移住悩みびとの旅 第3回:ひろし、山梨の限界集落のゲストハウスに行く。

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山梨県の奥深く、典型的な中山間地域の限界集落「高下(たかおり)」地区。
3年前に友人夫婦が移住し、築150年の古民家を改修し“World Café Guest House”を始めました。持続可能な暮らしを実践し発信する二人の家には、多くの旅人が立ち寄り、地域の方との対話の場になっています。
そして、集落に24年の時を隔て子どもが生まれ、今ここには新たな移住者が集い始めています。

今回は、移住悩みびとひろしが地域で暮らす豊かさの『理想の場所』を訪れてみて、自分とみなさんの移住の悩みの後押しをしてみたいと思います。

山梨富士川町の奥深い中山間限界集落「高下(たかおり)」

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都内から車で2時間半、甲府から1時間の山梨県富士川町高下(たかおり)地区。
冬至から元旦にかけて富士山頂に日が昇りダイヤモンドのようになるダイヤモンド富士が輝く地。
「鷹が降りる」集落という由来があるように、海抜500mの山深い中山間にある20世帯の限界集落です。

私がやっている農場イベントに遊びにきてくれていた友人が、この集落に3年前に移住しました。 なんでまたこんなところに!友人である私も、地元の人でさえも当初はいぶかしんだ彼らの選択。
しかし、3年が経ち、地域・人・自然とつながって根を張って生きる二人の暮らしは、豊かそのもの。

そんな、二人の暮らしぶりと、集落の今を少しご紹介します!

 

持続可能な暮らしの創造的な対話がしたくって

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鷹が降りてくる山の中に、築150年の古民家を改装した「World Café Guest House」。
ちょっと変わった“ワールドカフェ”という名前は、“創造的対話”の意味。

都会で育ち、ゲストハウスに宿泊しながらアジアや世界中を巡った山口宗一郎さん・博子さんは、旅行者と地域の人が出会い交流し、持続可能な暮らしや地域の在り方を創造する対話の場としてゲストハウスをしたいと思うようになりました。

「やるなら、やっぱり山の近くに住みたいよね」「畑や山しごとをしながら、食べ物やエネルギーは自給したいね」
古民家を改装してゲストハウスをすることを決めていたので、Webなどで自分たちの条件に合う家を探しては、現地に見にいく日々を送っていました。

 

理想を求めすぎず、まずは移住してみる柔軟性

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しかし、なかなかいい地域、理想的な古民家には出会えませんでした。
「旅行者や地域の方が気軽に寄れる、人の交流が生まれる場」「山に近くて自然によりそって農が近くでできる場所」「地域資源を活かして暮らしが自給できる古民家」。
なかなか全てを満たす場所が見つからない。いつしか二人は、移住の条件ではなく、“まちと人との感性”で移住先をみつけるようになりました。
その感性があう場所の一つが、富士川町。それから、月1回は通って人に出会ってきました。

移住悩みびととして、いろんな地域で暮らす人を見てきましたが、素晴らしいと思ったのはその柔軟性。物件だけに目を向けると、いい家ではなないし理想的な周辺環境ではないかもしれない。
だけど、この自然に惚れ、地元の人と知り合い、関係性を築きはじめた二人の「この場所で暮らしたい!」という思いは強くなる一方。
そこで、まずは「家」ではなくその「土地」に移住しちゃったのです。

 

わらしべ長者のように、理想の環境を紹介してもらえた。

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まずは、二人のことを応援してくれる地域のおばちゃんの家に居候(!)しながら地域の関係性を築いた二人。山村体験宿泊施設を運営していた方に共感していただき、その場所を借りて、東京の友人を呼んで里山暮らし体験イベントとゲストハウスを一年間行っていきました。
昔ながらの森の暮らし体験や、これからの生き方を考えるワールドカフェワークショップ、etc…
私も、この時期に訪れて、ここの自然との対話の場にほれたひとり。

転機は2013(平成25)年。集落で一軒空き家になっていた家を、貸してもいいという方が現れました。築150年の古民家で、ゲストが泊まれる広い造りで、土間や小さい畑もあって、理想の環境。

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でも20世帯の小さな集落。地域の人に受け入れてもらえるのか、不安な気持ちもありました。集落の方の部落会に呼んでいただき、挨拶と話し合いがもたれました。
「なぜこの地に住みたいのか」「どうやって暮らしていくのか」「いつか離れていくのではないか」・・・

集落の方の不安と期待が入れ混じった顔を晴らしたのは、宗一郎さんの一言だったといいます。
「私は、この地に骨をうずめるつもりですから」

その一言に、集落の方は「そういってくれて、安心した」「長くいてくれるつもりだから、そういうつもりで関係性をつくっていける」と。
「一年間ここに通って、顔を通していたのがよかったんだよ」と、仲介してくれた方に声をかけてもらえました。
二人と同じように、集落の方も不安と期待が入れ混じっていたんだなと思って、安心し、晴れて部落の一員になった一日だったそうです。

 

「この地に骨をうずめる」地に根を張った暮らし

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骨をうずめる、の言葉の通り、今二人はこの地に根を張って生きています。 この日は、朝5時に起きて、6時から三年目に入った田んぼの除草。
半反(150坪)程の田んぼと、一反弱の畑は無農薬で、雑草との戦い。2時間ほどで汗ぐっしょり。 ふと顔をあげると、青々とした夏色の山がどーんと座っていて、なんともいえない安心感。

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8時半にはもう暑くて田んぼしごとにならないので、ゲストハウスに戻って食事の準備。お湯はソーラークッカーで太陽の力で沸かします。
ゲストが昨日釣ってきてくれたアジは一夜干しにして、火鉢でゆっくりパチパチとあぶります。薪をわって、炒め物はロケットストーブでつくり、お風呂も薪風呂で沸かします。

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自分たちが自給したお米を昔ながらのお釜で炊き、ワークショップで味噌や自家製醤油をつくり、お借りした古民家に代々伝わる漆器や食器でいただく。てづくりの、なるべく自然に沿った、次に継いでいくことを大事にした暮らし。

 

「ぜんっぜん、スローな暮らしじゃないから(笑)」

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そんな、私にとっては理想のように感じますが、一般の人にはストイックのようにも映るかもしれない暮らしぶり。でも、当の本人たちはいたって自然体。
「ぜんっぜん、スローな暮らしではないから(笑)」とくったくのない笑顔。

地域のおじちゃんたちに「少しぐらい化学肥料を使いなさい」と言われたら使いますし(こっそり一部だけ)時には集落を降りておしゃれなイタリア料理屋でパスタを食べるのが楽しみだったり。天気の気持ちいい日は庭に出て「あー幸せだねー」「私たちツイてるねー」なんてボーっとしてます。

 

24年の時を隔てて、集落に響く赤子の声

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移住して3年、この家をゲストハウスにして2年が経ち、二人に子どもが生まれました。印象的だった言葉があります。
「24年ぶりに、この集落に命が生まれたんだよ」。

住みにくい典型的な限界集落。聞こえてくる話は、「あそこの家族も山を降りることになった」「あの方が亡くなった」そんな悲しい話が多かった。集落に響くこの赤子の声は、どんなに希望の声に聞こえたことか。あなたたちが移ってきてくれて、本当によかった。

そんな地域の人の声を、嬉しそうに話してくれる3人の笑顔に、一つの決意が地域に与えるパワーを、肌で感じとった今回の旅でした。

 

旅を終えて。いまここにある、地域との対話。

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旅を終えて、なぜ私や多くの人がこの二人とゲストハウスに会いに訪れるのか、振り返ってみるときがあります。

それは、二人の「地域との対話」の真摯な姿勢に、心惹かれるからだと思います。
彼らのような対話の先にこそ、移住した先にある自分が求める生き方がつくっていけるのだと、みんな肌で感じているのだと思います。

そんな二人が暮らす集落も、先が明るいわけではありません。この3月には、町内の別集落の小学校が廃校になりました。近隣はリニアモーターカーの延伸区域に入り、不安な面もあります。

しかし二人は諦めることなく、集落の方や行政と話し合いを重ね、対話の力で将来をつくっていこうとしています。二人のまわりには、いつしか子ども連れの若い夫婦が移住したり、行政からも相談の声がかかるようになってきました。何より、地域の方が、お茶を飲みにおいで、野菜がいっぱいとれたよと、温かく声をかけてくれます。(時には、また草がはえとるぞっ!と草を刈ってくれます)

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地域との対話の先に、つくりたい生き方・暮らしがある。
移住悩みびとひろしの、第3回目の旅が終わりました。

薪暮らし体験宿 World Cafe Guest House
〒400-0513 山梨県南巨摩郡富士川町高下1511
Tel:090-5786-7907
http://www.worldcafeguesthouse.com/

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遠山ひろし

遠山ひろしtohyama-hiroshi

1981年、熊本県八代 生まれ。
茨城県やさと地区の循環型農園を舞台に、東京でシェアハウスをしながら、マチとムラを往還する暮らしの実験中。「自分の暮らしは自分たちの手でつくりだす」をテーマに、田舎の豊かなライフスタイルを無理なく楽しく創り出すことを大切にしています。
Keyword:コミュニティづくり/移住/地域文化芸能/ツーリズム・イベント・フェス運営/公共空間リノベーション/

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