記事検索
HOME > ライフスタイル >
2016年8月12日 大川 晶子

「さとやま共創 Meet Up ~茨城県北を楽しむ関わり方を見つけよう!~」イベントレポート

2016年7月23日(土)、東京・有楽町の「Ginza Farmers Labo」で、新しい地域の展開が生まれている茨城県北地域(日立市・高萩市・北茨城市・常陸太田市・常陸大宮市・大子町)との関わり方を膨らませていくキックオフイベントが開催されました。

ゲストとして、茨城県北出身の建築家・菊池政也さん、NPO法人まちの研究室 事務局長・齋藤真理子さん、フリーグラフィックデザイナー・イラストレーター・「茨女」代表・川井真裕美さん、NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)フェロー・会沢裕貴さん、自称ハイパーラジオクリエイター・中村祥一さんの計5名を迎え、Uターンや東京との2拠点居住など、それぞれの立場での茨城県北との関わり方などを伺いました。

満員御礼となり、茨城県北の注目度の高さを感じさせてくれた本イベント。当日の様子をお伝えします!

つながりを生むことで茨城県北をより身近な存在に

re_main

イベント会場となった東京・有楽町にある食×農のコワーキングスペース「Ginza Farmers Labo」に50名を超える参加者が集まりました。将来的に茨城県に移住したい人や、この秋に開催される「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」に興味がある人など、参加理由はさまざま。茨城県出身者がほとんどを占め、20~30代の参加者が多いのが今回の特徴でした。

_DSC0431

受付前に設けられたボードには、参加者に茨城県北について気になることや、イベントで知りたいことなどを書いてもらいましたが、
・運転免許ないけど大丈夫?
・働く場所ってあるの?
・家族4人で住む場合、家賃はどれくらい?
・芸術祭に行ってみたい!!
・どんな食べ物があるの?
・魅力ランキングを上げるにはどうしたらいいか
・県南出身だけど県北が盛り上がっていてうらやましい
といった、まずは訪れてみたいというものから実際に移り住むことを想定したものまで幅広い意見・質問が寄せられました。

re_main

はじめに、茨城県庁・県北振興課の荒野さんが「茨城県北では人口が減少したりしていますが“茨城県北GO”となって盛り上がるように(笑)」と挨拶し、イベントスタート!

参加した理由や興味があることなど近くに座る参加者同士で簡単な自己紹介を行い、場が和んだところで、トークセッション「茨城県北6市町の最新情報を知る・学ぶ」へ。

meet-up08

阿武隈や八溝山系の山々と久慈川・那珂川などの清流、そして多くの恵みをもたらしてくれる太平洋に抱かれた茨城県北地域。茨城県庁・県北振興課の澤田さんが、東京から電車や車で約1時間半~2時間半などという茨城県北の地理的な概要を説明した後、茨城県北6市町の行政職員がそれぞれの街についてアピールしてくれました。

1000hitachi

“ものづくりのまち”として起業に力を入れている日立市。市の小川さんは、移住を希望する方に、お試し就業、お試し居住の取り組み支援を行っていることを教えてくれました。

re_main

子育て支援に力を入れている常陸太田市の福田さんからは、アーティスト枠や農業枠での地域おこし協力隊を受け入れていて、地域おこし協力隊のOBが酒蔵を改修したりして活躍していることが紹介されました。

re_main

高萩市では地域おこし協力隊が今年8月から3名が新たに着任するとのこと。市の渡邉さんは、結婚から妊娠、出産、育児では各ライフステージに切れ目ない支援をしているとPRしていました。

re_main

道の駅が渋滞になるほど人気だという常陸大宮市。市の内田さんからはここ2、3年市役所でミニ四駆の大会を開催し、町おこしを行っていることが紹介されました。また、市に移住コンシェルジュがいて、制度や生活などをサポートしてくれるそうです。

re_main

大子町の菊池さんからは、地元のNPOによる商店街を活性化する取り組みが紹介されました。また毎年8月に開催される花火大会では、地域おこし協力隊の人が仮装の盆踊り大会などを企画し、盛り上げてくれているそうです。

re_main

県北6市町のうち唯一地域おこし協力隊が入っていない北茨城市。市の鈴木さんは、北茨城市でも今年度中に地域おこし協力隊の加入を検討中で、“芸術によるまちづくり”を目指し、芸術系の方を呼ぼうと計画していると教えてくれました。

re_main

できれば移住して欲しいというのが本音ですが、すぐ移住するは難しいと各自治体の方も感じているようです。そこで、茨城県庁・県北振興課の澤田さんは「皆さんとつながりを持つことで、東京と茨城県北を行ったり来たりしながら、まずは交流を深めていければいいですね」と話してくれました。

 

トークセッションを通して探る「茨城県北と繋がる方法論」

meet-up18

続いては、茨城県北関係の新たな動きをしているゲストの方々によるトークセッション。2014年に地元である茨城県北にUターンし、現在は茨城と東京の2拠点生活を送っている会沢裕貴さんが進行役となり、「茨城県北と繋がる方法論」をテーマに、すぐに移住しなくても県北に関わる方法を探っていきました。

meet-up12

まずは地元在住のお二人から見た茨城県北について。常陸太田市出身で工務店の三代目棟梁として、家以外にもアーティストなど様々な人とコラボレーションしながら、ワークショップや作品づくりを行っている菊池政也さんは、常陸太田市の一番の魅力は空気がきれいだと話してくれました。

meet-up13

茨城県大子町生まれで現在も大子町で防災ラジオを兼ねた地元のコミュニティFM「FMだいご」やシェアオフィス、町内の様々なイベントの企画・運営を行っているNPO法人まちの研究室 事務局長の齋藤真理子さんも、星空がきれいで星の色まで見えるところと、自然の豊かさを挙げました。

会沢さんから、地元に戻って嫌だったことは?と質問されると、

「何をしても文句言う人はいるので、田舎だからというのはないと思います。むしろ昔ながらのルールがなくなったので、やりやすいのではないでしょうか」と、菊池さん。齋藤さんが「大子町に新しく来た人の感想で、今日は仕事行くの早いけど忙しいの?など近所の人が聞いてくるので、良く言えば“見守られている感”がある、悪く言うと…(笑)。」と濁すと、会場の皆さんもその絵を思い浮かべ笑っていました。やはり人との付き合いが地方ならではの醍醐味なので、そこをプラスに捉えていきたいですね。

そして、次は東京目線で茨城県北について語ってくれました。

_DSC0222

茨城県水戸市出身で、東京のデザイン制作会社のDTPデザイナーとして勤務した後、2014年に独立して茨城と東京との2拠点生活を行う川井真裕美さん。2013年から開始した茨城県内外で活躍する女性を紹介するフリーペーパー「茨女(いばじょ)」の活動に川井さんは主に東京から関わっているという。東京から茨城県に関わる理由を会沢さんから尋ねられると、「東京にいるときは、家族との時間が少なかった。2拠点生活にしたことで、家族との距離が近くなってよかった。」と川井さん。

re_main

茨城県日立市出身で、FMヨコハマ・ビジュアルディレクターなどとして活動する中村祥一さんは、子どもが産まれたことをきっかけに移住し、現在は千葉県に暮らしています。茨城県に戻らなかった理由を会沢さんから尋ねられると、「茨城県では収入になるラジオの仕事がなかったんです」と中村さん。それでも、1年ボランティアで地元FMのディレクターをして、茨城県のクリエイターを紹介することで人脈をつくっていたそうです。「仕事がなければ作ればいい」そして「100人に1人の存在になれるように」をモットーにしている中村さんはラジオの仕事以外にもドローンを使った映像制作もしていて、その人脈づくりの甲斐もあり映像制作歴わずか1年で日比野克彦氏のパフォーマンス撮影や水戸市の観光プロモーションビデオを制作し受賞をしています。

re_main

そして、参加者からゲストへの質問タイムへ。まず、「2拠点生活だと移動時間が大変だと思うが、どうしているか?」という質問に対しては、「東京から茨城までの移動は高速バスや電車を使います。その間はパソコンで仕事をしたり、読書をしたり、睡眠をとったり。移動時間のためにやる事を用意したりしています。」と川井さん。

re_main

そして、茨城へUターンとなると、やはり皆さん仕事が一番の心配事の様子。「ゲストの皆さんは“手に職” 系だが、サラリーマンはどうしたらいいでしょうか?」という質問には、「高齢化が進んでいる町が多いので、事務職でも重宝されるんですよ。貴重な存在。」と齋藤さん。会沢さんも「地元でパソコン持ってメモするだけですごいと言われます(笑)」と実情を教えてくれました。

さらに、参加者の現在常陸太田市地域おこし協力隊として活動中の方からは「それまで東京で普通のサラリーマンでしたが、地域おこし協力隊制度の中でどんな小商いができるか模索しています」という実体験に基づいたアドバイスもありました。

「案ずるより産むが易し」、実際に地域に足を運んでみると不安を解消してくれるヒントが見つかるのかもしれません。

 

茨城県北と‟繋がる”ワークショップ

_DSC0433

最後に、ゲストの皆さんと共に茨城県北に関わる方法を深めるワークショップが行われました。参加者に配られた『私の「茨城県北」に関わる階段マップ(ワークシート)』に今自分がいる段階、どのような関わり方なのかを記入してもらい、話し合う中で将来的にこんな形で茨城県北に関わりたい!と落とし込むもの。

参加者は興味のあるグループに分かれ、話し合います。「茨女」や2拠点生活について興味がある人は川井さん、定住移住やシェアオフィスの運営については齋藤さん、仕事の作り方については中村さん、芸術家とのプロジェクトについては菊池さん、そして各市町の皆さんと一緒に街について話す会沢さんの5つのグループ。25分×2回の話し合いが行われました。

re_main

そして話し合いの中で感じたことを「私の茨城県北を楽しむ関わり方宣言」としてまとめ、各グループで宣言シートを持って記念撮影をしました。それぞれ茨城県北と関わる何らかの方法を見つけられたようで、皆さんいい笑顔だったのが印象的です。

撮影後は、茨城県産紅あずまを使ったさつまいもチップスや、納豆を使ったお菓子など茨城のお菓子をお供に懇親会が開かれました。乾杯のご発声は菊池さん。その後、話し足りなかったことや、グループごとのワークショップで仲良くなった人と話の続きを楽しんでいました。

 

茨城県北をさらに盛り上げる今秋のイベント

そして、最後に大切なお知らせが!
まずは、県北発のプロジェクト「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」について茨城県庁・県北振興課の澤田さんから案内がありました。「“海か、山か、芸術か?”をテーマに、9月17日から11月20日まで開催されますので、ぜひ足を運んでください」と澤田さん。

re_main

さらにもうひとつ。「県北の未来をどう面白くしていくか?」をテーマに話し合う「いばらきさとやま未来会議~茨城県北で考える地域の未来~」が10月8日(土)に行われます。実行委員の会沢さんから「開催にあたり、関わっていきたい人募集中しています」とお知らせがありました。

茨城県北の“さとやま”に暮らす「ナカ」の人と、茨城県北に想いを寄せる「ソト」の人が、一緒に地域の未来を考えるイベントです。気軽に参加してみては?

 

10月8日(土)「いばらきさとやま未来会議~茨城県北で考える地域の未来~」イベント詳細を確認する

大川 晶子
記事一覧へ
私が紹介しました

大川晶子

大川 晶子1986年、静岡県三島市生まれ。エディター・ライター。 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科(近代建築史専攻)を卒業し、住宅やインテリア雑誌の編集部を経てフリーランスとして活動しています。たくさんの人・もの・ことに触れてその魅力を伝えることで、一人でも多くの方の暮らしをより豊かなものにできたらと思っています。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

人と風土の物語を編む