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2016年3月3日 松永直

「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」イベントレポート

和紙のふるさとや有機農業のパイオニアとして有名な埼玉県比企郡小川町。この小川町で「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」という会が開催されています。名前のとおり、田植えから稲刈りまでを体験、そして和紙のふるさとならではの手漉き和紙での日本酒のラベル作り、実際に酒造りの現場を知るべく酒蔵見学と、四季を通して酒のできるまでを知り、体感できる会です。

2016年2月7日(日)に行なわれた酒造見学とラベル作りの会にお邪魔させていただきました。

 

池袋から東武東上線に乗り込み、乗り換えなしで1時間15分ほどで小川町に到着。東京では全く気配のなかった雪が坂戸を越えたあたりから車の上や道、畑などを白くしており、もちろん小川町でもあちこちに前日に降った雪のあとが見られ、キラキラときれいな雪溶けの朝でした。「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」の酒造見学会場となる「晴雲酒造」までは駅からのんびりと歩いて10分程で到着しました。

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すぐ近くにはきれいな川が流れていて、山々を背景にとても気持ちのよい景色でした。

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10年以上続く「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」

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小川町で開催されている「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」は2015年度で第11回目と10年以上続く会で、全7回のプログラムで構成されています。まず、6月の田植えから「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」は始まります。田植えは機械ではなく1本1本、手で植えていきます。翌月7月には草取りと田んぼの生き物観察。生き物を観察できるのは無農薬の田んぼならではですね。そして10月には手刈りで稲刈り。そしてそのお米は天日干しされ、収穫祭でいただきます。12月には無添加の和紙の手漉き。この体験も和紙のふるさと小川町ならでは。2月は実際に収穫したお米を使ったお酒を作っている晴雲酒造の酒蔵見学と12月に作った和紙で瓶に貼るラベル作り。3月は実際に酒瓶にラベルを貼るといったまさに米作りからお酒ができるまでを体験できる会です。

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どの会も日曜日の午前中に開催されるため、ご家族で参加されている方も多くいらっしゃいます。もちろんお友達同士やご夫婦、おひとりでの参加の方も。参加者の居住地域は都内や神奈川、群馬など様々です。スタッフの方々は小川町に住んでいる方が多く、米作りやお酒のことだけではなく交流を通じて小川町のことを知ることができるのもこの会の魅力です。収穫祭や懇親会もありますし、やっぱり毎月顔をあわせると仲良くなれますよね。スタッフの中には最初は参加者だった方も。私がお伺いした時も2016年度のスタッフ募集の声がけがされていました。

 

関東灘として知られる小川町の「晴雲酒造」

小川町は周囲を山に囲まれた盆地のため、夏は暑くて冬はとても寒い地域です。酒処の灘の気候や地形と似ているので関東灘として知られる小川町には明治の中頃には二十軒ほどの酒蔵があったのだそうです。そして実は埼玉県は日本酒の生産高が全国4位!みなさん、ご存知でしたか?

3軒の酒蔵が小川町にはあり、その1つの「晴雲酒造」が今回の酒蔵見学の会場です。「晴雲酒造」では「おがわの自然酒」というお酒を造っています。このお酒は有機農業のパイオニアとして有名な金子美登さんの霜里農場で栽培された無農薬米と、山形県高畠町上和田有機米生産組合で栽培された無農薬米だけを使用して作られています。「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」のプログラムはこの「おがわの自然酒」を作る工程を楽しむ会なのです。

「晴雲酒造」の特徴の1つとして、自社精米を行なっています。精米したものを買って来てしまうと米の善し悪しがなかなかわからないので、素材の良さをしっかりと見て、触れて確かめることができるように敷地の中に「晴雲酒造」では精米施設を設けています。ここまでしている酒造はそう多くないのだそうですよ。そして精米した後、洗米して吸水させた米は甑(こしき)で蒸します。

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この光の差す天窓から蒸気が出て行く様子は酒造りの時期の小川町の早朝の風物詩と言える光景で、お米のいい香りがなんと200mも先までするのだとか。

仕込み終わった麹を見せていただいたり、酒母タンクをのぞかせていただいたり、まさに酒造り真っ最中の酒蔵はとてもいい香りに包まれていました。

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そして見学の最後はお待ちかね!「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」で作ったお米の入ったお酒の試飲タイム。出来立てほやほやのお酒です。やっぱりこの瞬間が大人のみなさんは一番盛り上がっていました(笑)。

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手漉き和紙でラベル作り

酒蔵見学が終わり、酒造りについて詳しくなった所で、12月にみなさんが漉いた和紙を使ったラベル作りがはじまりました。会場は昔酒蔵だった建物の2階で、歴史を感じる素敵な雰囲気。普段は資料館になっています。昔、酒造りで使われていた道具や古い酒瓶などが並んでいました。

まずは「水切り」という方法で和紙をラベルの大きさに切ります。

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そして筆や墨、絵の具、和紙などラベルに使いたい道具や材料を各自が持込み、みなさん真剣にラベル作りに取り組みます。

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どんどん書いていく方、慎重派な方、性格が出ておもしろいですよね。

ラベルは1人2枚作ります。1枚は瓶に貼る用、もう1枚はラベルコンテスト用に提出します。コンテストでは賞品もあるそうですよ。個性的なラベルがたくさん。さて、どのラベルが選ばれるのでしょうか。そして次回は作ったラベルをでき上がったお酒の瓶に貼っていよいよ完成です。楽しみですね!

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2015年度は2016年3月で終了となりますが、2016年度の「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」も受付が開始となりました。

詳しくはこちらからご確認ください。お申し込みは4月30日必着で往復はがきか、メール、WEB申し込みとなります。

都内から程よい距離なのに、自然豊か。週末通うのにはぴったりな小川町。車がなくとも、電車で行けるのも魅力的ですよね。有機農業のパイオニアである地域らしく、秋には小川町オーガニックフェスなども開催されるんですよ。

「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」は四季を通して、食と農と伝統文化を体験できます。米作りと酒造りを楽しみたい方、小川町ののどかな風景や、小川町のみなさんの笑顔、小川町のおいしいものにも触れたい方はぜひ参加してみてはかがでしょうか。

 

「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」Facebookページ:https://www.facebook.com/komesake.ogawamachi/

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私が紹介しました

松永直

松永直東京都出身。料理家および食に関するライター。 大学卒業後、マーケティング会社勤務を経て料理の道へ。主な活動は出張料理、食品メーカー向けメニュー開発、地域と都市をつなぐフードイベント企画・運営、企業や学校での料理教室など。 また、地域おこし協力隊として移住した友人と「しまの食堂」を立ち上げ、愛媛県上島町の食材を使った料理を都内各地で提供している。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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