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2022年10月28日 北山公路

”日本のふるさと”岩手県遠野市で地域おこし協力隊員7名募集!~ Vol.3 「 農業分野」編 ~

昔ながらの水稲や野菜栽培が盛んな遠野市。近年では特区指定を利用したどぶろく製造や、国内最大の生産を誇るホップを利用したクラフトビール製造など、農業の六次産業化も話題となっています。今回の地域おこし協力隊募集では、農業分野の担い手を、3つの受け入れ先で1名ずつ募集しています。
今回の募集は基本的に、3年間の任期終了後はそのまま受け入れ団体への雇用となったり、サポートを受けて新規就農の道筋をつけられる「就職・就農型」。任期後の進路までを見据えた採用となりますので、将来の生活設計も考えやすそうです。
では、「ピーマン」「わさび」「ふどう(ワイン)」という3つのプロジェクトに取り組む農業分野での募集内容を紹介します。

Vol.1 「募集概要&情報発信分野」編
Vol.2 「観光分野」編

ピーマン(ハウス)栽培の確立とかっぱの里発信プロジェクト(農事組合法人 こがらせ農産)

「こがらせ農産」は、観光地として有名なカッパ淵や伝承園もある土淵町にある農事組合法人。「ふるさとの田園を守りたい(隊)」をスローガンに、圃場整備事業をきっかけとして、平成25年に設立され、水稲や大豆を中心に、組合員それぞれが農作物生産に取り組んできました。

令和3年から始めたピーマンのハウス栽培

平成28年からは組合で、園芸作物としてピーマンの露地栽培に取り組み、令和3年からはハウス栽培をスタート。その辺りの経緯や今後について、副組合長の山川亮一さんとピーマン担当現場主任の佐々木信也さんにお話を伺いました。

山川亮一副組合長

「遠野は盆地で標高も比較的高いため、岩手県内でも夏と冬の寒暖の差が激しい地です。こういう土地での露地栽培はどうしても収穫・出荷時期が限られてしまう。そこで昨年からハウス栽培を始めました。ハウスだと露地物よりも早く、そして長く収穫・出荷することができます。もともと、ハウス栽培のノウハウがなかったためまだまだ手探りですが、今後の当地での施設栽培確立のために、先行投資で施設を整備しました。今回の募集では、この新しい取り組みを一緒に担ってくれる方に来ていただきたいと考えています」(山川副組合長)

佐々木信也ピーマン担当現場主任

「私は教員からの脱サラで、今はピーマン栽培を担当しています。教員時代も楽しかったのですが、今の方がもっと楽しい。ピーマンは遠野市の重点作付け品目になっています。これまでは露地栽培が主流でしたが、ハウス栽培を本格化することで、特産にしていきたいと思っています。できれば生産だけではなく、ITなどを使ったPRや販売チャネルの開拓なども手掛けてもらえる人が来てくれると嬉しいですね」(佐々木主任)

お話をうかがったあと、実際に栽培しているビニールハウスにもお邪魔してみました。

ピーマンを栽培しているビニールハウス

5〜6棟並んだ大きなハウスの中いっぱいにピーマンが実っています。今が収穫の最盛期とのことでしたが、まだかわいい花もところどころ残っていました。温度管理や水管理などの設備、指示を書いたホワイトボードなどもあり、システマチックに栽培されていることがわかります。

ハウス内で育つピーマン
入り口には作業指示が書いてある

「でも、まだまだいろいろ手探りです。気温や湿度によって開けたり閉めたりのほかにも、水はけを考えてハウスの外に溝を掘ってみたり、ハウス内からの雨水排水のために穴を開けてみたり。でも決まり切った作業ばかりではなく、こういう工夫を自分で考えて試行してみることができるというのも面白いところだと思っています」(佐々木主任)

3年の任期中にノウハウを身につけて、任期後は新規就農を目指す方にぜひ来ていただきたいとのこと。農事組合ということもありますが、基本的に農業は個人作業ではなくみんなで助け合う仕事です。
「ピーマンをはじめとした農業そのものに興味がある人はもちろんですが、それよりも地域に溶け込んだ生活を楽しめる人に来て欲しいなぁ」という佐々木主任の言葉が印象的でした。

わさびの品種選抜プロジェクト(一般社団法人 遠野わさび公社)

盆地となっている遠野地域を囲む山々の中でも特に有名なのが、日本100名山に数えられ登山客にも人気の早池峰山。その麓には雪解け水の伏流水が豊富に湧き、宮守町達曽部地域は名水の地としても知られています。それを利用して、大正時代から、わさびが栽培されてきました。豊洲市場をはじめとした全国に出荷されており、ハウス栽培の生食用根わさびのほか、チューブ入りなどに加工される林間わさび栽培は国内指折りの産地になっています。

わさびが育つハウス

わさび栽培は基本的に各個人生産者による栽培となっていますが、各わさび農家への苗の供給を行っているのが「遠野わさび公社」です。この地に合う、病気のない優良な苗を実生から育てて提供しつつ、遊休畑を使った耕作地拡大にも力を注いでいます。

わさびの苗床
わさびの赤ちゃんはかわいい

「わさびは苗から収穫まで1年半から2年かかります。その間の気温や湿度、光量管理が大事です。植え付け時期をずらして切れ目のない収穫をするため、苗の供給も毎年のことになります」と所長の菊池陽(あきら)さん。

菊池陽所長

かわいい苗床のあと、実際の圃場も見せていただきました。こんこんと水が湧く貯水池は、底がくっきり見えるほど綺麗な水です。貯水池から地下を通した水路からの流水の中、土地の傾斜を利用し、段々になった圃場ではわさびの葉が大きく育っていました。

こんこんと水が沸いている貯水池
流水の中で育つわさび

苗の育苗は、生育しているわさびから優良なものを選抜して種を取るところから始まります。その選抜作業が1番の肝。今回の協力隊募集では、この選抜作業に携わり、地道にそのノウハウを身につけてくれる方を求めています。その上で、さらに生産を増やしていくための事業拡大や、新たな技術導入、販路拡大などに取り組むイノベーターになってもらえたらとのこと。任期終了後はわさび農家として就農する道も、公社職員として育苗に取り組む道もあるそうです。

苗の手入れをする仕事

どちらにしても積極的に革新に取り組んでもらえる方に来ていただきたいと話していました。

まごころワインプロジェクト(NPO法人 遠野まごころネット)

2011年に起きた東日本大震災で、沿岸への後方支援拠点となった遠野市。「遠野まごころネット」は、その際の官民連携支援を行うために設立された団体です。今回協力隊を募集している「ワインプロジェクト」の経緯や業務内容について、理事長の小松正真さんとワイナリー担当荒川哲也さんにお話を伺いました。

遠野市内にあるぶどう園は約1ha

「全世界からの10万人以上のボランティア受け入れ、差配を行なってきましたが、復興が進む中で、被災地の人口に対する障がい者の比率が高まり、その支援が中心となっていきました。大槌町と釜石市に障がい者就労支援センターを開設し、平成24年には釜石就労支援センター横にぶどう園を開設。ぶどう生産とワインの製造・販売に着手しました。その後、農福連携を掲げて、農作業と福祉の連携の取り組んでいます」(小松理事長)

平成27年には、使われなくなった遠野ビール苑の醸造所跡にワイナリーを整備。担当者を長野に派遣して修行させるなど、本格生産を始めています。

ワイナリーには大きなタンクが

「ワイン販売は団体としての収入源でもありますが、障がいを持った就労者に報酬として支払い、自立のきっかけにしてもらうための事業です。同時に遠野や釜石のまちづくりのための『ひとづくり』という側面も持っています」(小松理事長)

ワイン用品種メルローの収穫真っ最中

実際に今遠野にあるぶどう畑を見せていただきました。ちょうどワイン用品種のメルロー収穫の真っ最中。ぶどうづくりからワイン醸造までの担当で、今回地域おこし協力隊員として採用された方と共に活動することとなる、ワイナリー担当荒川哲也さんが、作業について説明してくださいました。

荒川哲也さん

「ぶどうづくりは障がい者の方も、ボランティアの方も一緒になって作業しています。ワインのラベル貼りなども障害者の仕事として依頼しています。一方で、ワイン醸造やワイナリー管理はほぼ私ひとりで行っており、今回の募集で、跡に続く人にぜひ来て欲しいと思っています」(荒川さん)

ワイナリー内の検査室

今回採用になった方には、就労支援や福祉的な仕事ではなく、純粋にぶどうづくりとワイン製造をお願いしたいとのこと。ワイン製造技術向上や品質向上に取り組み、新たな遠野の産業を立ち上げてくれる人材が求められています。

クラフトビールやどぶろくなどで知られる遠野市に、新たにワインも加えて「酒のまち」を標榜するべく、「いろんなことにチャレンジできる」この場所で、「やりたいことを大事に」する方の応募をお待ちしています。

募集詳細・エントリー

募集の詳細、応募条件等は下記をご確認ください。

募集は締め切りました

<応募に関するお問い合わせ>
一般社団法人遠野市観光協会
住所:〒028‐0522 岩手県遠野市新穀町5-8
E-mail:cooperation-team@tonojikan.jp
電話:0198-62-1333
担当:千田

取材先

農事組合法人 こがらせ農産

一般社団法人 遠野わさび公社

NPO法人 遠野まごころネット

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北山公路

北山公路出版プロデューサー、ディレクター、編集者 合同会社オフィス風屋代表、有限責任事業組合machi R&E組合員 1960年岩手県花巻市生まれ、在住。印刷会社役員を経て2015年Office風屋設立。出版社などの書籍や雑誌のプロデュース&編集のほか、地元自治体のプロモーションツールなど制作。2017年「マルカン大食堂の奇跡」(双葉社)執筆。2017年4月より花巻まち散歩マガジンMachicoco発行。日本ペンクラブ会員。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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