▲会場となったソフトピアジャパン
フェス開催場所となった、岐阜県大垣市の「ソフトピアジャパン」。170社以上のIT関連企業が集結し、ITビジネスネットワークの拠点としても注目されている場所でもあります。また、同施設内には、メディア文化における要員を輩出する、「情報科学芸術大学院大学(IAMAS)」もあります。
フェス実行委員会メンバーは、IT人材の岐阜移住促進プロジェクト「GIFU-HUB」を担う株式会社パソナテック、大垣市のアプリケーション・デザイン・カンパニー、株式会社GOCCO、株式会社PLAY TODAY、兵庫ベンダ工業株式会社の4社がメインとなり構成されました。ITの集積地である岐阜県大垣市からのイベントを通じで、未来の働き方や生き方、ものづくりの様々な形を提案したいという思いでイベントが開催されたのだと言います。
フェスの構成は、ビジネスシンポジウム、テクノロジーフェア、ミュージックフェアの3軸。ナイトタイムには、シンポジウムで登壇したクリエイターやアーティストなども参加するアフターパーティーも開催されました。午前10時のから始まったイベントが終わったのは翌午前6時!全20時間ぶっ続けのアツいイベントとなりました。
まずは、午前10時半から開催されたビジネスシンポジウム「テクノロジーで、地方がつながる/映像がかわる/働き方がかわる/アニメがかわる」から。
▲(c)POST
リレー形式でトークセッションを繰り広げるのは以下の5名。
・バイザー株式会社 代表取締役CEO米田昌弘氏
・株式会社ディフューズ・エンタテイメント代表取締役 今村理人氏
・Kaizen Platform.Inc. カントリーマネージャー 小川淳氏
・攻殻機動隊REALIZE PROJECT 統括顧問 武藤博昭氏
・Job-Hub(株式会社パソナテック 執行役員新規事業推進担当) 粟生(あおう)万琴氏(モデレーター)
▲ 登壇する今村氏
テクノロジーで変える未来のあり方をリレー形式で語られていました。今村氏は、CGキャラクターのホログラムライブコンサートの映像を例に、「今は亡きアーティストを復活させたり、はたまた歴史上の人物を再現させたり…CGホログラムというコンテンツは、人々がライブ会場にわざわざ足を運ぶ試金石であります。地方のイベントでも今後この技術を使っていくことが、街づくりのキーになるのではないだろうか。」と述べられました。
それに続き小川氏は、自身も企画開発を手掛けるグロースハックツール+グローバルクラウドソーシングのプラットフォームである「planBCD」を例に、「クラウドソーシングでは、地方に住みながらグロースハッカーとして都会の大手企業とやりとりしている方が多くいらっしゃいます。皆さんにも、場所にとらわれない働き方を提案したい。」と述べられました。
続いては、午後1時から始まったシンポジウム「テクノロジー×クリエーター、テクノロジー×未来」。
・PARTY クリエイティブディレクター中村洋基氏
・Maltine Records主催tomad氏
・株式会社しくみデザイン 代表取締役 中村俊介氏
・日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエバンジェリズム統括本部エバンジェリスト 砂金(いさご)信一郎氏
・株式会社HEART CATCH 代表 西村真里子氏(モデレーター)
中村(俊)氏が行った、新世代の楽器アプリケーション「KAGURA for PerC」のデモンストレーションでは、何にも触れずに体を動かすだけで演奏できる仕組みの楽しさに、会場が一気に湧く場面も。「KAGURA for PerC」 2013年、インテル社主催のコンテストにて世界一となるなど、アートからビジネスプランまで受賞歴も多く幅広い中村(俊)氏のプロジェクトですが、彼は会社を福岡市に置き、地方からUX(ユーザーエクスペリエンス)分野の先駆者として新しいビジネス領域を切り開いています。
▲ 左から、「KAGURA for PerC」を実演する中村(俊)氏と、それを試す中村(洋)氏
ディスカッション終了後、中村(俊)氏に、地方発テクノロジービジネスの可能性について伺ったところ、「東京との距離を不利に感じる方も多いと思いますが、東京には同じような会社はたくさんあるので、自社の差別化が図れなかったと思う。福岡でこういうことをやっているのは自分のところしかないので、目立てたのが良かった。東京独自のペースに巻き込まれず、モノ作りに集中できることも地方の強みなんじゃないですかね。」と、お話いただきました。
午後3時になると、ソフトピアジャパンセンタービル3Fソフトピアホールにて、ミュージックフェスティバルも始まりました。篠崎愛さん、SILVAさん、P.O.P、中塚武さん、Q’ulle、DE DE MOUSEさん+山口崇司さんの順にステージが開催され、会場は一気に盛り上がりを見せました。
▲P.O.Pのステージ。(c)POST
LIVE会場では、オリジナルのアプリをダウンロードすると、アーティストの演奏や会場システムから発せされる音により、映像が変化する演出もされる新たな試みも試されました。テクノロジーフェアならではの技術を生かした、た “参加できる”ライブシステムは、観客を巻き込んで会場を熱くさせました。
▲ POSTライブに合わせて開発されたオリジナルアプリ(c)POST
企業の展示ブースを設けたテクノロジーフェアも同時開催されていました。(株)デンソー、(株)ACCESS、(株)サンメッセといった企業が30社。POSTの運営を手掛けた、(株)GOCCOのブースも発見。特許取得技術である、印刷物をスマートフォンやタブレットのスクリーンに当てるだけで、アプリやWEBに組み込んだ任意のコンテンツを呼び出すことができるシステムが展示されていました。
▲(株)GOCCOの展示ブース
会場である情報工房とセンタービルをつなぐ通路脇に、フード屋台がずらり。岐阜の食材を利用したおばんざい、もつ煮、地元三輪酒造の日本酒など、たくさんのフードやドリンクが用意されていました。朝から晩まで長時間に渡るフェスでしたが、来場者は食事で息抜きをし、ゆったりと過ごされていました。
▲大垣市発、楽天のベーグル月間ランキング1位をとったエルクアトロ ギャッツのベーグルサンドも販売
再びシンポジウムの会場へ。午後3時20分より行われた「テクノロジー×未来ものづくり」のセッションです。
・IAMAS 産業文化センター教授 小林茂氏
・ビーサイズ株式会社 代表 八木啓太氏
・株式会社UPQ 代表取締役 中澤優子氏
の3名が登壇。日本の伝統木材“杉”という持続可能な資源に注目してiPhone充電器を作った八木氏、2ヶ月で17種類24製品を取りそろえる家電ブランド「UPQ」を立ち上げた中澤氏。中澤氏は、「スペック競争ではなく、デザインが良い、価格が安いなど自分がいいと思う人に自慢できるポイントがある商品を世の中に送り出したい」と述べられていました。その言葉に集約されているように、例え小さなメーカーであっても、“新たな価値を提案していくことによってイノベーションが起こる可能性がある”ということを感じさせてくれるセッションでした。
▲左から登壇するIAMAS小林茂氏、ビーサイズ株式会社 八木啓太氏、株式会社UPQ中澤氏(c)POST
続いてのシンポジウムテーマは「テクノロジー×エンタテイメント」。Perfumeの世界デビューのプロジェクトに関わった、(株)ライゾマティクスでディレクターを務める真鍋大度氏の登壇です。
▲(株)ライゾマティクスでディレクターを務める真鍋大度氏(c)POST
IAMAS出身者でもある真鍋氏は、3Dスキャナーを利用してリアルな映像とバーチャルな映像をシームレスに融合してライブシステムを開発する舞台裏のお話などを聞かせてくださいました。また、(株)ライゾマティックスは、ドローンがメジャーになる前から映像技術の手段の1つとして活用しており、ダンサーとドローンを融合した演出にも挑戦しています。しかし、コンテンツになる前は、失敗も多いということで、複数のドローンがネットワークの不調により一斉に墜落する様子など、試行錯誤する映像も紹介くださいました。出来上がりだけを見ると、とても華やなアーティストのライブ演出。その一方で、こういったものは、一朝一夕で出来上がるものではないということがよく分かりました。
夜の8時まで様々なシンポジウムが続いた後、夜8時45分からは、センタービルの地下にある広大な駐車場に場所を移し、アフターパーティーです。
ビジネスシンポジウムで講演した真鍋氏が率いるライゾマティクスリサーチによるパフォーマンスも行われました。なんとパーティーは翌朝6時まで!クリエーター、エンジニアが集まる街、大垣としての魅力を存分に発揮するイベントとなりました。
▲ 盛り上がるアフターパーティー(c)POST
最後に、POST主催者の一人である、(株)GOCCOの森さんに、このような試みを行った理由について伺いました。
「大垣は情報科学技術者を送り出すIAMASがあり、さらにはソフトピアジャパンもあり、ソリューションが揃った街です。ですが、そういったところから作られる技術や人々を都会に繋げるのは大変だなと常々感じていました。テレビ、ラジオなどのメディアでアピールすることも重要ですが、今回のような総合的なイベントで、実際にテクノロジーと触れ合ってもらうと、より魅力を正確に伝えることができるのではないかと思ったんです。例のないイベントだったので理解を得るのは大変でしたが、海外ではこういったスタイルのフェスって意外と多いんです。都会で同じイベントをやるとなると場所などの問題もあって難しいかもしれませんが、地方だからこそ開催できた部分も大きいです。これをきっかけに、大垣にいろんなプレーヤーが入って来てくれれば、IT技術集積地域としての魅力がもっと高まっていくんじゃないかと思います。」 とお話いただきました。
▲実行委員会のメンバー
地方創生が各地で謳われ、様々な取り組みがなされる昨今。今回のPOSTというイベントは、ただ「地方に来てください」と叫ぶだけでなく、その地方に息づくコンテンツを掘り起こし、地元の産業と都会の産業が交差する機会を演出する仕組み作りが重要であるということを示唆するものであったように思います。