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2024年2月28日 ココロココ編集部

“雪質日本一”の名寄の冬を五感で堪能。クリエイティブキャンプレポート

2024年1月下旬、北海道名寄市をフィールドに、自ら暮らしを創っていきたい人たちに向けた「クリエイティブキャンプ」が開催されました。遊びも生活も、都会にはないものがたくさんあるこの街で、「自ら創る」という田舎の楽しい生き方を体感する3日間のプログラム。美しい森に入り自然環境を堪能したり、名寄の冬ならではの食材を楽しみながらの交流、真っ白な雪に包まれた街を散策したりと、五感をフルに刺激する体験が待っていました。

今回はその様子をレポートしながら、名寄の冬の楽しみ方、参加したメンバーの感想をご紹介します。

ドキドキの「クリエイティブキャンプ」がスタート

2024年1月26日、1メートル近くのパウダースノーに包まれた名寄駅。駅前通りを少し歩いた場所にあるコワーキングスペース「naniiro BASE&lab」が、今回のキャンプの基地です。

参加者は写真家兼映像作家や会社員、学生など様々。いい景色を撮りたい、いい物件を探したいとツアーへの参加を決め、特に街歩きを楽しみにしている方や、移住相談会への参加をきっかけに市役所の人々の人柄に惹かれて参加を決め、はるばる大阪からやって来た参加者も。初めて見る真っ白な世界に早速感動しながらのスタートとなりました。

今回のクリエイティブキャンプの主なタイムスケジュールはこちら。

◆1月26日(金)
 13:00 オリエンテーション 
 15:00 先輩クリエイターとクラフト体験
 18:00 交流会

◆1月27日(土)
 09:00 地元ベーカリー見学
 10:00 雪遊び体験
 16:00 街歩き、買い出し
 18:00 交流会

◆1月28日(日)
 9:00 それぞれのなよろ時間
   (雪体験/街歩き)
 14:00 クローズミーティング

3日間のクリエイティブキャンプには、今回の企画コーディネーターであり、自身も名寄にUターンした経験をもつ「なにいろ研究所」副所長の黒井さんや、デザイナーであり先輩移住者でもある満吉さん、そしてココロマチ編集部スタッフも一緒に参加します。

(満吉さんのインタビュー記事はこちら

初めて訪れる土地で、ドキドキワクワクのスタートとなったオリエンテーション

市役所からは地元出身の3名の職員が参加。この後のキャンプ中も、先輩移住者や地域の方が次々と参加し、交流を深めていきます。

ワクワクをカタチにする、自由なクラフト体験

オリエンテーションを終え、続いての目的地へと出発します。雪国ではあるけれど、しっかりと除雪が行き届いている印象の名寄。車での移動も快適です。

最初に伺ったのは、名寄に移住して木工をはじめ多彩な“ものづくり”に取り組む市川さんのアトリエ。夏はブルーベリーの観光農園として、多くの方が訪れる園内の倉庫を自身でリノベーションし、アトリエとして活用しています。このアトリエで市川さんと一緒にクラフト体験をさせてもらいました。

(市川さんのインタビュー記事はこちら

外はパラパラと粉雪が舞う中、薪ストーブが焚かれ、ふんわりとした暖かさに包まれたアトリエ。今回のクラフト体験は、まさにクリエイティブ力が試される自由制作。「何を作りたい?」と市川さんに聞かれ、各々「スプーンとフォーク」「バターナイフ」「プレート」「コースター」と、作りたいものの形を思い描きながら思い思いに創作がスタート。

市川さんのアトリエにあるのは、職人用の”本物”の道具たち。普段触ることのない道具を使って、自由にモノを作る体験は、大人でもワクワクさせられます。市川さんの遊び心が参加メンバーにも伝染し、それぞれワクワクがどんどんカタチになっていきます。参加メンバーは、自らの手で創るクラフトの面白さを体感していました。

「“作家さんというと硬い方”と勝手なイメージを持っていたのですが、市川さんがすごく優しく寄り添って教えてくださったので、楽しく参加できました。買ってきたナイフを使って自分で木を削って作品作りをしたこともあるのですが、プロの道具を使わせてもらえたのもすごく楽しかったです」と話す参加メンバーも。

続いては、移住者や地域の方との交流会へ参加します。ふたたび「naniiro BASE&lab」に戻る前、外で「ふわふわの新雪」をゲット。なにに使うのかは、この後のお楽しみ。

名寄ならでは、クリエイティブな食の楽しみ方

「naniiro BASE&lab」に戻ると、カウンターには地元の料理研究家さんが作った料理がずらりと並び、良い香りが漂います。「はくちょうもち」、鈴木ビビッドファームの「SPF豚肉」など地元の特産品がふんだんに使われた数々の料理に、参加者の箸も止まりません。

思い思いに交流する中で、名産の餅を焼いて食べたり、雪室の中でチップを燃やして燻した”冷燻(れいくん)”も振る舞われました。冷燻を作ってくれたのは、先ほどクラフト体験をさせてくれた市川さん。木工だけでなく、おつまみだってクリエイトしてしまいます。

そして、先ほど手に入れた「ふわふわの新雪」がここで登場。地元メンバーがカセットコンロと雪平鍋でカナダの冬の定番のスイーツ「maple taffy(メープル タフィー)」を作り始めました。「maple taffy」はきれいな雪のある場所でしか作れないものとか。

名寄はカナダ・オンタリオ州リンゼイ(現カワーサレイクス市)と姉妹都市でもあることから、カナダの文化も交じり合い、”雪質日本一”の名寄の雪だからこその、冬限定極上スイーツができあがりました。

「冷燻」も「maple taffy」も、雪国だからこそ楽しめる体験と料理。周りの環境を活かして楽しみを見つけられるのも、この街のならではの魅力なのかもしれません。

雪山はレジャーランド。子どものように、シンプルに楽しむ

2日目の朝。コテージから見える森にはうっすらと雪がまとわり美しい風景を見せていました。

まずは朝ごはんを買いに「ベーカリーいしだ」さんに向かいます。こちらは朝早くから焼き立てのパンが並ぶ、まちのパン屋さん。店主の石田さんはもともと、東京都内の企業でパンの商品開発に携わっていましたが、手作りの地元密着型のパン屋を開業したいと、故郷名寄に戻り奮闘しています。

店内には並ぶ美味しそうなパンは、北海道産の小麦粉や地元の野菜を多く使っているそう。名寄への想い、大量生産と少量生産の違いや苦労、地元のニーズに合わせて営業スタイルを変えていることなど、田舎で起業するポイントについて赤裸々に教えてくれる石田さんのお話しに、参加メンバーも興味深々。

朝食後は、今回のメインイベントとして参加メンバーも楽しみにしていた「雪遊び」。コテージから車で10分ほどの場所にある「ピヤシリスキー場」。その裏山が2日目のキャンプ基地です。

雪遊びの案内人は、徳島県から移住しアウトドアガイドとして活動する辻さん。

雪山を楽しむための装備も万全に

スノーシューと呼ばれる”洋風かんじき”を履き、ふかふかな新雪の上を歩いて森に入っていきます。普段はなかなか入れない森の奥に進んでいく感覚は、まるで冒険そのもの。森の中では、動物の足跡や木の実を食べた跡を発見し、命ある自然の中にいることも改めて実感できます。

途中、森の中に張られたテントの中でひと休み。薪ストーブで焼いたマシュマロと熱々の紅茶でほっとする、なんとも贅沢な時間を過ごします。

そこから更に斜面を進み、ここからは本気の雪遊び。そりや雪板と呼ばれる遊び道具を使って、子どもに戻ったかのように、思いきり楽しみます。シンプルな遊び道具ですが、あたり一帯を真っ白に覆うふかふかの雪は、山道をレジャーランドに変え、大人の気持ちも子どもの頃に戻してしまうよう。

シンプルな環境と道具で、それぞれの運動能力やチャレンジしたい気持ちを汲み取りながら遊びをクリエイトしてくれる辻さん。参加メンバーは、それぞれの雪遊びを楽しんでいました。

実はインストラクターの辻さんも、徳島県生まれながら、雪と寒さと自然に憧れて北海道への移住を果たしたお一人。「地元の人は雪を嫌っているけれど、ここの雪は日本一。外から見ないと、名寄の魅力はなかなか分かりづらいのかも」と話していたのが印象的でした。

昼食後は、それぞれの希望を元に班を分けて過ごすことに。温泉に入りゆっくりしたい人、まだまだ遊び足りない人、それぞれの時間を過ごしました。

雪板の魅力にすっかりハマってしまった参加メンバーは、「道立サンピラーパーク」の丘で引き続き遊ぶことに。「もし名寄に移住したら、休みの日に練習して上達したい!」と、意気込む参加メンバーも。雪を楽しむ文化が根付く名寄で、おもいきり雪を楽しむ時間になりました。

名寄の魅力を、ぎゅっと凝縮した交流会

思い思いの時間を過ごした後は、夕食の食材調達に街中へと買い出しに向かいます。

夕食は「なよろ星空雪見法蓮草」のしゃぶしゃぶがメイン。羊肉の専門店や精肉店、ショッピングセンター「西條」で野菜など食材を購入。西條は、地元に住む方に親しまれる地域密着のお店でありながら、「成城石井」や「コストコ」コーナーがあったりと、都会からの移住者にも嬉しい存在になりそうです。

コテージに戻ったら参加メンバーと地域のみなさんと一緒に準備をスタート。「なよろ星空雪見法蓮草」はこの時期にしか食べられない、寒締めほうれん草。雪の下で甘みをぎゅっと凝縮させたほうれんそうは、しゃぶしゃぶにすると最高に美味しいのだとか。

この日の夜も、地元で農業をしている移住者など、地域の方が参加してくれました。外で炭を起こし、ラムを炭火で焼いて食べたり、ほうれん草のしゃぶしゃぶを食べながら、思い思いに語らう時間に。

2日間の体験を通して、名寄での暮らしや楽しみ方についてイメージの解像度が上がった参加メンバーたち。もっと知りたい事、詳しく聞きたいことが尽きません。先輩移住者との交流も、ぎゅっと凝縮された濃厚な時間となりました。

食事も一段落したころ、コテージの向かいにある、なよろ市立天文台「きたすばる」にいってみることに。「きたすばる」では、国内2番目の大型望遠鏡で星空観望ができると聞き、参加メンバーは、この日何度目かわからないドキドキとワクワクに。

あいにくの曇り空のため、残念ながら星空観望はできませんでしたが、「次回にとっておきたい楽しみがまた1つ増えた」と、十二分に名寄の体験を詰め込んだクリエイティブキャンプは、そんな穏やかな気持ちにもさせてくれます。

街もアウトドアも、まだまだ足りない“なよろ時間”

最後の日の朝も相変わらずの美しい雪の森。カラーの世界のはずなのに、モノクロの写真を眺めているような、不思議な気持ちに。

最終日はそれぞれの”なよろ時間”を過ごしました。参加メンバーが今回出会った人たちから教えてもらったコト、場所を訪れる、そんな思い思いの時間になります。

すっかり雪板にハマったメンバーは、「風連スキー場」でスノーボードに挑戦します。比較的穏やかな山並みのため、初心者の練習にもぴったり。2時間程の練習でしたが、雪板の成果もあってか、ゆるやかに滑って降りてこれるまでに。

一方、名寄のレトロ風景に興味を持ったメンバーは、街なかの商店街を縦横無尽に歩きまわり、気になる建物があれば、あっちへそっちへ。グッとくる雰囲気の看板やベンチがあればモデルを立てて撮影会がスタート。

名寄市内には”昭和”がそのまま冷凍保存されたような建物がよく残っており、屋根に積もった雪がその魅力を際立てます。「飲食店が多いんですね。スナックとかが特に面白い」と参加メンバーがつぶやくと、「僕の行きつけ、入口まで行ってみます?」と満吉さんがエスコート。普通ならちょっと尻込みするような雑居ビルを、店の前まで案内してくれました。

「名寄ってレトロ好きの心を掴む街ですね。時間が止まったようで、さびれている部分もあるんだけれど、死んではいない。街にとって、人って血流のようなものだと思うんですけれど、名寄の街は人がちゃんと出入りしていて、生きているんですね。そこがすごく貴重だと思います」と、ディープな街案内の時間を楽しみました。

それぞれのクリエイティブを発揮できる、名寄というフィールド

午後2時、それぞれの時間を過ごしたメンバーは、再びキャンプ基地である「naniiro BASE&Lab」に集合。最後にそれぞれが撮った写真を共有し合い、思い出を振り返りました。同じ時間を過ごし同じ体験をしても、感じていたことはそれぞれ違っていたようで、そこにも小さな驚きがありました。

普段からクリエイティブな活動をしている写真家のメンバーは、「楽しみの作り方」が上手な人で、今回のツアーを自分流に楽しんでくれた様子でした。「また違う時期に来て、自由な時間を過ごしてみたい」と話し、将来的にはレトロな風景を活用した映像作品を作ったり、フェスのような音楽イベントを名寄でできたら面白そうとも話していました。

「パウダースノーがとても良かったので、今シーズン中にもう一回来たいです。あと、春とか夏とかも来たいですね。星を見たり、山を登ってみたり、木に登ったりっていうのも絶対楽しいなと思います」と話す参加メンバーも。

「私は普通の事務員で、全然クリエイティブじゃないんです。人見知りだし・・」と最初は遠慮がちだった参加メンバーも、雪板体験では失敗しても何度も立ち上がり、ついには地元民を超えるほど滑れるようになっていました。

テーマパークのように「与えられた環境」から生まれる楽しさと、冬の名寄のように「一見何もないところに自分が見つけた環境」から生まれる楽しさには、違う意味があるのでしょう。

雪と空が広がる名寄の冬の山では、じっと立っているだけは何も起きません。動くことで景色も動き、雪が降りかかることで冷たい、楽しいという感動が生まれます。そういった意味で、冬の名寄はクリエイトの余地にあふれた、白いキャンバスのような場所だったのではないでしょうか。

今回は「クリエイティブキャンプ」と銘打ってタイプの違う参加メンバーが名寄に集い、3日間をともに過ごしましたが、それぞれの感じ方や楽しみ方で、名寄の冬を満喫してくれたようでした。

「クリエイター」という言葉は、限られた職種の人だけの称号ではありません。シンプルなフィールドで、自分ならではの楽しみを見つけられるあなたはクリエイターそのもので、きっと名寄の主役になれるはずです。

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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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