株式会社M2.F(エムツードットエフ)代表取締役の寺本眞子さんは、自らが運営する自立した女性専用のコ・ワーキングスペース「Albo(アルボ)」の会員メンバーと、「復興支援団体SET(セット)」(以降、SET)のメンバーとともに、岩手県陸前高田市広田町の天然コンブやワカメ、野菜などを本郷で毎月第二木曜日に販売している。今回は、SETのメンバーと二人三脚で広田町を応援する継続的な活動についてお話を伺った。
3.11を忘れないために、私たちができること・続けること
東日本大震災のあと、2011年5月から支援活動を開始したと伺いました。活動のきっかけとその具体的な取り組みについて教えてください。
震災直後は色々な支援活動が活発で、参加する場所も多くありましたが、3ヵ月、4ヵ月経って「東京から何ができるか」という立場で考えると、だんだんと自分たちが関われる場が減っていきました。そんな中、友人3人で「来月はこうしよう、次の月はこうしよう」と自分たちで決めてやれば、東京でも支援活動が続けられるかなと思い、東日本大震災が起こった「あの日」を忘れないために、毎月一回必ず支援の日を決めて活動していくことを決めました。
活動当初は、企業のSHIDAX様から600枚ほど寄付していただいたTシャツを、毎月色々なイベントに参加して販売し、その収益を被災地に送っていました。その活動を一年半ほど続けて、Tシャツをほぼ売り切った頃、陸前高田市の広田町に住民票を移して支援活動を行っている「復興支援団体SET」のメンバーと知り合いになりました。これを機に、私達も陸前高田に行くチャンスを持つことができ、現在の活動に至るきっかけとなったのです。
「東京から支援し続けるには…?」現地の声に耳を傾ける
Alboのメンバー3名から始まった取り組みが、SETやNPO法人「街ing本郷(まっちんぐほんごう)」の方々と協力関係を築いて、活動がさらに展開していくようですが、その経緯について教えください。
最初は、自分たちが被災地に行っても、足手まといになるだけではと思っていました。けれど、「私たちのことを忘れないでほしい。むしろ見に来てほしい」という地元の方の声が届いたんですね。それをきっかけに、2012年9月、広田町で地元のお父さん・お母さんたちと直接話をしたりワークショップをしたりして、「東京から支援し続けるには何をしたらいいか」を知ることができ、そのおかげで次の活動に繋げることができたのです。
それ以来、東京で広田町の産物を販売したり、バザーをするほか、SETのメンバーに陸前高田から来てもらい、「陸前高田の今」と題したセミナーで、地元の本郷の方たちや「街ing本郷」の方たちに被災地の現状について聞いて頂きました。それによって皆さんにご理解を頂くことができ、毎月「11日」に近い第2木曜日に、「街ing本郷」さんの事務所をお借りして、陸前高田の昆布や野菜等を定期的に販売することが出来るようになりました。
望まれていることを、望んでいる方々に届ける支援をしていきたい
広田町の方々と直接話し合い、地元住民のニーズを知り、東京から支援し続ける、という好循環を生んでいるのですね。活動の反響はいかがですか?
今の陸前高田の方々は、「私達のことを忘れないでほしい」との思いと、「東京でも自分たちが栽培した野菜等を販売できる」「東京の方たちに喜んで買って食べてもらえる」という思いが、生きる希望・光だと言ってくださっています。
ニーズも支援の形も、時間とともに変化していきます。でも、東京にいる私たちは、現地の生の声をリアルタイムでなかなか拾えないじゃないですか。なにか的外れなことをして自己満足、というのだけは避けたいので、変化するニーズを常に拾っていけるよう私たちはSETさんと協力関係を築かせていただきました。SETさんが目となり耳となって現地のニーズを吸い上げてくれるので、私たちもブレないで、現地で求められていることを東京からし続けられるのだと思っています。
他団体と強力なパートナーシップを築き、広田町と本郷の交流を盛り上げる
今後の方向性についてはどのようにお考えですか?
SETは、都心から広田町へ住民票を移して現地で暮らすメンバー、首都圏のメンバーを中心に、基本的に現地で活動されています。月に一度は、首都圏に暮らすメンバーも広田町に向かい、色んな形で支援活動を行っていらっしゃるんですね。
SETの共同発起人で現地統括を担う三井俊介さんを中心に、SETのメンバーがパソコン教室を立ち上げて、これまでパソコンに触ったことの無かった地元のお母さんたちに、フェイスブックやホームページの扱い方などを教えていたり。今では、お母さんたちが自分たちでフェイスブックなどに、「今回のホウレン草はどうだった」とか「玉ねぎはどうだった」なんていう書き込みをして、コミュニケーションが活発になっています。私も、東京で売れたものがどういう状況でしたとか、いくら売れましたなどのフィードバックを毎回するのですが、ちょっとした情報でもSNS上でやり取りしてコミュニケーションを密に取れるので、絆が深まりますよね。
また、「街ing本郷」さんとの協力関係は、本郷のお父さん・お母さんたちも、とても安心感を持ってくださっています。個人の活動がNPO同士の活動に繋がり、規模は小さくても経済活動に繋がり、陸前高田のお父さん・お母さんたちの笑顔に繋がっていることを実感しています。そういう部分に本郷の住民の方々も非常に共感してくれて、「できることはさせてもらう」と「街ing本郷」代表の長谷川大さんも間に立ってくださるので、取り組みが非常にスムーズに動くんです。皆様のご協力があってこそ、この活動が続けられているのだと心から感謝しています。
年内に、陸前高田の食材を使った料理教室も企画しています。今後は、本当の意味で広田町と本郷の方々の直接的なコミュニケーションが広がり、深まる企画を立てていきたいですね。
そうすることで、関わる人たちそれぞれのモチベーションも上がり続けると思うんです。月に1回の活動だけれど、顔が見えたりだとか、少しでも進歩しているだとか、そういうのが見えたら嬉しいですよね。このペースでやっていくことによって、細くだけど長く続けていけるのかなと思います。
広田町の人々の魅力が気づかせてくれるもの
広田町の魅力を踏まえて、最後に一言お願いします。
なにしろ人が優しいんですよね。自分たちが大変なのに、あるもので私たちを迎えてくださったりして、そういう人柄に接すると、なんでそこまで優しくいられるのかな、と懐の深い人間力にグッときます。支え合ったり助け合ったりする光景が当たり前にあって、全然めげてなくて、支援はありがたいけれど自分の足で立って歩きたいんだという気持ちがとても強いんです。本当にすごいですよね。
支援活動といっても、結局は自分のためだと思うんですね。そういうことをさせてもらうことでものすごく大きな気付きがあるし、被災地のことを忘れちゃったり何にも感じなくなっちゃう自分が嫌じゃないですか。だから、自分のためにやっているようなものだという気がします。