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2017年11月6日 ココロココ編集部

地域移住ラボ フィールドイン和歌山~第2回 高野にある暮らし~【イベントレポート】

10/8(日)、「地域移住ラボ フィールドイン 和歌山~高野にある暮らし~」が東京の有楽町で開催されました。参加者1人1人が「研究員」としてイベントに参加し、和歌山の暮らしについて探求していく今プログラム。移住ラボ第2回目の今回のテーマは「高野にある暮らし」。高野で活躍されるゲストをお招きし、高野の暮らしを紐解いていった3時間。今回はその様子をご紹介します!

また、8/26(土)に行われた、熊野信仰で知られる「熊野」地方の暮らしや歴史について探求した第1回目の地域移住ラボのイベントレポートはこちら!

「高野にある暮らし」とは

▲左からゲストの森本一彦准教授、佐藤妙泉さん、柘植健さん

2回目となる今回のテーマは、和歌山県高野町。 高野で活躍される移住者のお話や、近くの人とグループになり自分の過去と未来の暮らし方を探る共有ワーク、実際に参加者のみなさんと床に座って意識を集中させる「虹の瞑想ワーク」を通して、高野の歴史や暮らしを学びます。

会場は前回に引き続き、東京・有楽町の東京交通会館内にある「LEAGUE有楽町」。今回は精神を穏やかに沈める効果があるとされる「紀州檜の香り」で参加者の方をお出迎え。東京の中心にあるこの場所がこの日は和歌山一色に染まり、ここが東京だと信じがたい程ゆったりとした時間が流れます。

参加者の方の多くはもともと高野に関心があったり、テーマに惹かれてイベントに参加されたという方ばかり。 しかし中には、海外での経験を通して、愛国心について考えさせられ、改めて自分の好きな場所・大切な場所を探したいという想いで参加されている方もいらっしゃいました。

歴史に基づき、高野を紐解く

まずは、高野山大学で高野文化圏研究を研究されている森本一彦准教授に、高野の歴史や地形的背景などをお話いただきました。

「高野山」というと、和歌山にそびえ立つ山々を想像される方も多いのではないでしょうか。
実は、「高野山」というのはその名の山が存在するわけではなく、ここでいう「山」というのは仏教の寺院につけられる称号(山号)で、「高野山」というのは「金剛峯寺」という寺院全体を表しているものなのだそう。

さらに、かつて女人禁制で、第一次産業もなかった高野では、様々な地域から物資を運び入れることも多く、それに伴った人や物の移動によって多くの文化や信仰が交錯するようになり、現在のような多様な文化や人を受け入れてくれる場所になったと森本先生は言います。

訪れる人を受け入れてくれると言われる所以はこの歴史から来ているのですね。

地域おこし協力隊として高野と関わる

歴史・文化が色濃く残る高野ですが、今、高野にはいったいどんな暮らしがあるのでしょうか。続いては高野に移住されたお二人に高野での暮らしを紹介していただきました。

お一人目は兵庫県で生まれ育ち、つい1年半程前までは東京で仕事をされていたという佐藤妙泉さん。2015年8月に初めて高野を訪れ、その後2016年4月に地域おこし協力隊として、高野に移住されました。

妙泉さんは初めて高野を訪れた時、将来ここに住むことになるだろう、と直感で感じたそうです。それだけ高野には心惹かれる何かがあったのでしょう。現在は地域おこし協力隊として活動される傍ら、高野山大学の大学院生として密教学を学ばれています。

印象的だったのは、手を合わせて祈願をするときのお話。

「皆さまは日々生活をする中で、手を合わせてお願いをすることはありますか?手を合わせて願う時、私たちはおそらくその時々で一番大切にしていることを想っています。例えば、家族の安全祈願や、試験の合格祈願など。手を合わせてお願いをするときは、 忙しなく進んでいく日々の中で唯一じっくりと自分と向き合っている時間なのではないでしょうか。」

高野では、手を合わせることが日常的にあるといいます。 常に日常の中で自分と向き合うことができる、自分と向き合っている人がいるというのが高野の魅力の1つなのかもしれません。

世界各国を旅し、偶然高野と巡り会う

インドや中国、フランス、イギリスなど世界各国を家族で巡り、たまたま高野と巡り合ったという柘植健さん。なんとも異色な経歴の持ち主ですね。

世界を放浪中、祖母の死をきっかけに日本へ帰国。

地方の田舎と呼ばれるところに行くと、世界が狭くなって、その町にいるすべての人が知り合いになり、お互いに意図せず干渉し合ってしまうことも少なくありません。

しかし、高野は様々な文化を受け入れているという歴史があり、その歴史の中で育った人がいるので、新しく高野に移り住んだ人に対しても干渉したりすることはないそう。人それぞれの文化や信仰を尊重しているからこそなのでしょうね。

食から感じる高野の文脈

ゲストの方のお話を聞いたあとは、少しばかりの休憩タイム。ご用意したのは、「麩善のあんぷ」と高野産の「自家製栽培茶」!
歴史の深いこの「あんぷ」を頂くと、さらに和歌山という地域への文脈を感じます。

クロストーク「自分の真ん中に戻ってこられる暮らし」

さて、休憩のあとは、ゲストのお三方とのクロストークです。
「悟り」とは?「お導き」とは?「空海が高野山を選んだ理由」とは?など興味深いお話がたくさん。中でも印象的だったのは、高野に導かれる理由について。

「『お導き』というとこの世界には実在しない何かに導かれることを想像する方も多いのではないでしょうか。 しかし、本当はそれだけではなく、『お導き』とは自分自身の本当の声であるのかもしれません。」と妙泉さんは言います。

そして、その想いに従って行動することが自分自身による「お導き」なのだそう。
自然と共に自分と向き合って暮らすことができる高野での暮らしは、心を豊かにできる自分の深い部分に触れることができるというお話でした。

探求ワーク「虹の瞑想法」

そして、続いては妙泉さんと一緒に「虹の瞑想法」を体験しました。

まずはヨガのポーズで、体をリラックス。次に高野で撮れた美しい虹の写真を頭でイメージしながら、目を閉じて瞑想タイムに入ります。

初心者向けの方でもイメージしやすいように、妙泉さんが頭の中のイメージを言葉で伝えてくださいました。寝る前に瞑想をすると熟睡できるという声もあるそうで、1日数分でも自分と向き合う瞑想の時間をとることが大切だと妙泉さんは言います。

瞑想を通して、心を落ち着かせることが日々の生活の中でも自分と向き合う大切な時間であるということを学びました。

高野の暮らしと自分の暮らし

最後はこのイベントで感じた高野での暮らしと今の自分の暮らしを見つめ、照らし合わせる時間です。

このイベント通して、高野への移住を本格的に考え始めた方もいれば、まずは高野へ訪れてみたい!とおっしゃる方もいらっしゃいました。

地域移住ラボを終えて

移住とはその土地の文脈の一部になること。
このテーマを掲げ、高野の歴史や暮らしを紐解いていったこのイベント。

参加者の方の声の中で私が一番印象に残ったのは
「移住とは雑念のある生活から逃げることではない。今の生活を否定するのではなく、今の生活を自由にすることだと思う。」という言葉。

紙一重のような繊細な言葉ですが、私には心に響くものがありました。

移住者の多くは、新しいことを始めるために前向きに新しい土地へ移り住まれた方が多いように思います。自分とじっくり向き合った時に見えた本当の想いに導かれて、次のステップへと進んでいくのでしょう。

本当の想いを見つけることができる場所。それが高野なのかもしれません。

皆さまも是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。

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ココロココ編集部

ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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