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2018年12月12日 ココロココ編集部

通過点ではなく目的地に。七戸町が始めたインバウンド観光の取り組みと地域おこし協力隊として求める人材とは。

七戸町(しちのへまち)は青森県の内陸東側に位置する人口約15,000人の町。基幹産業は農業で自然豊かなのんびりとした風景が広がる一方、交通の便がよく、新幹線なら東京まで約3時間。また、県庁所在地の青森市と東の八戸市を結ぶ国道4号も通っていることから、県内主要都市との行き来もしやすい立地です。

七戸町では、青森県全体でインバウンド(訪日外国人観光客、訪日旅行)に力を入れていることもあり2010年に開業した東北新幹線「七戸十和田(しちのへとわだ)」駅の外国人乗降客数は急増していますが、町にとどまる旅行客が少ないことが課題となっています。近隣観光地への最寄駅として利用されることがほとんどという現状を打破し、七戸町を目的地にして、滞在してもらうための取り組みが必要です。

今回、七戸町が募集する「しちのへインバウンド感幸(かんこう)応援隊」(地域おこし協力隊。以下、協力隊)と日常的に仕事をともにする(一社)しちのへ観光協会(以下、観光協会)と七戸町商工観光課の職員にお話をうかがってきました。実はすでに外国人を呼び込み、うまくいっている事例も。町ぐるみでインバウンド対策強化の機運が高まりつつある七戸町は、この動きを加速させていく熱量のある人を求めています。

米軍三沢基地から外国人が七戸町にやってくるワケ

左から北畠さん(協力隊)、田中さん(観光協会理事長)、坂本さん(職員)

観光協会が窓口をかまえる「七戸十和田駅」を最寄りとする観光地は、豊かな自然を満喫できる「十和田湖」やそこに注ぐ「奥入瀬渓流」、大間のマグロで有名な下北半島など、いずれも町外ではありますが全国的にも有名なスポットが目白押し。駅を利用する外国人も観光協会の窓口を訪れ、これら観光地へのアクセスについて尋ねる人が多く、観光協会では英語対応が可能な人材を増やすことが急務となっています。

2016年から協力隊として観光協会で働く北畠さんは英語に堪能で、外国人対応の要。窓口での英語対応のほか、SNSを通じた七戸町の情報発信、外国人向けまち歩きガイドなどを担当しています。そんな北畠さんも2018年度で任期を終了することから、後任者にも英語のスキルが求められています。具体的にどんなことをされていたのか話を聞くと、既に小さな成功事例がありました。

北畠さん「Facebookを使い、主に米軍三沢基地のコミュニティに七戸のイベント情報を英語で発信しています。一度来られるとその口コミも投稿されるので、情報発信には非常に重要なツールです。まち歩きの英語ガイドでは、外国の方は特に文化や歴史に触れる場面、例えば神社であるとか、昔からある酒蔵とか、そういったところに強い関心を示すので、まちの歴史や各店の成り立ちなどを調べました。自分は英会話ができるといっても、仕事で使うのは初めてでしたね。」

坂本さん「北畠さんの情報発信が、イベントの集客に効果を発揮しているのを感じています。三沢から七戸までは車で30分ほど。まち歩きで外国人が商店街を訪れると、最初はおっかなびっくりの対応だった店主たちも少しずつ慣れて、英語で張り紙をするなど歓迎する雰囲気が出てきました。」

七戸町の文化や歴史について英語で案内する協力隊の北畠さん

田中理事長「米軍基地に駐留している人たちは数年おきに転勤するのですが、その土地に親しみ思い出づくりをしようと、週末は家族で出かける人が多いんです。町内においても商店街にある日本の骨董品を取り扱うお店に立ち寄り、珍しがって購入します。このような日本とアメリカの文化の違いに商店街の人たちにも様々な面で刺激になっているようです。」

北畠さんの存在は周辺にもいい影響を及ぼしています。観光協会のスタッフも臆さず外国人を接客するようになったり、地元の高校生がインバウンドに関心を持ち英語でのガイドに挑戦するようになったりと、町全体で雰囲気が少しずつ変わってきているのです。

窓口でスタッフへ英語対応のアドバイスも

また、現在観光協会は町内の民泊の窓口をしており「七戸町かだれ田舎体験協議会(※)」(以下、協議会)と連携しています。観光協会と協議会が連携して台湾からの修学旅行生を受け入れており、コミュニケーションは筆談や翻訳アプリなどを活用しています。米軍三沢基地の事例と同様に、ここにも外国人を呼び込んでいる成功事例がありました。

※「かだれ」とは方言で「仲間にならないか」「一緒に話そう」という意味。

七戸の取り組みを有機的につなぐDMO。今なら立ち上げに関われるチャンス

「DMO」とはDestination Management Organizationの頭文字の略で、地域の観光資源に精通し、「観光地経営」の視点に立った地域づくりを推進する組織や法人を指します。日本版DMOでは観光庁がその規定を次のように定めており、法人を観光庁に登録することで国から様々な支援を受けることが可能となります。七戸町でもこのDMOを立ち上げている真っ最中。協力隊として着任する方にも関わってもらうことになります。

▼観光庁が定める日本版DMOの規定
『地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人』
(観光庁サイトhttp://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000048.htmlより抜粋)

「DMO」には町内で自律分散していた取り組みを結び付ける役割もあります。現在は、観光協会も主体的に携わり、複数の部会を設けて話し合いが行われています。

また、観光協会の坂本さんに、七戸町でもうひとつ募集している協力隊「しちのへ縄文ナビゲーター」に関して尋ねると「縄文時代はコンテンツとして注目度が高く、七戸町のインバウンドにも活かせるはず。観光協会としても世界遺産対策室とは情報交換をしていて、今後も連携していく予定です。」という回答がありました。

仕事もオフタイムも充実する七戸町。私たちが待っています!

七戸町商工観光課の高西さん

協力隊が日常的に仕事をするのは観光協会ですが、所属は七戸町商工観光課。協力隊の受入れ窓口となる職員の高西さんにも、話を聞きました。高西さんは七戸町出身。大学進学で一度地元を離れたものの、ふるさとにUターンして就職した若手です。

「観光という仕事柄、内勤だけでなく外に出ていろいろな人とコミュニケーションをとるので、顔を覚えてもらえますし、私自身も町の人たちには何かとよくしてもらっています。協力隊で来られる方には、自分で考えて行動に移せる人に来ていただきたいですね。私たちが全力でサポートします。」

「生活面では、運転に慣れさえすれば七戸はあちこちに出かけやすい場所。私はドライブが趣味なのですが、冬は県内外のスキー場に足を運びます。町内にも駅から10分ほどの場所に町営スキー場があるので、手軽にウィンタースポーツも楽しめますよ。」

最後に、協力隊の北畠さんと観光協会の2人にも応募を考えている方へメッセージをいただきました。

北畠さん「七戸は今、インバウンドにおいて前例のないことにチャレンジしている最中。未知のことに取り組めるいい機会だと思います。」

坂本さん「今回の募集では観光の仕事経験は不問です。未経験の方でも、未経験ならではの視点が地域の魅力を引き出し、地元に住む人たちを輝かせるという事例を多く見てきました。できることが多いに越したことはありませんが、やる気のほうが大事。一緒にがんばりましょう。」

田中理事長「英語が話せること以外にも得意分野があれば、それを活かせる土壌が今の七戸にはあると思います。明るく元気な方をお待ちしています。」

インバウンド感幸応援隊(地域おこし協力隊)の募集情報はこちら!

https://cocolococo.jp/works_recruit/26190

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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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