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2018年3月2日 ココロココ編集部

気になる?自然あふれる環境での子育て事情。キーワードは「生きるチカラ」【長野県信濃町レポート】

都会でのせわしない毎日に疲れ、田舎で暮らしたいなあ、そんな気持ちから移住を検討している方も多いはず。実際に移住を検討し始めると、仕事・住まい・生活環境等気になることはたくさん。なかでもお子さんがいらっしゃる方が気になるのは子育て環境ではないでしょうか。田舎での子育て環境は実際にはどうなのでしょうか。今回は長野県信濃町の子育て環境にスポットを当てて紹介します。

自然環境を生かした子育てを

長野県信濃町は、北信五岳に囲まれた自然豊かな町。風光明媚な高原盆地帯にあり、黒姫山と斑尾山の麓に広がる高原では夏にはトレッキングやZIPスライダー、冬にはスキー・スノーボードが楽しめることで人気があり毎年多くの観光客が訪れます。冬は豪雪地帯、夏は昼夜の寒暖差が激しいことからたくさんの美味しい野菜の産地、食材の宝庫としても名高い町です。

雪だるま

自然に恵まれた環境での子育ては、子どもたちの知的好奇心や感性が豊かに育まれ、さらに異年齢の集団活動の中でコミュニケーションや社会性、自尊心や自己肯定感の向上も期待できると言われています。近年、屋外での遊びや運動を中心に様々な体験を深め、知力と体力も同時に高めることができるという「自然保育」は全国的にも注目を集める新しい保育スタイルです。この自然保育に欠かせないのが、山、森、林、川、田畑といった自然豊かなフィールド。信濃町には、「自然保育」に最適な環境が整っています。

子育て現場の声「柏原保育園」インタビュー

では実際の子育て現場の声はいかがでしょうか。信濃町には4つの保育園「柏原保育園」、「野尻保育園」、「富士里保育園」、「古間保育園」があります。この4ヶ所の保育園は待機児童がなく子育て環境も充実しています。今回は黒姫駅から徒歩3分程度のところにある「柏原保育園」を訪れ、先生方にお話を伺ってきました。広い園庭は一面の銀世界。子どもたちは自然いっぱいの環境で思いっきり遊ぶことができるなんて羨ましい限りです。

柏原保育園

▲2月中旬、広い園庭は一面の銀世界でした。

信濃町流「自然保育」とは

――園長先生はじめ、5名の先生方にお集まりいただきありがとうございます。今日は晴れていますが、信濃町は特別豪雪地帯に指定されているだけあり園庭にも雪が積もっています。子どもたちは冬も外で遊びますか?
園長先生:子どもたちは小さい時からずっとここで遊んで雪にもなれ親しみますので、多少雪が降っていても気にせずに元気に遊んでいますよ。自然が身近な環境ですので、たくましくなりますし、雪が降っていても『寒い!』なんて言わないですね(笑)。夏は近くの神社や公園に行って自由に遊んでいます。

▲柏原保育園の先生たち。寒い中、園庭での撮影にも笑顔でご協力くださいました。

――季節を感じながらたくましくなっていくのですね。自然の中で遊びながら育った子どもたちはどんな力が身につくのでしょうか?
園長先生:自然いっぱいの中で遊ぶことで、「生きるチカラ」が身につくのではないでしょうか。保育士は子どもが遊ぶ姿をじっくりと見守り、“仕掛け”は考えますが、基本的に“動き”は子どもたちに任せています。そうすることで、友達同士の関わりも増えてきますし、自分たちで解決したり考えたりする力が養われていきます。困ったら部分的に助けを出しますが、子どもたち同士で話し合いをして決めるように促しています。

▲近くの公園の傾斜をすべり台に。子どもたちのアイデアです。

――「生きるチカラ」は大人になっても必要だと感じます。信濃町は自然が身近にあるため、最近注目を集めている「自然保育」が日常の中で実施されているようですね?
園長先生:そうですね。「自然保育」というものを意識して何かプログラムを立てるようなことはしていません。「自然保育」を進めるために、例えば畑を準備して野菜を育て収穫させる、というのは違うかなと思うんです。私たちが準備した場よりも、自然あふれる町の中でいろいろなことに気づき成長していくほうがいいと考えています。

▲散歩中に足跡を発見。何の足跡かをみんなで考えました。

園長先生:春先にみんなでお散歩に出かけたら、田植えをしているおじいちゃんおばあちゃんに出会いまして、苗を頂きました。園に持ち返ったあとは、みんなで大事に栽培して収穫、おやつの時間においしくいただきました。これも「自然保育」と言えるのではないでしょうか。苗が育ち稲へと成長していく過程を目にすることもでき食育にもつながりそうです。

原田先生(集合写真右から2番目):私は以前、町外の保育園で働いていました。その保育園は「自然保育」などいろいろな取り組みをプログラム化していたのですが、決められた遊びに合わない子どももいて。何だかモヤモヤとした気持ちを抱え、信濃町に来ました。自然の中で自分が楽しいと思う遊びをつくっている子どもたちの姿を見て、望んでいた保育の形はこれだなと思いました。

信濃町は暮らしやすい?

――信濃町での子育てに魅力を感じる方もいると思うのですが、首都圏などから信濃町に移住して子育てされている方などいらっしゃいますか?
園長先生:当園のお母さん方は信濃町出身の地元の方が多いですが、ご結婚されて町外から移住されてきた方もいらっしゃいます。皆さん温かく迎え入れてくれると思いますよ。都会でよく聞くお母さん同士の閉鎖的なグループは存在せず、お互いに助け合っています。町の人はおいで!というムードでいっぱいです。卒園後もここでの生活で仲良くなった子がそのまま同じ小学校に入学しますので、子どもたち同士、お母さん同士も強いつながりが生まれているようです。毎日の生活も車さえあれば日常生活に不便さを感じることはないと思います。

▲とても明るく笑顔が素敵な園長の柳澤美香先生(右)と佐藤千晴先生(左)。

――佐藤先生は一度信濃町を離れ、信濃町に戻られたとお聞きしました。
佐藤先生:はい。学生の時に上京して一人暮らしをしていました。都会はキラキラしているし近場で何でも手に入り、テレビによく映る場所にもすぐ行くことができて楽しかったです。でも長期の休みで信濃町に帰ってくると何かホッとするんですよね。地元の良さを離れてみて再認識しました。最終的には就職するなら信濃町がいいなあと思いましてUターンしました。

インタビューの様子

▲園長先生の明るさや優しさにいつも助けられている、と先生方。園長先生のことを「歩くパワースポット」とも(笑)

――先生たちが笑顔でお話する姿から、信濃町が本当に暮らしやすくて大好きなんだなと感じます。この雰囲気なら他の土地からいらっしゃった方も溶け込めそうですね。
園長先生:いつでもウェルカムですよ!今、世の中は様々なものが発達して慌ただしい社会ですが、変わらなくて良いものもたくさんあると思います。信濃町には四季の移り変わりを感じることができる、のんびりとした時間が流れています。自然の中でゆったりと子育てしたい方、ぜひ一度遊びにきてくださいね。

子育て施設も充実。安心して子育てができるまち

今回は保育園の先生方にお話を伺いましたが、他にも信濃町には子育て施設があります。例えば「木育ルームなかよし」 は、子どもが遊べる室内広場で、木製遊具と木製玩具がたくさん。保育経験のある相談員が常駐しているので、子育てに関する相談や保育園について教えてもらえます。「いつでも気軽に顔を出してくださいね、小さな悩みも人に話すと楽になりますよ」と相談員さん。さらに地域の子育てグループも4つあり各地区にある公民館で活動をしています。

▲木育ルームなかよし

そして保育園を卒園したあとは、小中一貫の「信濃小中学校」へ入学します。2012年までは信濃中学校と小学校5校が町内にありましたが、少子化などの影響もあり学校は全て統合され、現在は「信濃小中学校」が町内唯一の学校です。田舎の学校といっても子どもの数が少ないわけでもなく生徒数は約700人の大規模なもの。小学生1〜6年生と中学生1〜3年生が1つの校舎で一緒に学んでいます。

▲信濃町立信濃小中学校

校風は、大きい子どもたちが小さい子どもたちの面倒をみるというアットホームで暖かい雰囲気。授業やクラブ活動では、町内の農家の方に先生になっていただいて、年間を通して一緒にお米を育てる授業を行ったり、生け花や郷土料理を教わったりして、地域の人たちが関わりながら授業行う信濃町の学校ならではのスタイルも。都会にはないのびのびとした環境で、様々な経験をすることができそうです。また通学させるにあたり教育費も気になるところですが、教材費を無償とし家庭の負担を減らしているので安心です。

◆詳しい取り組み等は「信濃小中学校 校長先生インタビュー」をご覧ください。https://shinanomachi-iju.jp/446/

▲学校帰りに田んぼで泥まみれになって遊んだり、野尻湖をプール代わりに泳いだりと、あらゆる場所が遊び場に。

大自然と美しい四季の移り変わりを身近に感じて過ごす信濃町での生活。子どもたちの遊びのフィールドは信濃町の自然そのものです。自然と共に生きる力が養われ、子どもたちにとってかけがえのない経験になることは必至。街の人も移住者の受け入れにとても寛容で暖かい雰囲気があり、子育て環境も充実。田舎での子育て、検討してみては?

取材先

信濃町立柏原保育園

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ココロココ編集部

ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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