「紫波タウンイノベーターズ」として移住定住を促進するUIJターンコーディネーター、リノベーションまちづくりを推進するタウンイノベーター、2つの分野で地域おこし協力隊の募集を行っている岩手県紫波町。
今回は、紫波町のこれからを担う3名の若手プレイヤーに紫波町の魅力や紫波タウンイノベーターズに求めることなどをお話いただきました。
髙橋 和久さん(29)株式会社高橋農園
(経歴)
紫波町出身。専門学校を卒業後、青森県で菓子製造の職に就く。約3年の勤務を経て、家業である株式会社高橋農園に入社。自社栽培のジャガイモを使ったフライドポテトなどを販売する「potato deli Mameta」をオガールプラザ内で経営している。
百済 和至さん(36)Akala FARM代表
(経歴)
花巻市出身。東京でアパレル会社に勤務し、6年前に岩手にUターン。紫波町の中心部に居住しながら町内の中山間地域でぶどうの栽培を手がけている。会社員時代に経験した小売業の業態に違和感を感じ、自分の手で生産した商品を販売しようと考えた。そして、果樹の栽培を紫波町で行うことを選んだ。
工藤 博央さん(32)紫波町情報交流館スタッフ
(経歴)
紫波町出身。町の非常勤職員などを経て、オガールプラザ内紫波町情報交流館の開館時から勤務。住民のイベントづくりや活動のコーディネートをしながら、マイプロジェクトとして「遊び場」「居場所づくり」を目的に、スラックラインの体験プログラムを開催している。
■「オガール」が紫波町にもたらしたもの
まずは今回の対談場所ともなったオガールについてお話しいただきました。
(以下、敬称略)
工藤: 今日は紫波町の魅力などをお二人とお話できればと思います。私はオガールができた当初から職員として施設の運営に関わっているのですが、この施設ができてお二人の生活に起きた変化は大きかったですか?
▲高橋さんがオガールプラザ内で経営する「potato deli Mameta」
高橋: はい。私自身もオガールに店舗を構えていますし、オガールができたことによって人と知り合う機会がとても多くなりました。
百済: 私は紫波町の隣にある花巻市の出身です。オガールができた当初、町内に知り合いが多くいた訳ではありませんが、何人かに声をかけてバーベキューイベントを開催しました。工藤さんとはそのイベントがきっかけで知り合いましたし、次第に色々な人が集まるようになり知り合いが増えていきましたね。
工藤: 友達と集まる場合にもオガールを使うことは多いですか?
高橋: かなり多いですね。紫波町の中心なので便利ということもありますし、自由に使える空間が多いので待ち合わせ場所としても使いやすいです。
工藤: 現在募集中の「紫波タウンイノベーターズ」はここオガールを拠点にして、まちの魅力を発信したり、プロジェクトを進めたりするわけですが、お二人が思う紫波町の魅力や価値とはなんでしょうか?
▲空から見た紫波町 町の中央に北上川が流れ、東西に中山間地域が広がっている
高橋: 「自分に合った暮らしを選べる」というところですね。紫波町は山も川もあるし、自然との距離感がちょうどいいんです。都市部と農村部の距離も近いので家と畑が隣り合わせでなくても農業ができます。紫波町に住んで盛岡に電車や車で通勤という人も多いですね。
▲中山間地域に広がるぶどう畑
百済: 同感です。私は中山間に農園にありますが、住んでいるのは駅近くのエリアです。車で15分も走れば里山に着くし、中心部に住むことで生活の利便性を保つこともできます。
■若い世代が感じる紫波の課題とは
工藤: 自然が好きな人はふらっと行けるし、オガールの様な施設もある。小さなまちですが「暮らす」という面ではあまり不便を感じませんよね。ところで百済さんは異業種から転職して就農されていますが、紫波の農業を外からの目線で見たとき、課題などは感じますか?
▲ぶどう畑で作業する百済さん
百済: せっかく良い商品(果物や野菜)を栽培しているのに、その商品をどうプロモーションして販売するかということに無頓着だったり、非効率な部分を残しながら経営をしているところがもったいないなと思うことがあります。
高橋: 私たちと同じ年代の農業後継者層でも、デザイン性を持たせたり、外からの目線を取り入れて経営方針を変えているところは突出してきていますよね。
百済: 外からの目線だから見える「経営の効率化」や「プロモーションの手法」というのは農業だけではなくて、地域活性化にも言えることだと思います。地元に長く住んでいると当たり前になって埋もれがちなことも、実はすごく魅力あるものだったりします。タウンイノベーターズにはそういった部分を掘り下げてほしいなと思います。
高橋: 工藤さんから見る「まちの課題」みたいなものは何でしょうか?
▲工藤さんが働く、オガールプラザ内紫波町情報交流館の様子
工藤: 20代の若い世代の活動がもっと必要だなと思います。オガールのように人が集まる「場」ができたのですが、なかなかコミュニティ活動に発展していないように感じます。どうしたら自発的に行動してくれる人が増えるか考えながら、まずは自分が動かなくてはと思い、スラックラインの体験プログラムを始めたりしています。
▲オガールで行われる「スラックライン」体験プログラムの様子
■多くの人を巻き込んでいけるエネルギーのある人に来てほしい
工藤: 「紫波タウンイノベーターズ」は、まちの課題を解決することが役割ですが、一緒にどんな活動をしたいとか、求める人物像はありますか。
百済: 社会人経験を積んでいて、自分ひとりでも事業ができるくらいエネルギーがある人に来てほしいです。そして紫波町に価値を見出して、あくまで自分自身が主体でありながら、どんどん人を巻き込んでいってほしいです。
高橋: 私はビジネスの方向性を持っている人です。こちらに来てからゼロからビジネスモデルを作るのではなくて、自身の経験やスキルを活かした事業を展開できる人に来てほしいなと思います。
工藤: なるほど。私は下の世代からの意見を聞きたいので、若くて、周りを巻き込んでいける人がいいなと思っています。
百済: 「任期が満了する3年後、何をしたいですか?」と聞かれたときに自分の考えを答えられるかは重要だと思います。
高橋: そうですね。しっかりビジョンをもっている人が必要だと思います。地域資源が豊富な紫波町は、地方で事業をしたいと思っている人にとって良い環境だと思います。任期中にたくさんの人と繋がって、その後も活躍してほしいですね。