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2017年3月29日 ココロココ編集部

「NEXT LOCAL MEDIA? ― コロカル × ローカルメディアのつくりかた × 岩手県花巻市 ―」イベントレポート

地域の魅力を発信するローカルメディア。情報発信だけではなく人と人との繋がりを生み出したり、地域の新たな魅力を見つけたりと、その役割は様々で媒体も紙やウェブなど多岐に渡ります。

今回は全国各地にあるローカルメディアの最前線で活躍するゲストを迎え「NEXT LOCAL MEDIA? ― コロカル × ローカルメディアのつくりかた × 岩手県花巻市 ―」が開催されました。

イベントではこの日初披露となる花巻市のローカルメディア「まきまき花巻」も紹介。盛り上がりを見せたイベントをレポートします。

◆まきまき花巻 http://makimaki-hanamaki.com/

岩手県花巻市とはどんなところ?

岩手県花巻市は、市民ライター参加型の花巻魅力発信メディア「まきまき花巻」を立ち上げました。今回はその「まきまき花巻」のお披露目イベントという位置づけです。 イベントが始まると、まずは花巻市がどんなところなのかを知ってもらいたいとのことで、イベント主催者の花巻市 秘書政策課 定住促進係の高橋信一郎さんから紹介がありました。

魅力を語る主催者の高橋さん▲花巻市の魅力を語る高橋さん

花巻市は岩手県の中央に位置する街で宮沢賢治が生まれ暮らした街としても有名。最近では高校野球で有名な花巻東高校がある街としても知られるようになりました。花巻市は自然豊かで住みやすく、多くの文化財が残されているのが魅力です。ユネスコの無形文化遺産に登録された花巻市大迫町に伝わる民俗芸能の神楽「早池峰神楽(はやちねかぐら)」が披露される「早池峰神社」の例大祭は毎年多くの観光客が訪れ賑わいを見せています。

高橋さんの話に聞き入る参加者▲30名以上の方が参加していました

 

「まきまき花巻」のお披露目

花巻市について知っていただいたところで、続いては初お披露目となる「まきまき花巻」の紹介です。「まきまき花巻」は、岩手県花巻市の住民や、花巻市出身の方、 花巻市が好きな方などの“市民ライター”たちが見つけた、花巻市の魅力や新しい取り組みを発信する場です。掲載されている記事は市民ライターの皆さんが執筆されたとのこと。取材や執筆経験がない人でも記事をつくることができるのでしょうか?

まきまき花巻キャプチャ▲まきまき花巻 サイトトップ

実は「まきまき花巻」はサイト立ち上げの為に、花巻市民向けのワークショップと講座を2016年11月から計5回開催。ワークショップでは、どのように花巻市の魅力を伝えていくのか?花巻市の魅力・課題は何なのか?について徹底的に話し合われたそうです。花巻市に熱い思いを持った方が参加しており、活発なディスカッションが行われたとのこと。

講座では、参加者のみなさんが市民ライターとして活躍するにあたって必要な記事の執筆手順や、写真の撮り方をレクチャー。講座もあったことで記事をつくることができたようです。イベントでは、ワークショップや講座の様子もスライドで紹介されました。

また「まきまき花巻」というサイト名の由来も紹介されました。
「人を巻き込んで花巻市と繋がる人を増やしたい、新しい繋がりを増やしていきたいとの想いから、”まきまき(=巻き巻き)”と名付けました。花巻市のことをよく知っている市民ライターだからこそ発信できる花巻市の魅力や情報を発信し、新たな花巻を知ってほしい」と高橋さん。

 

ゲスト2名による「地域を変えるローカルメディア」トーク

続いて「地域を変えるローカルメディア」と題してゲストトークコーナーです。

最初のゲストは著書「ローカルメディアのつくりかた」等を手がける影山裕樹さんです。地域の情報発信が重要と話す影山さんは、地方で発行される様々なフリーペーパーを紹介。北九州市の自治体が発行するフリーペーパー「雲の上」創刊号では「酒場」を特集し、北九州市内に今も数多く残る「角打ち」にスポットを当てて人間模様や街の表情に注目。東京にいる編集者の感性で編集して行政が発行している珍しい形態のフリーペーパーとのこと。

近江八幡市の地元企業「たねや」が発行するフリーペーパー「La collina」は、菓子メーカーである自社の商品情報を掲載するのではなく、“近江の自然と人”をテーマに、琵琶湖をはじめとする豊かな自然の様子や、そこに暮らすや人々の様子、祭りなどをハイクオリティな写真と印刷で発行しているところに着目していました。

ローカルメディアを語るゲストの影山裕樹さん▲ゲストの影山裕樹さん

地元NPO法人がメディアを発行している例として、温泉街の若手経営者が集まり立ち上げた出版レーベル「本と温泉」について紹介。カニのシーズンの冬以外にもお客さんを温泉街に呼び込もうと始まったプロジェクトで、有名な作家たちが書き下ろした本が城崎温泉でしか買えない事と、温泉地で生まれた本を温泉地で読むスタイルがヒットして温泉街の新たな街づくりに役立っている話をされました。

そして個人でメディアを発行している例では、福岡の冊子「ヨレヨレ」を紹介。職員が介護という仕事を通じて繰り広げているドタバタを描いた「宅老所よりあい」のことを全面的に取り扱ったとても面白い冊子とのこと。このようなローカルメディアの魅力は、よそ者と地元の人が一緒になってつくり、情報が送り手と受け手で互換性があることで異なるコミュニティが繋がる手段になることだと、影山さんはお話していました。

影山さんの「メディアは一方的な情報発信の為のものではなく、メディアによって人と人とが繋がり街が活性化される為のものだ」という点にとても共感しました。

影山さんの話に聞き入る参加者▲話に聞き入る参加者

ゲストトーク2人目は、マガジンハウス「コロカル」編集長で岩手県一関市出身の及川卓也さんです。及川さんはウェブを使ったローカルメディアについて「コロカル」に掲載している記事を紹介。

アニメーションと映像で日本の森の現状や、森と人とのつながりを伝えるサイト「Life with Wood」や、飛騨に暮らす人、旅する人、移住した人の紹介をするサイト「あなたはなぜ飛騨を好きになったのですか?」、岩手県西和賀町の雪がもたらす魅力あるコンテンツを、地域の生産者と地域の金融機関、地元クリエイターが力を合わせてブランディングをして全国へ発信していく「ユキノチカラ」などをスライドと共に紹介。「まきまき花巻」同様に、外部に住む人ではできない、住んでいる人ならではの視点や発想を取り入れた記事を掲載しているという「コロカル」の取り組みが面白くてとても興味深かったです。

「コロカル」編集長の及川卓也さん▲「コロカル」編集長の及川卓也さん

及川さんは、暮らしの実態や価値を拾い上げて、地域で発信していくことの面白さや深さを長い期間で伝えていくことができるのがウェブの魅力。これから求められるローカルメディアの姿であると話していました。

 

ゲストによる熱いトークセッション!

ゲストトークの後は参加者のみなさんから質問をいただき、トークセッションが行われました。今回のイベントでは、手元のパソコンやスマートフォンから、匿名で自由にコメントができるサービスを使用し、参加者からの質問をリアルタイムで受け付けていました。

ゲストの三人▲続々と届く質問に答える

「ゲストのお二人が、ローカルメディアが重要と思ったきっかけは?」の質問には「東京中心で発信するメディアに疲弊感を感じ働き方を変えないといけないと思った。地方で仕事をするうちにメディアの新しい可能性を感じた(影山さん)」、「高度経済成長期から様々な働き方や生活をして、自分たちの場所で持続可能な暮らし方をする選択肢が求められる時期に来ていると感じた。地域が面白くなっている。(及川さん)」との答え。

「地元でローカルメディアを始めるには?」の質問には、「場もメディアの一つ。取材と言って話を聞きに行きそこから仲間を増やしていく(影山さん)」、「カメラマン、ライター、エディターなど分業せず一人でできるのも地方ならではのかたち。分業して作るなら仲間を探して勉強しながら自分たちの作り方を模索する。(及川さん)」など第一線で活躍するお二人ならではの貴重な答えに参加者のみなさんは深く頷いていました。

その他にもたくさんの質問が寄せられていて、トーク中は参加者のみなさんは熱心にメモを取るなど、ローカルメディアについて関心の高さが伺える熱いトークセッションでした!

 

花巻の特産品で交流会

トークセッションが終わったあとは、花巻市産のワイン「エーデルワイン」と南部せんべいなどの岩手県のお菓子を囲んで交流会が開かれました。花巻市の魅力について語り合う方、ゲストにトークセッションの時間では聞けなかった質問をする方など、大変な盛り上がりを見せていました!

南部せんべい▲会話がはずんでいました!

 

ローカルメディアをテーマにした今回のイベント。参加者の中には、自分でローカルメディアをつくりたいという方もおり、ローカルメディアへの関心の高さがうかがえるイベントでした。

「まきまき花巻」もローカルメディアとしてスタートしたばかり。市民ライターも募集しているとのことなので、気になった方はご覧になってみては?

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ココロココ編集部

ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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