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2023年11月28日 ココロココ編集部

仕事も遊びも、ドキドキとワクワクを。名寄市の圧巻の自然環境で、自ら楽しみ見つける

名寄の市街地を抜けて天塩川を渡った先にある、日本最北端のブルーベリー観光農園「サンベリーむらおか」。その敷地内にある大きな倉庫が、クリエイター・市川陸さんのアトリエです。市川さんはこれまで小樽で活動していましたが、2022年の秋から名寄に拠点を移しました。

現在はこの大きな倉庫を拠点に、木製家具や什器の制作、内装、造園、伐採、アートスクール講師など、「木」と「アート」に関する多彩な活動を生業としています。 実は、名寄の「顔」である名寄観光協会のカウンターも、市川さんの制作物のひとつ。名寄の森で見られる8種類の広葉樹の板を魚のうろこ模様に貼り、名寄の豊かな自然を表現しています。

カウンターに使用されている、8種類の広葉樹の板

そんな市川さんの一番の趣味は「釣り」。釣りが日常にある暮らしを叶えたくて名寄に引っ越したと言っても過言ではなく、仕事の合間を縫って、さまざまなフィールドで釣りを楽しんでいます。今回はそんな“趣味人”である市川さんと名寄との関わり方、四季のおすすめのアクティビティについて、お話を伺いました。

小さなころから、森との関わりにあこがれて

少年時代を札幌市で過ごした市川さんは、3人兄弟の2番目。兄に連れられて毎日のように山や川に行き「遊び」はイコール、自然と関わることだったといいます。20代の頃はプロカメラマンとして活躍していましたが、その頃のある出会いが、「森」を生業にしようと決意させました。

「カメラマンをしていた時に、カメルーンという国の『ピグミー』という先住民が住んでいる森を見たいなと思い、丸木舟に何時間も乗って、会いに行ったことがあったんですよ。彼らは森にすべてを与えられて生きていて、きわめてシンプルな暮らしなんですが、そこには、人間本来の生活があって。それにすごく豊かだなという印象と憧れを抱き、自分も木と関わって生きていこうと思ったんですね。」

帰国した市川さんはカメラをチェーンソーに持ち替え、木彫作家のもとで勉強を始めたといいます。その後は林業がさかんな占冠(しむかっぷ)に暮らし、造林や伐採など林業の技術を学びました。

最初の作品である、木の質感を感じられるオブジェ

「でもなかなか林業だけで生活するというのは大変で、結局占冠から小樽に移って、高所作業車の資格をとって、電気工事の仕事をしていました。でもそこからまたちょっと戻って、造園業の会社に入って、街路樹の剪定や伐採をしていましたね。」

一旦は森の仕事から離れながらも、心のどこかで惹かれ、木に関わる仕事に戻っていった市川さん。サラリーマンの日々は収入こそ安定しましたが、趣味人である市川さんにとっては、刺激と自由がちょっと不足していたそうです。仕事は短時間で集中してやり、趣味である遊びも精一杯やる。そんな暮らしを実現するために、小樽でクリエイター兼フリーの“木こり”として独立しました。

「最初はお客さんも何もいない状態で始めて、糸ノコ盤1台で英文字のロゴを切り出してエイジング塗装を施して、インターネット上の作家サイトで販売していたんですね。そこからだんだん幅が広がって、家具のオーダーなんかも入るようになって、店舗什器だとか内装の仕事もやるようになって。商品が大型化したので、小樽のアトリエも手狭になってきちゃったんですね。」

当時作成していた、英文字のロゴ

「そんな時に、この倉庫に出会っちゃったんですよ。ここは私のパートナーの実家なのですが、遊びに来た時にこの大きな倉庫を見て『これは楽しそうだな』と思いまして。天塩川には小樽時代から遊びに通っていたのですが、ここを拠点にしたら、今まで自分が知らなかった遊びのフィールドが広がると思って。そのワクワクドキドキには逆らえず、名寄に来ちゃいましたね。」

毎日がワクワク、ドキドキ。名寄での釣りが日常にある暮らし

こうして名寄に拠点を移した市川さん。移住してから、仕事はもちろん、趣味と遊びにも忙しすぎて嬉しい悲鳴を挙げているとか。

「ひとりでやっているので、そもそも休日ってあって無いようなものなのですが、仕事もあるし、ブルーベリー園もあるし、趣味もいろいろあるから、なんだかんだいつも動いていますね。朝から釣りに行って、それから仕事をするなんてのも普通。いろいろなものが日常に混じっている感じです。そんなことを出来るのも、名寄だからでしょうね。」

「札幌でも小樽でも、最低でも1時間以上かけないと、自分がドキドキするような川って無かったんですよ。でも今なら、10分もかからないところに天塩川がありますから。もう、ウェダー(胴長)が乾くひまもないですね。」

車でふらっと、気軽にアウトドアを楽しめる自然環境が広がっている

遊びの話題をする市川さんの表情はとても豊かです。市川さんの話によく出てくる言葉は「ドキドキ」と「ワクワク」。天塩川には、札幌や小樽の川には無かったドキドキがあるといいます。

「特に天塩川はスケールが大きいんですよ。滔々(とうとう)と流れて、毎回何が出るか、何が起こるかわからないですから。支流とか、ほかにも釣りポイントもたくさんあって、季節や天候で選べるから、私はとてもドキドキワクワクして、たまらないですね。」

広大な自然の移り変わりが、毎回新たな出会いをもたらしてくれる

春は川の氷が融けるとすぐ川に入り、増水期にはちょっと休んで、夏から秋はどっぷり、晩秋も雪が降るギリギリまで川に通い続けているという市川さん。「晩秋になると寒くて寒くて。それでも、行っちゃうんですよね」と幸せそうな笑顔を見せます。

冬の相棒はスノーモービル。パウダースノーの森をどこまでも

名寄の長くて厳しい冬は、釣り人である市川さんにとって、本来は少し落ち着ける時期。しかし移住1年目の冬から、市川さんの冬は大忙しだったとか。

「冬はスノーモービルに乗ることが多いのですが、あたり一帯が全部雪原になりますから、農家さんたちにも断りを入れて、平らなところで練習をして、仲間たちとよく山に入っています。一人では絶対行かないですね、危ないので。僕らのチームはちょっと“変態”なので、何かあったら帰ってこれないような場所まで行くんですよ。」

空の青と、山の白、この2つだけで作り出される景色は、感動的な美しさ

市川さんがよく一緒に出かけているスノーモービル仲間は、市川さん曰く「札幌の変態チーム」というツワモノ揃い。無雪期にはどうやっても行けない、冬でも普通の人がまず行かないようなエリアを冒険し、デコボコがモービルをひっくり返しては皆で掘り出し、パウダースノーの森を満喫しているのだとか。

「名寄の雪は柔らかいから転んでも平気だし、チャレンジもいっぱいできます。免許は必要ないですけれど、運転のスキルと強いメンタルは必要。ビビったら負けなんですね。自分は行けると信じて、行くしかない。そこが最高に面白い。」

釣りと同じかそれ以上に楽しそうに、スノーモービルの魅力を語る市川さん。未開の地に踏み込める名寄の冬は、カメルーンの奥地に通じるドキドキとワクワクに満ちているのでしょう。

雪遊び初心者には「雪板」と「イグルー」

本気の趣味人には「スノーモービルがいちおし」という市川さんですが、もう少しライトな趣味やアクティビティが無いか尋ねてみると、倉庫の奥からちょっと変わったものを持ってきてくれました。

「これは『雪板』と言うんですけれど、スノーボードの原型みたいなものですね。冬靴でひょいと乗って、ひもが付いているのでそれを持って、ゆるやかな斜面でも楽しく滑れるものなので、初心者でも簡単に始められると思います。そり遊びも立ち乗りすると面白いじゃないですか。その延長の感じで、立ち乗りをして、ターンできる板という感じです。これは自分で作ったものですけれど、北海道ならお店にも売っていて、子どもと一緒でも遊びやすいと思うので、まずはおすすめですね。」

冬のアクティビティの初心者でも気軽に楽しめる『雪板』

「『イグルー』という大きなかまくらのようなものを作るのもおすすめです。その中でコーヒーを飲んだり、おやつを食べたりするだけでも、いつもと違った上質な時間に感じられます。チェーンソーで雪をブロック状に切り出して作るのですが、意外とあったかいんですよ。」

真冬、内陸の極寒地である名寄では、雪は昼間も一切融けず、いつまでもパウダースノーであり続けます。遊びの材料という観点からすれば最高級品ともいえる雪。「せっかくならそのメリットを堪能しないともったいない」というのが市川さんの考えです。デメリットをメリットに。市川さんのように考え方と行動を切り替えてみれば、名寄の冬はぐんと楽しい季節に思えてきます。

春の名寄は、森の散策が楽しい

市川さんにとって、名寄の自然は良き遊び相手。春が近づくとパウダースノーは徐々に失われ、表面がツルッと固まった春特有の雪質になるということですが、この時期にのおすすめは「森の散策」なのだとか。

「春が近づくとだんだん、雪が締まってくるんですね。そうすると、雪の上がすごく歩きやすくなるんです。森の中って夏でも秋でも、草がいっぱいで歩きづらいじゃないですか。それが、春を迎える時期だけは自由に歩けるんですよ。これは楽しいですよ。いつもは歩きづらくて行けないような場所に、スノーシューも一切使わずに行けちゃいますからね。」

「それから、雪が融けてからは山菜ですね。行者ニンニクから始まって、フキノトウだったり、さまざまな山菜が楽しめます。夏にはカヌーもいいし、秋にはキノコもいろいろ採れますから。もう、1年中遊べることが多すぎて、飽きることはないですよね。」

どんな季節も前向きに捉えて、森へ川へと楽しみを捜しに出かけていく市川さん。名寄市の大自然は市川さんにとって、さまざまなものを与えてくれ、体験させてくれる、最高の友達なのでしょう。

名寄に来たら、自然の中に楽しみを見つけてほしい

とはいえ、名寄の厳しい自然条件は、誰もが肯定的に受け入れられるものでもありません。どんな人が名寄に向いていると思うか、市川さんに聞いてみました。

「名寄は、街的な要素はコンパクトにまとまっていて暮らしやすいですが、やはり断然、自然環境の魅力が大きいですよね。だから、自然の中での楽しみ方を見つけられる人なら、ここを十二分に活用できるんじゃないかな。あと、本州だと『誰も来たことがないだろう秘密の場所』ってなかなか無いと思うのですが、名寄ならそういうスポットをあちこちに見つけられるんですね。そういう“発見の喜び”を持てる人も、名寄を楽しめると思います。」

キンと冷えた川に入るだけで、身も心もどこかスッキリする

「もちろん、釣り好きの人には絶対におすすめですよ。天塩川みたいな太い川もあれば渓流もあって、1時間ちょっとでオホーツク海にも日本海側も出られるから、両方の海で海釣りができて、朱鞠内湖という、北欧をイメージさせるきれいな湖もすぐ近くにあって、そこにはメーターオーバーのイトウがいたり。すごくドキドキするし、ロマンがあって、釣り好きには夢のようなところだと思います。」

名寄には向いているのは、良き変態!?

最後に、これから名寄に引っ越してきたいというクリエイター達に向けて、先輩である市川さんからのメッセージをいただきました。

自分の好きなことに熱中する、市川さんの笑顔はまぶしいばかりだ

「名寄はこの恵まれた環境を活かして、自分で楽しさを生み出せる人にはすごく向いています。人と比べず、自分の好きな事や興味がある事に熱中できるという意味では、そうした人はすごく魅力的だと思うし、一緒にいて楽しい。そういう意味では、0から1をつくる事であったり、感覚的なことも求められる、いわゆるクリエイター向きの土地かもしれないですね。」

「スノーモービルの話で“変態チーム”と言いましたが、私にとって“変態”は最高の褒め言葉なんです。名寄を楽しめる人のキーワードの1つでもあると思います。そもそも、そうした人達が今の世の中を作ってきたと思っていますから、名寄に来るなら『変態求む!』って感じです。(笑)。ぜひ一緒に自分の好きを求めて、名寄での暮らしをたのしみましょう!」

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取材先

市川陸さん

札幌育ちのクリエイター・市川陸さん。仕事のかたわら、趣味の「釣り」にも力を注ぐ。名寄に引っ越してきたのは、釣り三昧のためと言っても過言ではなく、仕事の合間を縫って、さまざまなフィールドで釣りを楽しんでいる。

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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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