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2019年9月26日 手塚 さや香

目指すのは「子育てのサードプレイス」。子どもたちのいる風景が日常に。Cafe&Living Uchida 川島佳輔さん

岩手県奥州市。人口12万人ほどのまちの駅裏に「Cafe&Living Uchida」がオープンしたのは2017年6月。オーナーの川島佳輔さんがこのまちで子育てをする中で感じた「こんな場所があったらいいな」という思いを形にした空間は、元額縁屋さんの店舗を手前はカフェ、奥は託児所という2つの機能を持ち合せています。

家でもなく保育園でもないもうひとつの場所を

奥州市出身の川島さんは盛岡市の会社に勤務した後、フリーランスのデザイナーに。現在はクリエイティブディレクターとして冊子や映像を手掛け、COKAGE STUDIO(コカゲスタジオ)の経営者でもあります。会社員時代に妻の珠美さんと結婚し、第1子の誕生を機に2人の地元である奥州市に拠点を移しました。

初めての子育ては喜びはもちろんのこと不安もたくさんあったと言います。
「僕らの世代だとまだ親たちは現役で働いていて子育てで頼りにできないし、地域には保育園以外に子どもを預けられるところがない。短時間でも預かってもらえるところがあったら助かるのに……と思うことがよくありました」。

川島佳輔さん

川島佳輔さん

一方で、既存の託児所はどんな人がやっているのかどんな場所なのかが見えにくく、親としては不安を感じるところもありました。託児所がもっとオープンで地域に開かれていたらいいのに、という発想が、カフェと託児所の併設という形につながりました。

保育士でもある珠美さんと子育てについて話す中で、リモートワークなど働き方が多様化する時代に合った子育て世代と子どもたちの居場所が必要だという思いが強くなっていきました。イメージしたのは「子育てのサードプレイス」。家ではなく保育園でもない、その中間に当たるようなもう一つの場所を作ろうと決めました。

まちの空気をつくる良いお店を増やしたい

冊子や映像を手掛けていた川島さんが場づくりを始めようと思った理由はもう一つありました。「OUSHU LIFE」という奥州の地域情報のウェブマガジンを通して情報発信をする中で、「自分たちが暮らして楽しい地域にしていくには情報を発信するだけではダメだ」と気づいたからだと言います。「まちの空気をつくっていくのは地域の人たちや良いお店。奥州にもっと自分たちが楽しめるお店を増やしたいと感じるようになったんです」

そして、短時間でも子どもたちを預けることのできる託児所とカフェを併設した場づくりが動き始めました。

お店を支えるスタッフも子育て世代が中心

お店を支えるスタッフも子育て世代が中心

まずは場所探し。 地域で物件を探し回ったのかと思いきや、偶然にも川島さんの実家の近くで長年続く額縁や画材を販売していた「アートショップウチダ」が閉店することになり、大家さんに相談したところ、改装して利用することに賛同し貸してくれることになりました。50年以上にわたって地域に親しまれていた「アートショップウチダ」のストーリーを受け継ぎたいと考え、カフェ兼託児の新しいスペースを「Cafe&Living Uchida」と名づけることを決めました。

地域の古材を活用しリノベーション

空間づくりもストーリー性を大事にしたい、と地域で出た古材を集めて活用。「一度はもう価値がないと思われたものにもう一度役目を与えてリノベーションしたかった。空間や素材の背景にあるものを大事にしたいからです」

空間デザインは長野県の「ReBuildingCenter Japan」、電気系統や水道など施工の一部は地元の工務店、にそれぞれ依頼しましたが、コスト削減のため、出来る限り、前の職場の同僚に手伝ってもらうなどして半年ほどの間はDIYで工事を進めました。

友人たちとの解体の様子。天井などは今もそのまま

DIYをしていると色々な人が通りかかり、「うちに古材がある」とか「あっちで今、解体している」などと教えてくれました。「これが地域なんだな、と思った」と川島さんは振り返ります。

大きな窓のむこうはカフェ。お茶を飲みながら子どもたちの様子が見える

大きな窓のむこうはカフェ。お茶を飲みながら子どもたちの様子が見える

顔の見える食材で料理を提供

ランチのカレーのほか、マフィンやスコーンも人気のUchida。食材は、奥州市を中心に顔の見える生産者から購入。近くの親せきの作ったお米も使っています。子育て世代はもちろん、女性のグループやスーツ姿の男性まで客層も広がってきています。

この日のランチはトマトとチキンのカレー

この日のランチはトマトとチキンのカレー

オープンから時間がたつとともに、少しずつ託児所を利用してくれる方も増えてきて、子どもたちがいる風景が日常になってきました。子育て世代の口コミやブログなどで情報が広がり、保育園に入る前の子どもを預けて仕事をしたり、母親同士がカフェで息抜きをする間に預けたり、とさまざまに活用されています。

子どもたちもお母さんもスタッフもみんなが笑顔になれる空間

子どもたちもお母さんもスタッフもみんなが笑顔になれる空間

「隣に託児所があることで『子連れで行っていいお店』というメッセージが伝わり、小さい子を連れたお母さんたちが気軽に来てくれるのがうれしい」と川島さんは言います。

一方で、川島さんはカフェと託児という今のスタイルにこだわることはないと言います。
「機能を変えたり付け加えることで、その時代時代の子育て世代がより豊かに暮らせるための場であり続けたい」。
それが川島さんの思い。暮らしや子育て、仕事を通じて自分自身が必要と思う空間にリノベーションを続けていきます。

 

川島さんも登壇!10/20(日)開催のイベント情報!

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取材先

Cafe&Living Uchida/川島佳輔さん

Cafe&Living Uchida

1階がカフェ・託児、2階は古道具<FUCHI>でアンティークの雑貨、布などを扱っている。3階はCOKAGE STUDIOinc.のオフィスと時々ギャラリー<ourglass>。

TEL:023-0828、0197-47-4158 住所:奥州市水沢区東大通り1-5-35 HP:https://www.facebook.com/cafelivinguchida/

手塚 さや香
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手塚さや香

手塚 さや香2014年10月より釜石リージョナルコーディネーター(通称「釜援隊」)。釜石地方森林組合に派遣され、人材育成事業「釜石大槌バークレイズ林業スクール」の事務局業務や、全国からの視察・研修の受け入れを担当。任意団体「岩手移住計画」を立ち上げ、UIターン者や地域おこし協力隊・復興支援員のネットワークづくりにも取り組む。新聞記者の経験を活かし、雑誌等への記事執筆のほか、森林組合のプレスリリース作成や取材対応、県内の事業所、NPOのメディア戦略のサポートも行う。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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