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2016年3月8日 小川佳奈代

南国の浜で熱帯魚とたわむれる!都会にはない原体験の宝庫・南大隅町で暮らす

海、山、里のすべてがそろう本土最南端の町、南大隅町。過疎化と高齢化が同時に進む一方で、都会にはない魅力を感じて移住してくる人も増えつつあるという。今回は、移住歴1年、ここが大好きで熊本からIターンした陶山優子さんを訪ね、話を聞いてみた。

幼き日の極上の自然体験が、南大隅町への移住のきっかけに

町役場から車で5分、社会福祉協議会にうかがうと、物腰やわらかな女性が出てきてくれた。陶山優子さん、41歳。メガネの奥の瞳が、とてもあたたかい。 南大隅町に移住したのは今からちょうど1年前の2015年3月。当時7ヵ月の息子と夫の3人で熊本からやってきた。出身は福岡だが、30年前に、大隅半島の鹿屋(かのや)市(南大隅町から約30km)に住んでいたことがあり、その頃の記憶が移住のきっかけにもなったという。

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「休みになると、父がよく海に連れて行ってくれたんです。それが南大隅町の浜で。大潮のときを狙って磯に行くと、熱帯魚がすくえるんですよ!もう楽しくってたまらなかったですね。」

普通、水族館やペットショップでしか見ることのない熱帯魚。それを自分の手に捕るという、何ともうらやましい体験。真っ青な海と空と風を全身に感じながら過ごした日々は、子供時代にどんなに色鮮やかに映っただろう。この特別な思い出が、その後の彼女の人生の重要な指針となった。

 

子どもにも、同じような自然体験をさせてあげたい

陶山さんは、20代は福岡でOLや中学校の嘱託職員をし、30代には鹿児島大学農学部へ入学。その後、熊本でパーマカルチャーを研究するNPO団体のお手伝いをしながら、持続可能で農的なライフスタイルや、地域について興味を深めていく。結婚して子供が生まれたのを機に、具体的な移住先を考えたという。

「子育てするなら自然のある場所でと思っていました。子供にも自分と同じ楽しい体験をさせてあげたくて。」

そんなころ、南大隅町の地域おこし協力隊の募集を知り、応募。残念ながら選考には漏れてしまったが、運よく今の職場を紹介してもらえ、試験をクリアした。今、町の福祉を担う人材として、生活困窮者対策のほか、老人クラブの担当や、子供ボランティアの企画を任されている。

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「まだ1年目なので、決まった行事をこなした、という感じでしょうか。老人クラブでは、グラウンドゴルフ大会やゲートボール大会などの運営、栄養教室の準備などをやりました。子供ボランティアのほうは、自然体験と清掃ボランティアの企画や運営ですね。清掃ボランティアというのは、山歩きで身近な自然を楽しみつつゴミ拾いをするというものです。今年はこの“老人”と“子供”の二者をくっつけて何か企画をやってみたいと考えています」。

 

“つながり”が実感できるありがたさ

陶山さん一家は今、町営住宅で暮らしている。ご主人は、今はイクメンとして家事育児に専念中だ。
「夫の仕事は料理関係なので、仕事は結構どうにでもなるかなって(笑)。子供を連れて子育て支援センターに出かけて、ママ友も作ってるみたいです。楽しく過ごしてますね。」
都会と違い、もちろん待機児童もいないので、今後は保育園に預けて、ご主人も仕事を再開を検討しているという。

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近所付き合いも上々だ。「移住してきたんです、というとおばあちゃんから『ありがとう』と言われて、『こちらこそ』と返したり(笑)。野菜をいただくことも多いです。それもすごくたくさん!お返しするものがないので、夫がコロッケなんかを作ったり。近所の方にごはんに誘ってもらったりもしています。」
住民同士のつながりが多く、戸惑うこともあるけれど、そのことが「暮らしの安心」につながっているという。

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役場の近くには『なんたん市場』というところがあり、よく利用するそう。地元産の食材が豊富にそろっている。道のいたるところに野菜の無人市が残っているのも陶山さんにとっては新鮮だ。いずれ利用してみたいと笑う。

 

暮らしと働くことが近くにある幸せ

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都市部にいたころ、経済優先の価値観に違和感を覚えていた陶山さん。仲間と「豊かさとは何か」といった勉強会を開くこともあったという。しかし今、こころのふるさとに戻り、その問いの答えを見つけつつある。また、移住に際して多くの人は職の不安を挙げるが、陶山さんから見れば、田舎での暮らし・仕事は可能性に満ちているという。

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「田舎に来ると確かに“職”はないけど、仕事はいろいろありますよね、農作業とか。もっと暮らしと働くことが近い方が幸せなのかなと。福岡で働いていたときに、お金のために働いている虚しさのようなものがあって…。そうでない働き方って田舎や、一次産業とかにあるのかなと考えていたのですが、実際に来てみたら、やっぱりそうだと思いました。せっかく田舎で暮らすのだから、地域の人がうれしくて、こっちもちょっとお金になるといったことを探していければと思っています。」

 

地域とのかかわりを楽しむ

少子高齢化が進行し、深刻な課題を抱えるこの町では、新たな福祉のカタチを模索する動きが活発だ。今回募集している「介護福祉課」の地域おこし協力隊員は、陶山さんや社会福祉協議会のメンバーと連携して、高齢者福祉の新しい取り組みを担当することになる。

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陶山さんに、これから協力隊に応募する方へのメッセージをお願いしたところ、 「地域になじんで顔を知ってもらうのが大事。仕事と生活を分けずにいろんなところに出て活動すると、うまくいくし楽しいんじゃないかと思います」とアドバイスしてくれた。 また移住したら、地域や婦人会などの集まりにも積極的に入った方が良いともいう。
都会では、働く場所と住む場所が別々で、地域コミュニティが希薄であることが多い。都会から来た人にとっては、田舎の濃密なコミュニティは慣れない部分も多いだろう。だが、せっかく田舎に暮らすのであれば、暮らしと仕事が近くにある幸せを感じ、地域コミュニティとの関わりを楽しんでもらいたい。きっと、南大隅町の大自然も見守ってくれるだろう。

小川佳奈代
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小川佳奈代

小川佳奈代徳島県徳島市出身。フリーライター、エディター、2児の母。 徳島でタウン誌編集を経て、東京、鹿児島とメディア界隈で約20年うろうろ。2018年に帰郷。まち、人、暮らし、働き方、食、旅をテーマに、「よそものの視点」でローカルネタを掘り起こし中。シャツの前後を間違えても夕方まで気づかないのが特徴。サンバが大好き。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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