記事検索
HOME > 移住する > Iターン >
2016年11月22日 清水美由紀

埼玉から愛媛へ。2年間の移住先探しから始まる、加藤家のストーリー~前編~

2015年の春、埼玉県から愛媛県へ移住した家族がいます。雄也さんと千晴さん、そして昨年2015年に産まれたばかりの女の子悠風(ゆうか)ちゃんの加藤家です。移住先である愛媛県は雄也さんの実家があり、千晴さんも大学時代を過ごしたふたりにとって親しみのある場所。

加藤さん一家がどうして移住を考えるようになったのか、そして移住するにあたってどのような活動をしたのか、埼玉県に住んでいた頃のお話をお伝えします。

自然が好きなら、近くに住めばいい

当時の加藤家の住まいは埼玉県さいたま市。住宅街の中にある、アパートに暮らしていた。理学部の生物学科を卒業し、バードウォッチングをするなど生き物への興味が強かった雄也さんと、農学部で農業土木分野を専攻し、自然に近い形で行う田んぼの整備について研究をしていた千晴さん。卒業後に所属した、生き物の調査や環境教育を行うNGOで出会ったふたりは、結婚するタイミングで移住の話をするようになったという。

「埼玉に住んでいても、週末は長野に登山に行くことが多く、都心に向かうことはあまりない生活でした。どうしてこんな風にお金と時間をかけてるんだろう、自然の近くに住んでいればすぐに出来ることなのに、って思うようになったんです。」と、千晴さんがその時の心境を教えてくれた。

屋根付き橋
▲移住先選定にあたり訪れた愛媛県内子町の風景

そんな想いから移住を考えるようになったふたりは、移住や地方に関する様々なイベントに顔を出した。

「イベントに参加すると地域コーディネーターみたいな、地域のキーマンに会えるじゃないですか。そういう人たちに、おもしろい人いませんか?って聞いたりして、紹介してもらった人を訪ねたりしたよね。見ず知らずの人の家に泊めてもらったりもしたね。」と千晴さんが話すと、

「同世代の人が有機農業しながら暮らしているブログを発見して、その方がそのブログで『移住を考えてる人がいたら相談に乗ります』って書いていたので、じゃあ行ってみようって。結局泊めてもらったね。」と、雄也さんが続けた。

ふたりの口からは、日本全国の地域で活躍する人物とのエピソードがポンポンと飛び出す。

その後、移住に大きく近づいたのは、年に一度、長野県小布施町に全国から若者が集まって行われている「小布施若者会議」への参加だったという。このイベントへ参加したことで、人脈が一気に広がり、移住に関する情報もたっぷりと入ってくるようになった。

「それで火がついたというか…そこからは、ジェットコースターに乗ってるみたいだったね。」と、千晴さんはその時のことを振り返った。

肱川
▲愛媛県と高知県との県境の河原にて

 

移住の決め手は、同世代の楽しそうに暮らす姿

その後、「小布施若者会議」で出会った小豆島で活躍する方を訪ねて、小豆島へ。その旅で、後の移住先となる愛媛県西予(せいよ)市も訪れることになる。

元々、ふたりが西予市を知ったのは、愛媛県の各市町村が集まる地域おこし協力隊の説明会の時だった。

「西予市にはコウノトリが来るってチラシに書いてあって、そういう町っていいなあって思ったんです。その時説明してくれた方の対応もとてもよかったし。」
雄也さんにとっての西予市の第一印象は上々だったよう。

「埼玉ではエコツアーの企画や緑地公園の管理といった仕事をしていたのですが、移住後も環境に関わる仕事をできたらいいなあと漠然と思っていました。西予市ではジオパークといって、特徴的な地形や地質を地域の魅力として発信していく事業に携わる人員募集をしていたんです。地域にある自然を大切にしたまちづくりという考え方が好きだなあと共感しました。」

その時は応募に至らなかったが、雄也さんの心に西予市が気にかかる存在となって残った。

そして、「小布施若者会議」をきっかけとした小豆島をはじめとする四国への旅で、ふたりはその西予市を訪れた。地域おこし協力隊の説明会で西予市を知ってから2年後のことだった。

「そのとき、西予市でおもしろいことをしている同世代の人たちにたくさん出会えたんです。移住先で感覚の合う人と出会うことって難しいと思うんですが、私たちの場合、そういう人に出会えたというのが移住の決め手になりました。同世代の人たちが楽しそうに暮らしてる姿がいいなあって思ったんです。」

牧場
▲愛媛県内子町の棚田にて

自分のやりたい仕事、理想とするライフスタイルに合う場所を求めて様々な場所を訪れたふたり。人との出会いもあり、ついに西予市に移住先に決め、2015年春から西予市で生活しています。雄也さんは地域おこし協力隊として活動をスタートさせ、千晴さんは、子育てをしながら雄也さんと共に幼児向けの環境教育イベントを開催しています。
ふたりが実際にどんな暮らしを送っているのか、移住後どんなことを考えているのか、続きは次回お伝えします!

清水美由紀
記事一覧へ
私が紹介しました

清水美由紀

清水美由紀フォトグラファー。自然豊かな松本で生まれ育ち、刻々と表情を変える光や季節の変化に魅せられる。物語を感じさせる情感ある写真のスタイルを得意とし、ライフスタイル系の媒体での撮影に加え、執筆やスタイリングも手がける。身近にあったクラフトに興味を持ち、全国の民芸を訪ねたzine「日日工芸」を制作。自分もまわりも環境にとっても齟齬のないヘルシーな暮らしを心がけている。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

人と風土の物語を編む