記事検索
HOME > 移住する > Iターン >
2016年2月16日 山田智子

移住者が続々と誕生!臼杵の暮らしを体感できるモニターツアー

今回で5回目となる「移住希望者向けモニターツアー うすきおためし暮らし」。 空き家や生活インフラを巡り、農泊を通し地域の人との交流ができる。ツアーを通して臼杵での暮らしを具体的にイメージできるためか、参加者の移住が増えてきている。
第1回ツアーに参加し、2015年4月に臼杵市に移住した二宮さん夫妻に、移住までの経緯や臼杵でのくらしについてお話を伺った。

モニターツアーで、空き家に一目惚れ

臼杵市に移住し、もうすぐ1年を迎える二宮英治さん、ひろみさんご夫妻。大分出身の英治さんは保険会社に35年勤務し、宮崎、福井、岐阜、熊本、広島と全国各地を転々としてきた。「色々なところを回りましたが、やはり大分が一番。定年退職後は大分県に帰ろうと思っていました」

定年を翌年3月に控えた平成26年秋、友だちから勧められたモニターツアーに「タダだったから」という「不純な動機」で参加。そこで、運命の出会いがあった。

「空き屋バンクの家をいくつか回って、この家を見て、一発で気に入りました。すぐに担当者の袖を引っ張って、ここは俺が唾をつけるからって。それから2、3ヵ月かけて、家内を説得しました」

臼杵市では27年4月から、移住支援や空きやバンク活用促進の補助金制度がスタートした。これも、二宮さんにとってタイミングが良かった。
「空きやバンクを利用したことで、色々な補助をいただけて助かりました。ここは来た時は、まだ前の居住者の荷物が残っていたんです。それを処分する費用も市役所の方から補助をいただけて、大家さんにとっても、私にとっても至れり尽くせりでした。改修の補助もいただけたので、思い切って色々改修できました」

IMG_3381

 

ご近所づきあいに不安を感じているのは、地域の方も同じ

奥さんのひろみさんが決断をする際、最も心配したのは「ご近所づきあい」だった。「転勤族だったので、マンション暮らしが多かった。前回の久留米もそうですが、3年間住んで、隣の人を見たことがない。同じマンションの人と顔を合わせれば挨拶はしますが、名前までは知りませんでした」

IMG_3368▲お子さんが小さい頃につくった表札。マンションでは使えなかったが、今、活用している

二宮さんは保険会社勤務ということもあり、人付き合いは苦手ではなかった。しかし田舎の人間関係は独特だ。
「こちらからも積極的に(地域の活動に)出ることも心がけましたが、もともと近所の人がとても良かったんです」
今ではすっかり打ち解け、「キヨちゃん」「エイやん」と下の名前で呼び合うまでに。

「ご近所付き合いが不安なのは、移住者だけではないんですね。『どげな人が来るやろうか』って、ご近所さんも不安なんです。だから、こちらが心を開けば、絶対に心を開いてくれる。今は皆さんのおかげで、毎日楽しく過ごしています」

 

学ぶ姿勢で、地域に溶け込む

IMG_3364

「良かったら、召し上がってください」とひろみさんが出してくれたのは手作りの大学芋。「これ、うちのサツマイモなんですよ」とうれしそう。

これまで農業をした経験は全くなかった二宮さんだが、移住を機に、庭にある50 坪ほどの畑で、きゅうり、なす、トマト、ピーマン、スイカ、白菜、大根など、季節ごとの野菜づくりに挑戦している。

「周りに先生がたくさんいるからね」
農業は夫婦の楽しみでもあり、ご近所さんとのコミュニケーションのきっかけにもなっている。

これから春にかけては「たまねぎを200本育て、収穫したものを家に結んで干すのが夢」と目を輝かせる。
「(ツアーに参加した)動機は不純だったけど、結果オーライですね。」

 

先輩移住者として、自らの体験からアドバイス

「皆さんのおかげでこの1年を楽しく過ごせたので、2年目はお返しをせんといかん。みんなのために何かできる年にせんとねと話をしているんです」

在職中から、「退職したら何か大分の役に立てるようなことをしたいなと思っていた」という二宮さん。「臼杵の人たちのおかげで今がある。だから臼杵のために、何かできることをしたい」とモニターツアー参加者のサポートを行っている。

IMG_3373

「僕らは久留米にいたので、『来週もう一回来よう』ということができましたけど、関東や名古屋の方は『ちょっと行こうか』という訳にはいかない。お会いした時に極力お話して、どういうイメージをもって移住しようとしているのかをお聞きした上で、アドバイスできればなと思っています」

協働まちづくり推進局の広瀬隆さんも、「制度的な部分は市役所がやりますが、もう一歩突っ込んだサポートとなると限界があります。移住を考えている人が一番聞いてみたいこと、してもらいたいことを分かる立場にあるので、二宮さんを筆頭に、民間の方がその部分をサポートしていただいているのは本当にありがたいです」と話す。

 

臼杵の豊かな食材に魅せられたイタリアンシェフ

IMG_3347

二宮さんと同じく、自宅の庭での農業を満喫しているのが、昨年夏のモニターツアーに参加し、わずか2ヵ月という短期間で、千葉県からのスピード移住を果たした奥桂子さん。臼杵市生まれで、小学校1年生まで大泊で育った。
「臼杵のおいしい魚、母の臼杵弁で育ちました。故郷なので、移住しやすかったです」と語る。
千葉県ではイタリア料理のシェフをしていた奥さんは、「朝起きて、自分が食べたいなと思った野菜を収穫して、料理を作るのが理想。ここでの生活は本当に楽しい」と育てた野菜を愛おしそうに見つめる。

「よく育ってるでしょ?自慢なんです」
無農薬で、臼杵市土づくりセンターの完全堆肥「うすき夢堆肥」を使って育てられた野菜は、移住して数ヵ月とは思えないほど元気に育っている。

「臼杵はお魚も美味しいし。鹿が穫れたからと呼ばれて、イベントで鹿肉を使ったカレーを作ったりもしました」
自家製の有機野菜に、豊後水道の魚、そしてジビエ。臼杵の豊かな食材に、奥さんの腕は鳴る。お茶室もあるという広い家と庭の家庭菜園で、毎日の臼杵暮らしを満喫しているようだ。

臼杵市や移住に興味のある方は、一度ツアーに参加してみてはいかがだろうか。
二宮さんや奥さんのように、そこで運命の出会いがあるかもしれない。

 

『うすきおためし暮らし』~モニターツアー

山田智子
記事一覧へ
私が紹介しました

山田智子

山田智子岐阜県出身。カメラマン兼編集・ライター。 岐阜→大阪→愛知→東京→岐阜。好きなまちは、岐阜と、以前住んでいた蔵前。 制作会社、スポーツ競技団体を経て、現在は「スポーツでまちを元気にする」ことをライフワークに地元岐阜で活動しています。岐阜のスポーツを紹介するWEBマガジン「STAR+(スタート)」も主催。 インタビューを通して、「スポーツ」「まちづくり」「ものづくり」の分野で挑戦する人たちの想いを、丁寧に伝えていきたいと思っています。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

人と風土の物語を編む