記事検索
HOME > つながる > ゲストハウス >
2014年4月18日 泉山 塁威

旅人と若者、商店街をつなぐ、シェアスペース 『NAWATE』とゲストハウス『とりいくぐる』

暖かく・心強い街の人たちのため、いつか目的地になって街を盛り上げるため、「奉還町を面白がる活動」をしよう。一歩ずつ歩む「NAWATE」と「とりいくぐる」。

新幹線や四国、中国地方の鉄道の交差点でもある、岡山。
街も大きすぎるわけでなく割とコンパクトな印象で、「岡山」駅から中四国どの方向へも向かえるのはとても良い。街に選択肢が多すぎるわけでもなく、ちょっとした個性でそれぞれが自分の役割を担える感じがします。基本的に普段の移動は自転車で事足り、駅が近いので遠方への交通の便も良いのです。

「岡山」駅から15分ほど、古き良き商店街を抜けると、建物と建物の間に、4つの鳥居のトンネルがあります!

この象徴的な鳥居のある建物が、旅人と若者、商店街の交流の場となっている、シェアスペース『NAWATE』と、その中にある、ゲストハウス『とりいくぐる』です。

 

鳥居
photo by michiho

『NAWATE』と『とりいくぐる』ができた経緯

2012(平成24)年の夏、奉還町にずっとあった鳥居のある空き家を、岡山で不動産事業をしている有限会社バルプラン(http://www.balplan.jp/)が見つけ、同じく岡山のココロエ一級建築士事務所(http://kokoro-e.jp/)に話を持ちかけたのが最初と聞きます。 最初は空き家をリノベーションしてシェアハウスと小さなお店の集合体を作るという構想でしたが、途中からシェアハウスよりもゲストハウスの方が良いのではないかとのアイデアが出てきました。
その結果、ゲストハウスと小さな店々ということになり、スペースの名前を『NAWATE』と命名、『NAWATE』の一角のゲストハウスを『とりいくぐる』とし、2013(平成25)年7月にオープンしたそうです。

『NAWATE』及び『とりいくぐる』を作る時の大きな2つのコンセプトは、「旅人が商店街と出会う」「この町の人のラウンジになる」。リノベーションするのを、シェアハウスではなく、ゲストハウスに切り替えた点が面白いですよね!

シェアハウス

シェアハウスよりもゲストハウスの方が良いというアイデアに!

『とりいくぐる』管理人の一人、野口明生さんにお話しを伺うと、「小さな店々」が入ることは先に決まっていましたので、その「小さな店々」に対してより面白い影響を与えるのは、シェアハウスよりゲストハウスなのではないか、という発想でした。

同じ人が住み続けるシェアハウスの場合は、店舗への関心というのは最初だけに留まり、慣れてしまうと利用頻度はそれほど上がらないと思い、それよりは、日々色々な人が各地から訪れるゲストハウスの方が、店舗にとっても宣伝や集客などの相乗効果が起きやすいのではないかと考えたわけです。

個人的には、今後、この「ゲストハウス」と「小さな店々」がどのような関係・距離感でいるのかは、工夫の余地が大いにある部分だと考えています。”とのことでした。そういった視点で見ると、中庭で交流をする若い人たちの写真が、少し違った様相に見えてきます。

『NAWATE』にいる人たち

上記の不動産会社、建築設計事務所の他に、岡山県内の工務店やWEB制作者、県外のゲストハウス運営者などが関わっていて、また、『NAWATE』にはゲストハウス以外にも現在6つのテナントスペースがあり、プリザーブドフラワーの販売やレンタルを行うショップ、生花やドライフラワーのアレンジを行う作家さんのアトリエ、アメリカからのインポートの洋服を扱うショップ、私設図書館を兼ねたデザイナーさんの事務所、ピザやカレーのテイクアウトもできるカフェバー、そして唯一、この建物が『NAWATE』となるずっと前から入居していた八百屋さんがあるそうです。

若い、そしてオシャレなお店や事務所が多いのも盛り上がりの秘訣かもしれませんね。

 ディナー

『NAWATE』の日常で起きていること

普段の『NAWATE』の様子は割と淡々としており、入居者がそれぞれに自分の活動に没頭している感じのようです。 表の賑やかな商店街通りとは、切り替わるような中庭の雰囲気が良く、その中庭を介して入居者が緩やかに繋がっています。入居者同士は中庭でお喋りしたり、時々お互いの店を行き来したり、必要なら手伝ったり、『とりいくぐる』のラウンジでお茶をしたりしています。

また、オープン前から数ヶ月に1度のペースでマルシェなどのイベントを行っており、多い時には2~300名ほどの方々が来場したこともあるようです。また、ギャラリースペースもあり、花と雑貨の作家さんによる展示が行われたようです。

この中庭や『とりいくぐる』のラウンジの雰囲気は、独特の空気感があります。ココロ安らぐというか、私も好きです。

内観
photo by michiho

絶対泊まりたい!ゲストハウス『とりいくぐる』

ゲストハウス『とりいくぐる』は、1泊2,800円と安く、女性専用の部屋もあって、女性も安心!個室も4,000円~あるようです。 1Fのバー・ラウンジでは、16:00~22:00まで、バーをされているとのことで、旅人と、若者、商店街の方など、楽しい交流がなされているようで、『NAWATE』と『とりいくぐる』の最大の魅力かもしれないですね!

 ベッド

『とりいくぐる』に訪れた印象的な旅人

『とりいくぐる』から歩いて20秒程の銭湯に入るのが目的で、神戸からやってきた銭湯フリークのおじさんが入浴後、あまりの気持ちよさに脱力して帰る気がなくなったところ、偶然『とりいくぐる』を見つけ宿泊していったこともあるそうです。 ほかにも、「岡山は洞窟探検好きにはたまらない場所」と教えてくれた洞窟探検家や、岡山のお気に入りの歯医者に通う鹿児島の女性、陸で過ごす長い休みを利用してママチャリで静岡から大分へ向かう船舶調理師など、こんな人達がいるのか、こんな需要があるのかと驚かされることはよくあるそうです。

だいぶ個性的な方が訪れていますよね。個性的な旅人と、若い方の交流が、『NAWATE』のエンジンのような気がします。

外国人交流

『NAWATE』プロジェクトによる街の変化や効果

『NAWATE』のある奉還町4丁目には、いままで歩いてなかったタイプの若い人や、ゲストハウスへ宿泊する外国人などが商店街を行き来する姿が見られ、街のひと達にも新鮮に映るようです。また、『NAWATE』への道がわからない方を商店街の方達が連れて来てくれることもよくあり、これは街の変化とまではいかないかもしれませんが、大変助けられています。

個性的な旅人やオシャレな若い方を『NAWATE』とりいくぐるが吸い寄せているのかもしれませんね!周辺の商店街にもオシャレなカフェやお店がいくつか見受けられました!

『NAWATE』の活動で、関わる人や街の人

野口さんに伺ったところ、“この奉還町4丁目に突然現れた『NAWATE』でしたので、この町に昔から住んでいる人の理解を得るというプロセスを辿るのは、なかなか大変な事です。ですが、『NAWATE』が『NAWATE』となるずっと昔からこの建物に入居してきた八百屋のおじさんとおばさんが店先で、「ここはな、ゲストハウスって、宿だよ」、「奥にはお店があってな」と地元の人達に『NAWATE』が何であるかを積極的に説明してくださって、時には建物の中までお客さんを連れてきて下さいます。建物の中にいても、表からその話声が毎日聞こえてきて、とてもありがたく、心強く、また嬉しく思います。”とのことでした。まさに、店先案内人・コンシェルジュですね!

野口さん

出入りする人、入居する人で姿を変える大きな可能性

ズバリ、『NAWATE』、『とりいくぐる』とはどんな存在ですか? “『とりいくぐる』は現在岡山市唯一のゲストハウスですので、存在するだけで、既にその機能を全うしているとも言えますが、それに比べて『NAWATE』は街の機能としてはまだまだ曖昧な存在であると思います。 出入りする人や入居する人のカラーで、その時々の姿が変わるのではないでしょうか。それが『NAWATE』の可能性だと思いますし、もしそうであるとすればそれはすごく大きな可能性だと思います。“と、野口さん。

外観
photo by michiho

『NAWATE』、『とりいくぐる』のこれから

最後に、今後やりたいことや目指していることについて伺いました。“奉還町4丁目はこの街の一番端っこで、人通りもまだまだ少なく、空き家や空き地も増えています。『NAWATE』に人が集まってくるには、何かのついでというよりは、『NAWATE』自体が目的地となるような動機付けがなければならないと考えています。

『NAWATE』自体が目的地になる、というと大掛かりな野望のようにも聞こえますが、まず『NAWATE』の我々がこの奉還町を面白がる事が大切だと思います。面白そうに暮らしている人達のところには人が集まってくるものでしょうし、それが最も自然なことではないでしょうか。今年はその「奉還町を面白がる活動」も、少しずつできたらいいなと考えています。”

野口さん、ありがとうございました!ぜひ、今度は宿泊して、交流して、『NAWATE』、『とりいくぐる』を満喫したいと思います!

取材先

複合交流施設・NAWATE、ゲストハウス・とりいくぐる

Email
info[@]toriikuguru.com

電話番号
086-250-2629(8:00-11:00, 16:00-22:00)

WEBサイト
複合交流施設・NAWATE
ゲストハウス・とりいくぐる

泉山 塁威
記事一覧へ
私が紹介しました

泉山塁威

泉山 塁威1984年、札幌市生まれ。世田谷区在住。 明治大学理工学部建築学科助手及び同大学院博士後期課程にて、都市計画やエリアマネジメント(まちの経営)、公共空間活用の研究をしながら、複数のまちづくりの現場の実践プロジェクトを携わっている。NPO法人まちづくりデザインサポートの事務局で、まちづくりワークショップのマネジメントやまちづくりデザイン支援を手掛ける。ほか、お茶の水スキマ大学・まちづくりディレクター、NPO法人お茶の水公共空間マネジメント理事。 若手がまちづくりの研究や実践プロジェクトを行う都市デザイン・マネジメント研究会共同代表。最近では、地方のまちづくりに関わる一方で、東京と地方の連携や移住について関心事である。

関連記事

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

人と風土の物語を編む