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2017年10月31日 ココロココ編集部

「おいらせもりのようちえん」外井さんが描く地域資源を活かした子育てのかたち

青森県の東部に位置するおいらせ町は、2006年に下田町と百石町が合併して誕生した新しい町です。隣接する八戸市、三沢市のベッドタウンでもあるため子育て世帯が多いことも特徴の一つです。そのおいらせ町へ6年前に移住してきたのが外井亜希さん。現在、子どもが元気いっぱい遊びながら自然を感じ、五感を使って感覚を研ぎ澄ませたり、自分達で行動する中で生きる力をはぐくむ「おいらせもりのようちえん」を主宰しています。そんな外井さんに、この活動を始めた経緯や、自身の想いについてお話をうかがいました。

おいらせ町の第一印象は「おいしい」!

おいらせ町で「おいらせもりのようちえん」を主宰する外井亜希さんは北海道出身。結婚後は北海道千歳市に住んでいましたが、ご主人の転勤をきっかけに、夫婦と2人のお子さんとともに、おいらせ町に住まいを移すことになりました。

「食べ物がおいしいなっていうのが最初の印象です。安い普通のお米がすごい美味しかった。それに、野菜が新鮮で種類もたくさんあることに驚きました。特にごぼうやニンニク。北海道で食べていたものと味が全然違ったんです。」そう当時のことを振り返ります。

外井亜希さん

「やませ」という東北特有の太平洋側からの冷たい季節風によって、ごぼう、人参、大根などの根ものや白菜、キャベツの甘みが凝縮される。

「やませ」以外に、おいらせ町を含む八戸圏域は、雪が少ないのも特徴の一つ。一般的な青森のイメージとは異なります。北海道出身の外井さんも「家の周りにはそんなに積もらなくて、ちょっと山の方に出てくると積もっている。理想的ですよね。」と笑います。

いいものを活かして伝えたい

もともと自然が大好きで、冬山に登ったり、カヤックに乗ったりとアクティブかつアウトドア派だったという外井さん。ただ、おいらせ町に来た当時は4歳と4カ月のお子さん2人がいたこともあり、なかなかフィールドに足を運べないジレンマもありました。そんな時、発見したのが「身近な自然の面白さ」と、自身が持つ「ヨソモノ目線」でした。

「ちょっと子育てに疲れたなあ、と思ったときに、身近な自然の中で歩いてみたんです。そしたらいろんな植物があって、すごく良かったです。自然の中に入るとそれだけで大人も心が解放される部分があるし、子どもたちもいつもよりちょっと踏み出して遊べて『これ見つけたよー』っていろいろなことを発見できる。こういう里山を使って子育てしていけたらいいなって思ったんです。そんな目で見ると、外から来たからこそわかる感覚や外から見た感覚でもっと活かせるなっていう魅力が沢山ありました。それを伝えかったんです。こんなに素晴らしい資源があるんだって。」

外井さん2

そのような思いがきっかけとなり、もともと活動的だった外井さんは動き出します。まずは友人と2人で「JOYRASSE(ジョイラッセ)」という団体を作ります。おいらせ町をもっと楽しみ、楽しくしていこうという想いから、「JOY」と「オイラセ」を掛け合わせて名付けられたこの団体では、奥入瀬川でのカヌー体験やピザ焼き体験など、主に地域資源を活用したイベントを開催していました。

そんなジョイラッセの活動の中で、外井さんは少しずつ自分のやりたいことがハッキリと芽生えます。まちづくりのイベントを複数回開催していく中で、「子どもの生きる力を育てたい」という思いが、日に日に強くなってきたのです。
「勉強とか、英語とか、習い事的なことももちろん大事なんだけれども、私は、他人と協力して作り上げていく力や、自分で幸せなものを作っていける力が大事じゃないかなって思ったんです。そうなると、まちづくりを活動のメインとしていたジョイラッセは、活動の幅が広すぎたんです。」

「ジョイラッセ」の活動を土台に「自然と子ども」にしぼって出来上がったのが「おいらせもりのようちえん」。2015年から活動をスタートさせました。

「おいらせもりのようちえん」とは

「手ぶらDayキャンプもりあそび」の様子

そもそも、「もり(森)のようちえん」とは北欧諸国で始まったとされる野外保育活動です。日本でも幼児期の自然体験の欠如が問題視される中で、自然体験機会を提供する活動として全国に広がっています。

「おいらせもりのようちえん」の活動は、毎月行っている「手ぶらDayキャンプもりあそび」が中心。毎回定員は15名で、だいたい4家族くらいの規模で行うこのイベントですが、特にこれといったプログラムを設けず、子どもと家族が集まって、森遊びをして、ご飯を食べて、ゆったりして帰るという内容です。

小さい子どもたちは、初めはお母さんにべったりですが、1日長い時間遊んでいると、だんだんお母さんから離れて、他の子どもとかかわりあっていきます。その関わり合いの中から、他人と協働していく力を身に付けていくことを外井さんは重視しています。

自然の中で遊ぶ子どもたち

もちろん、森という環境も大事な要素。「自然の中にいると、においがしたり、触ってみたり、種を割って中を見てみたり、すごく五感を刺激しますよね。もちろん危険もあるんですが、危険を知ったり、生きる力が育まれると思っています。」

活動は子どもだけに向けたものではなく、お母さんやお父さんにも、自然を感じながらゆったりしてもらえるよう、さまざまな配慮がされています。
「大きな家族みたいな感じでいれたらいいなって。親が完全に手を放していいサービスではなく、だからといってずっと見ていなきゃいけないサービスでもない。例えば、きょうだいの下の子に親が手がかかっていると時に、スタッフがさっと上の子を見てあげられたリとか、足りない時に入っていけるようなサービスでありたいと思っています。」

「おいらせもりのようちえん」では、このほかにも親向けの勉強会やフォーラムも開催しており、今年6月には「五感を使った体験活動を考えるフォーラム」を開催。平日にもかかわらず、100人ほどが集まったといいます。また、自然を通してエコを考えるキャンプを開催するなど、家庭教育分野に力を入れて、子どもと親が一緒に考える機会を提供しています。

おいらせだからこそできる活動に

外井さんが感じる、おいらせ町の良さとは何でしょうか。
「よくイベントを開催しているカワヨグリーン牧場以外に、近くの公園もそうなのですが、車でほんの少しの距離にどっぷりと浸かれる森があり、施設も揃っている。子連れでもトイレもあるし、何かあればすぐに人が呼べる。安心できる施設の近くにすごく良い自然環境がくっついている感じです。安心できる自然環境ってのはなかなかないと思います。」

カワヨグリーン牧場

「役場にも、”私お母さんと子どもが楽しめる場所が作りたいんです!っていう感じで何の計画もなくいったときに、助成金などを教えていただきました。それに、地域の方も活動を理解してくださる人がとても多いです。会う人会う人が応援してくれて、ここまで来てる感じです。」

おいらせ町の自然環境に加えて、人の魅力についても話す外井さんは、様々な人が関わることで子どもの「興味」が育まれていくと考えています。最近では公的資金を使わず自分たちの力のみでビオトープを作るなど自然環境の保全・復元活動を行う「春の小川プロジェクト」とコラボレーションした活動を行うこともあると話します。

「春の小川プロジェクトさんとの企画では、地域の人が子どもたちに自然のことや生き物のことを教えてくれるのですが、教える側がとてもわくわく・生き生きしていて素敵なんです。それが子どもたちにも伝わって、好奇心の芽や興味の芽が育まれると思うんです。ほかにも、郷土料理や生活の知恵といった経験値やノウハウなども『生きる力』として伝えていきたい。人の資源を活かしていく・伝えていくことも大事にしています。」

自然が豊かな場所はどこにでもある、でもこの環境はここにしかない。しかし、今後は提供するプログラムをパッケージ化して、出張サービスを展開することが“野望”だと語ります。

「今の森遊びをパッケージ化して、ケータリングサービスのようにしたいですね。今は親子向けですが、子どもだけでも参加できる森遊びもやってみたいと思っています。虫とかがダメな親の方もいますし、その人はそれでいいと思うんです。」

外井さん3

「最終的には、拠点ですね。自由に子どもの興味に合わせて、小屋や畑などをつくっていけるような拠点、親子で森遊びができる拠点、それに加えて、さっきの移動できるパッケージがあって、もちろん無料で遊べるイベントも提供していきたいです。」

試行錯誤しながら、おいらせ町の身近な自然と人を活かした空間をつくってきた外井さんの「おいらせもりのようちえん」。自らの思いをこう語ってくれました。 「まちづくりは人づくりでもあると思うんです。その”人”っていうのは、自分で何かを生み出せたり、みんなで力を合わせて幸せを作れたりできる人じゃないかなって思います。」

取材先

外井亜希さん(おいらせもりのようちえん)

北海道余市町出身。ご主人の転勤をきっかけに北海道からおいらせ町に移住。友人と2人で「JOYRASSE(ジョイラッセ)」を立ち上げ、町の資源を活用したイベントを開催。2015年には「おいらせもりのようちえん」の活動を開始し代表を務める。里山の自然を活かした親子向けのイベントなどを多数開催している。

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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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