岩手の豪雪地帯・西和賀で雪に親しむ
岩手で「しろ」と言えば白い雪。ということで、金曜日の夜の新幹線で岩手入りした参加者は翌日朝、宿泊先の北上市から西和賀町へ。まずは初対面同士打ち解けるため、「ほっとゆだ北日本雪合戦大会」でチームになって戦うことに。
今回は、岩手県内でイベントの企画運営などをしているds企画の伊藤大介さんと同じく県内でナレーターとして活躍するモデルの六串しずかさんがツアーを盛り上げるために参戦。2人の掛け合いでバスの車内の空気を和らげてくれました。
西和賀町は秋田県境に面していて、岩手県内では豪雪地帯として知られています。
今季は全体的に雪の少ない岩手ですが、北上を出たバスが西和賀に入ったころから車窓の風景は真っ白。東京以西から来た参加者は非日常的な風景を前にテンションも急上昇です。
「雪合戦」と聞くと子どもたちが雪を投げ合っているイメージが浮かびますが、開会式前の会場に着くと、グローブをはめて固そうな球を投げ合って肩慣らしをする人たちの姿が。集まった人たちはジャージやスポーツのユニフォームなどで身を固め、真剣な様子でした。
ツアー参加者は「岩手のしろをめぐり隊」と「あなたと岩手に染まり隊」の2チームに分かれて参戦。開会式が始まると、主催者の西和賀町のご厚意でツアー参加者が選手宣誓と歌を披露させていただく場面も。到着早々、岩手の歓迎ムードを感じました。
参加者の距離が縮まる雪合戦
いざ決戦の時。雪合戦というと雪を固めては投げるものかと思いきや、ここでの公式ルールは20分の「雪球製造」と同じく20分の試合の時間が分かれています。
試合のころになると、朝会ったばかりの参加者同士も少しなじんできた様子。チーム内で作戦を立てて、気合が入ります。試合開始のホイッスルが鳴ると、声を掛け合いながらそれぞれのポジションへ。
各チーム、2試合を戦い、残念ながら勝利を挙げることはできませんでしたが、「来年リベンジしたい」など雪合戦にはまった参加者も。
かんじきでさらに深く雪を味わう
午後からは同じく西和賀町内でかんじきを体験。かんじきは普通の靴だと沈んでしまう雪上を歩くための道具で、木の枝やわらを編んでつくります。 今回は町雪国文化研究所の協力でかんじきをお借りして、滝が凍ってできた「氷瀑(ひょうばく)」を見にいくことに。
見渡す限り真っ白な中をかんじきで歩くと、晴天の下、雪が反射しまぶしいくらい。研究所のガイドさんの案内で林の中を30分ほどいた先では、目当ての滝が見事に凍っていて、一同感激。神秘的な景色を共有して参加者の一体感も高まりました。
西和賀の多彩なUIターン者と交流
西和賀の雪を満喫し温泉で温まったところで、夜は行政の担当者、UIターン者との交流会。交流会がこのツアーの特色のひとつで、この場で親しくなった方を訪ねて岩手を再訪する参加者も少なくありません。
朝の雪合戦からお付き合いいただいた町ふるさと振興課の深沢将平さんが町の概要や移住定住促進の取り組みについて紹介。同じく農業振興課の高橋直幸さんからは自身も参加している町内の若手有志の活動「西和賀まるごと食ってみでけろ隊」の活動を説明していただきました。くっでみでけろ隊の都市と西和賀をつなぐ活動を通じて、西和賀の方と結婚し移住した人もいるとか。
さらにUターンで民宿を経営する高橋秀樹さん、地域おこし協力隊としてふるさと納税を担当する門馬由佳さんからも、冬の寒さが厳しい西和賀ならではの暮らしの魅力についてお話していただきました。
農業と工業のまち金ケ崎をバスで周遊
翌日、西和賀を後にして、金ケ崎町へ。同町は岩手県内最大の工業団地の中に自動車関連企業、医薬品、半導体メーカーなどが立地し、トヨタ自動車の「AQUA(アクア)」の生産でも知られています。農業ではアスパラガスや米の生産が盛んな地域です。
町役場で同町商工観光課の田尻和稔さんと合流、田尻さんがバスに乗り込み、大きな雇用の場である工業団地や学校、病院などの施設、スーパーなどを案内してくれました。
人口減少が岩手でも大きな課題となる中で、金ケ崎町では新たに分譲した住宅地がすぐに完売するという説明には、参加者もびっくり。結婚を機に金ケ崎に移住したという田尻さんも町内でマイホームを購入。「都会で働いていた時と比べて、自分の時間と家族との時間を取れるのがうれしい」と田舎暮らしの魅力を話しました。
奇祭「永岡の蘇民祭」で岩手の冬を体験
金ケ崎訪問のクライマックスは冬ならではの祭りの見学。「おらが村の永岡蘇民祭」で、地元の人たちと一緒に厄男を中心とした裸男たちの水かけを体験しました。蘇民祭と呼ばれる祭りは岩手県内に複数ありますが、永岡蘇民祭は台風被害からの復興を願って地域の人たちが始めたというものでまさに地域密着の祭りです。
クライマックスの「蘇民袋争奪」は裸男たちが入り乱れて袋を奪い合うとあって、すごい迫力。このツアー初めての台湾出身の参加者は「感動した」と瞳をうるませるほど。男性参加者からは「いつか出てみたい」との声もありました。
金ケ崎の歴史と食に触れて暮らしを想像
1泊2日の旅もいよいよ終盤。昼食は金ケ崎町内の国指定の重要伝統的建造物群保存地区の中にある「侍屋敷 大松沢家」の交流会です。金ケ崎町観光協会の会長も務める高杉郁也さんが東京でシェフの修行を積んでUターンし開業したお店とあってお料理はこだわりが満載。野菜からお豆腐、豚肉までほとんどが金ケ崎産。それ以外のものも岩手県産というこだわりで、化学調味料や冷凍のものは使わないという信念を貫いています。
ここでは田尻さんに賃貸住宅の探し方や雇用情勢について質問する時間も。町に移住した場合の家賃補助のほか、町内の婚活イベントに首都圏などから参加する場合の交通費、宿泊費の補助といった制度も充実しているとの説明に、参加者も興味津々の様子でした。
そしていよいよ最後の訪問場所は人気ジェラート店・カウベル。田畑が広がる田園地帯にある隠れ家的なお店ながらも、金ケ崎産の新鮮な牛乳を使用したジェラートが大人気で、遠くから訪れるお客さんも多いとか。参加者は、窓の外の白い雪を眺めながら、白いジェラートを楽しみました。
東京都から参加した葛西成美さんは「以前、このツアーで岩手に来たのをきっかけに岩手にはまり、去年だけで10回近く来ました。本格的な雪を体験するのは初めてで、新たな魅力を感じられたので、来年には移住の計画を実行したい」と話してくれました。
2018年度の4本のツアーが終わり、参加者の中には年末に県内各地を訪問したご夫婦や一次産業の体験のために再訪する方もいて、それぞれにこれからの岩手とのかかわり方を模索している様子です。