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2015年11月16日 安藤“アン”誠起

『まるで留学キャンプ』体験リポート

自分の住んでいる地域には、まだ気づいてない魅力的なスポットが数多く埋もれている。そんな“当たり前のニッポン(地元の豊かさや強さ)”を、外国人の視点を交えて再確認し、さらに彼らと英語を使って一緒に楽しもうというのが、今回紹介する『まるで留学キャンプ』。イベントを主催するのは長野県塩尻市で活動する地元愛あふれる市民団体ゴー・グローカルだ。

そうはいっても、この『まるで留学キャンプ』、2泊3日も外国人と一緒に過ごすって大丈夫? 英語力も不安なので、ちょっぴりドキドキ、それでもワクワク。さてさて、何が起こるのやら…。

座禅体験で身も心も清々しく…

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Day2
この日は早朝6時から、近くにある曹洞宗の寺院・興龍寺にて座禅会。少し眠い目をこすりながら、静寂に包まれた境内の中へ。

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足の組み方や手の位置など、洞派(どうは)住職から一通り説明をうけて、各々座禅を組んでみる。座禅は宗派やその寺の住職の考え方によっても、それぞれスタイルが異なるよう、ここ興龍寺は、背を向けて、つまり壁と面向かって座るとのこと。足をうまく組めない人は、それに近いカタチで座禅を組んで、目を閉じて瞑想をする。

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心を落ち着かせて、座禅を組んでいると、徐々にカラダがリラックスしてきて、頭の中がスッキリとしてくる。雑念が払われてきたのだろうか…。お寺の中の荘厳な雰囲気も手伝って、さながらそこに小宇宙が広がるような感じだ。実に独特な空間。

座禅の後はお焼香をして、住職と共に朝ごはんをいただく。机の上には和テイストの布に包まれた“何か”が人数分置いてある。

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布の結びを解くと、中には木製の箸やスプーン、ヘラ、手ぬぐい、椀が入っていた。さらに椀を開けると、別の椀が幾重にも収納されていた。マトリョーシカのように!!
この椀は禅宗の僧侶が使う“応量器”と呼ばれるもの。食べる、洗う、収納するという行為を風呂敷の範囲内行うことがきる、も多くの僧侶が毎日使っている食器とのこと!

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椀にそれぞれ、おかゆ、たくわん&梅干し、胡麻をよそっていただき、食べ物をゆっくりと口に入れる。とてもシンプルな味わい。先ほどの座禅の影響もあってか、温かさと栄養がカラダに染み渡るような感覚。スプーンですくい切れないお粥は、木のヘラでそれをすくい、残さずにきれいに食べる。

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住職を囲んで、お寺Q&A

食事後、住職に寺の事を色々と教えていただいた。
「寺の歴史はどれ位ですか?」「なぜ、頭を剃っているんですか?」など、日本語と英語(の場合は土屋さんが通訳)で質問が飛び交い、それを住職が答えるという、何とも摩訶不思議な場に。

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「外にお酒を飲みに行く事はあるんですか?」など、日本人ではちょっと聞きにくい質問を外国人はするので、参加者が思わずニンマリとしてしまう場面も。住職のアンサートークは、ときには歴史的な背景をじっくりと語り、ときには軽妙なジョークを交えたりと、本当にウィットに富んでいた。

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ちなみにこの座禅会。外国人はもちろん、日本人でもはじめて体験したという方が多く、最も印象に残ったプログラムに、これをあげた参加者が少なくなかった。

 

日本情緒あふれる空間へ小旅行

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さて、ここから舞台は、日本情緒あふれる中奈良井宿方面へと舞台を移す。
移動には市内を運行している地域振興バス“すてっぷくん”を利用。利用料金は100円なり。あえて地元の公共機関を利用するのは、その土地の人々達にリアルに触れられる貴重な機会になりえるからだ。

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バスに乗って30分ほどで「木曽くらしの工芸館」に到着。館内1階には漆器の箸や椀、塩尻名産のワインなどが展示&販売されており、参加者はここで、あれこれと物色しながら、気に入った土産品を購入していた

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昼食は館内で信州蕎麦定食! 蕎麦もさることながら、地野菜の天ぷらや煮物、おやき…、そして信州味噌を使用した味噌汁がこれまたウマイ!
この頃になると、参加者それぞれのキャラクターがわかってきて、徐々に外国人との壁がなくなり、ある種の一体感が生まれてきているのがよく伝わってくる。ひとつのチームというか、もはやファミリーですね。

 

伝統工芸でオリジナルアートを!

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昼食後のプログラムは、施設別館で地域の伝統的な塗り技法のひとつ「木曽堆朱(ついしゅ)」の研ぎ出し体験。これはコースターに幾層にも塗り重ねられた色漆を、やすりを使って研ぎ出すことで、独特の模様が現れてくるというもの。

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研ぎ出しの加減によって模様の出方が異なるので、どのような柄を出していくのかは参加者のイメージ次第。まさに自分だけのオリジナルアートだ。

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スリスリ&シャカシャカ。それぞれ趣向を凝らして懸命にコースターを磨く。「It’s splendid!!(こりゃ、スゴイ!)」「A little bit strange!(ちょっと変わってるね~)」なんて言いながら、研ぎ出した模様の仕上がりを見比べたりした。後日、乾燥させたコースターが郵送されるとのこと。とても楽しみ!!

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空き時間には、すかさず英語ゲーム

さて、工芸体験が終わったら…ここで緊急プログラム!
タイトルは「この和製英語は何?」
これは実際に英語圏では使わない、いわゆる和製英語を、日本人チームが英語&ジェスチャーで説明して、その答えを外国人に当ててもらうというゲーム。

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お題となった和製英語は、ガッツポーズ、ニューハーフ、ドクターストップ、ハイタッチ、アイスキャンデー、チャイルドカー、スコップ…などなど。
日本人チームは時には2人組でちょっとした小芝居を打って、カラダをくねらせたり、ジャンプしたり、うずくまったり、見ていて思わず吹き出しそうになるぐらいに頑張っておりました。

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和製英語を説明するのって面白い! あ、これも和製英語だったのかと気づく言葉もあるし、何よりネイティブが実際に使っている言葉がわかるから。少しだけ答え合わせをすると、ハイタッチはhigh five、スコップはshovel、アイスキャンデーはpopsicle、ニューハーフは…これはキャンプに参加してのお楽しみとしておこう!

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それにしても、ニュアンスで何となく推測がつくだろうと思うのは日本人的な考え。出題された和製英語が、外国人チームには本当にピンと来ないのだ。最初はニアな答えすら出てこない。これは結構、奥の深いゲームですよ!

 

古き良き日本情緒が残る宿場町を散策

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白熱した和製英語バトルが終了したところで、再び地域振興バス“すてっぷくん”に乗車して奈良井宿へ。奈良井宿は江戸と京都を結ぶ街道・中山道沿いにある宿場町。江戸時代にはたくさんの人々がここを行き交い、多いに栄えたという。このエリアは重要伝統的建造物群保存地区に指定され、今も通りには軒灯りの旅籠や千本格子の店が軒を連ねるなど、古き良き日本情緒が色濃く残っているのだ。

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この何ともノスタルジックな空間を皆でてくてく散策する。趣のある建物の前で撮影をし合ったり、気になる店に入って土産品を買ったり、通りの店で五平餅を買って皆でシェアしたり…。何ともゆったりと、そして楽しいひとときが過ぎていった。

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この奈良井宿のような、自分が住んでいる地域の魅力を、しいては日本の素晴らしさを、ひとりでも多くの人に自慢したい。
そのために英語を使えば、より多くの人に伝えられる。
ゴー・グローカルが掲げる一番の活動目的は、実はそこにあるのだ。

今後、地域の魅力を伝えられるようなレポートの作成などもプログラムに取り入れていきたいと代表の土屋さんは語っていた。
もちろん、それは自分の住んでいる街にも色々と応用が効くはずだ。

 

駅員さんも気になる留学キャンプ

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帰りはバスでなく、奈良井宿駅から地元ローカル線を利用して、ベースキャンプである柏茂(はくも)会館に戻る。駅で切符を購入し、電車に乗り込んだ。

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ここで、うれしいやり取りが!
切符を販売してくれた駅員さんから、ゴー・グローカルの連絡先を教えてくださいと尋ねられたのだ。どうやら以前、英語スクールに通ったが、うまく成果をあげられなかったようで、「今回の留学キャンプみたいに英語を学べたら、上達するでしょうねぇ。私も参加したいです」と駅員さん。うんうん。キャンプの参加者の雰囲気が、かなりイイ感じに見えたんだろうな(実際、そうだったし)。

 

2日目のディナーは郷土料理の晩餐

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DAY2のディナーは、信州郷土料理の夕べ。市内在住の郷土料理研究家・下平宣子さんが中心となって、腕によりをかけて料理を振る舞ってくれた。テーブルには山菜と栗のおこわ、きのこ汁、茄子のおやき、香茸の煮物、クルミよせ、名産のレタスをはじめとする地野菜のサラダ(ドレッシングのハチミツも塩尻産!)など、地元の食材をふんだんに使った品々が所せましと並ぶ。

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どれも食材のそのものを活かした、真心こもったやさしい田舎料理。農家を営む土屋さんのご両親も参加して、ローカルトークにも花が咲き、さらに笑いのたえない夜となった。

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素敵な晩餐が終わった後は、それぞれの時間を思い思いに過ごした。
その中でとくに人気を博したのが、「King’s cup」というカードゲーム。

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これは順番にトランプを引いていって、引いたカードの数字によって、
1は「皆で一乾杯!」
2は「○○が一杯飲む!」
3は「自分が一杯!」
4は「女性が一杯!」

10は「いわば英語版山の手線ゲームで、お題が“国“であれば、国名を順番に言っていき、名前が出てこなかったり、重複したりしたら一杯!」
Jは「自分が今までしたことない経験(例えばスカイダイビングとか。)もし、それをしたことがある人は一杯!」
…などなど。

最初の内はゲームに慣れなくて、負けが続くのだが、慣れてくると外国人にも互角に勝負できるようになり、勝つようにもなる。こうなると俄然面白くなってくる! ちなみにお酒でなくて、ジュースや水でもOKだし、コップの飲み物を全部飲まなくても(口をつけるだけでも)大丈夫なので、お酒が飲めない方もご安心を!

 

安藤“アン”誠起
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安藤“アン”誠起

安藤“アン”誠起旅と人、そしてクワガタを撮り続ける写真作家。 タレントや文化人のインタビュー撮影をはじめ、各雑誌やカタログでの撮影多数。一方で写真作家としても活動し、カブトムシ&クワガタやアウトドア関連の児童書、奄美群島・屋久島といった主に島旅系の撮影&執筆も数多く手がける。近年は野外でのフィールドワーク講座や、写真教室なども開催。総合情報サイト all aboutではカブトムシのガイドとして活躍。また、長野県塩尻市のCMC(チーフ・メディア・キュレーター)に就任し、メディアを活かした地方創生に積極的に取り組んでいる。 ■著書 『カブトムシ&クワガタ百科』(誠文堂新光社) 『日本と世界のカブトムシ クワガタの飼いかた』(実業之日本社)『カブトムシとクワガタ飼いかた&図鑑』(実業之日本社)
 『親子でアウトドアあそび』(主婦の友社) 『ネイチャーガイドと歩く屋久島』(実業之日本社)
など

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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