人が集まればもっと好きな町になる

小友康広さん(株式会社小友木材店代表取締役/ 株式会社花巻家守舎代表取締役/ スターティアラボ株式会社 取締役)

小友康広さんは花巻と東京を月に2週間ずつ行き来しながら、業種が異なる3つのビジネスに挑戦しています。東京では最先端のIT分野で技術開発などを手掛ける『スターティアラボ』の取締役・開発部門責任者。花巻では創業110年の老舗『小友木材店』の4代目であり、2015年4月に設立された『花巻家守舎』の代表取締役も務めています。

小友さんは子供の頃から実家の木材店を継ぎたいと考えていたそうです。大学卒業後は修行のために、10年の期間限定で東京のIT企業に就職。2年前に先代が亡くなられたため家業を継ぎ、花巻と東京での2拠点生活が始まりました。「東京のIT企業」と「花巻の老舗木材店」という全く違うカテゴリーですが、「都市×地方」、「IT産業×林業」、「最先端の技術×伝統的な技術」など、それぞれの良さを組み合わせることで、小友さんは新たなチャレンジの可能性を広げようとしています。

昨年4月には地元の若手メンバーとともに『花巻家守舎』を設立。JR花巻駅周辺に活気を取り戻すために、駅前の遊休不動産を再活用する取り組みも始めたそうです。最初にリノベーションを手掛けたのは、花巻市内で最も古い築53年の自社ビル。小友さんは花巻を「チャレンジする大人が集まるまち」にしたいと考えています。

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―――小友康広さんの話

僕は小友木材店を世界で一番「カッコいい」木材店にすることが小さな頃からの夢です。グーグルに就職するか、小友木材店に就職するかと迷うような会社になりたいと思っています。小さい頃から自分が大好きな花巻でも世界に通用する団体を作れるということを証明したいと思っていました。田舎だからできない、そんな既成概念を壊したいと考えています。

これからは住むところを自由に選べる時代です。そのなかで何が一番ポイントかといえば、やっぱり「人」だと思います。食べ物や暮らす環境もそうですが、誰が近くにいるか。誰と一緒に過ごしたくて、暮らしたいか。それがすごく大事ですね。

僕はチャレンジする人が大好きで、そういう人を応援したいと思っています。価値観の連鎖というか、今は価値観でつながることができる世の中なので、そういう人たちが集まってきたらもっと自分が好きな花巻になる。何かに挑みたい人が集まってもらえる場所にしていきたいです。

小友康広さんの関連記事はこちら→https://cocolococo.jp/3743
小友木材店:http://www.otomoku.co.jp/
花巻家守舎:https://www.facebook.com/hanamakiyamorisha/

 

花巻をみんなで「キュレーション」しよう

高橋信一郎さん(花巻市役所・秘書政策課定住推進係長)

花巻市役所の高橋信一郎さんは、『キュレーション花巻』という企画案について語りました。高橋さんは埋蔵文化財の学芸員として、エジプトでの調査に参加した経験もあるそうです。キュレーションとは、様々な情報を収集して分類し、新たな価値を生み出して共有すること。高橋さんはこの手法を花巻市の今後の取り組みにも応用できないかと考えています。

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―――高橋信一郎さんの話
花巻市といえば、宮澤賢治や花巻東高校を連想する人が多いようです。でも、それだけじゃない。ユネスコの無形文化遺産に登録された早池峰神楽など、他にもたくさんの魅力があるのに、あまり知られていないんです。『キュレーション花巻』では、首都圏や花巻市民からキュレーターとなってくださる方を募集し、花巻の地域資源や情報を整理して組み合わせることで、新たな価値や魅力を見つけて発信していきたいと考えています。

花巻の歴史や食文化、産業、温泉など、どんな視点でどう組み合わせるか。みなさんにもぜひ、花巻の魅力をキュレーションすることに関わって頂きたいです。2月下旬には首都圏在住者と、花巻市民を対象にした関連イベントを花巻で開催します。首都圏の参加者のなかで花巻に興味がある方には、実際に2月に現地に来て頂いて、花巻の良さや魅力を見つけてもらう機会をつくる予定です。今後、花巻ファンや関係人口を増やすきっかけにもつなげていけたらと思っています。

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高崎みちこ
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高崎みちこ

高崎みちこ熊本県出身。フリーランスインタビュアー&エディター 人生のハンドルは自分の手で握りたい。自分らしく、自分の手で、人生のハンドルを握って生きている人に興味があります。わたしはその人たちの想いを紡ぐことで、ワクワクする未来を可視化したいです。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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