全国に広がった「リノベーションまちづくり」
2010年以降、全国で注目を集めている地方創生の取り組みのひとつに「リノベーションまちづくり」があります。
「リノベーションまちづくり」とは、東京・神田などで地域活性を手がけてきた建築・都市・地域再生プロデューサーである清水義次氏が提唱した概念で、全国で増え続けている空家(遊休不動産)を活用し、地域に求められている産業を生み出しながら、まちを活性化することを意味します。
2010~2011年に福岡県の北九州市小倉で、「シャッター商店街」に活気を取り戻そうと、地元の不動産オーナーや有志が取り組んだことをきっかけにその輪が広がりました。
現在も、建築や地域再生に関心の高い層に向けて開催する短期講習「リノベーションスクール」が全国各地で開催されています。
▲「リノベーションまちづくり」が進められている日詰商店街
「紫波タウンイノベーターズ」を募集している紫波町では、中心市街地である日詰地区を中心に、このリノベーションまちづくりが進められています。
今回は、紫波町企画課・公民連携室の高橋哲也さんにお話を伺いました。
▲紫波町役場の高橋哲也さん
「昨年(2015年)10月に、岩手では初、東北では2番目となるリノベーションスクールが開催されたのが紫波町です。紫波町でのリノベーションまちづくりは、日詰の商店街だけでなく、そこから里山や農村にまちづくりを展開していこう、ということにコンセプトを置いています。例えば、日詰商店街が他の地域とつながって、紫波の基幹産業である農産物が関わってくるなど、紫波町らしい『新しい暮らし』を作れたらと思っています」
変化しつつある、まちづくりを取り巻く環境
昨年行われたリノベーションスクール以降、高橋さんは、地域住民への地道な聞き取りや、リノベーションまちづくりに関する説明会を継続的に行っています。
説明会では不動産オーナーへの事業内容の説明だけでなく、地域住人に向けて、紫波町がまちとしてどうありたいか、そもそもリノベーションまちづくりとは何なのかという基礎の部分を解説しています。
「遊休不動産の活用をテーマにしていますが、住んでいる人たちの暮らしと新しい事業がくっついていかないと、地域課題の解決にはならないと思っています。よそ者が来て勝手にやっているということではなく、住んでいる人たちと一緒にまちづくりをしたいですね」
▲昨年行われたリノベーションスクールの様子
説明会を重ねたことにより、リノベーションスクールが実施された昨年頃に比べ、リノベーションまちづくりへの理解者も増えつつあるのだそう。
募集中のタウンイノベーターは着任後、高橋さんたちとともに現場を動きながらリノベーションまちづくりを進めていくことになります。
「まちを変えたい、何かをやりたいと声に出してくれる人が徐々に出てきました。リノベーションまちづくりへの理解が進んできたので、事業家やこんなことがしたいという人が出てきたときに、タウンイノベーターがその間に入ってつないでくれたらと思っています」
新しい価値と活動で日詰を新たな拠点に
▲遊休不動産とリノベーションスクール参加者との出会い
日詰商店街から徒歩圏内では公民連携による複合開発「オガールプロジェクト」が進められ、多くの人が訪れています。
「オガールに来ていただいているお客様を日詰商店街につないでいくことは以前から考えていました。そのためには日詰に人が来る理由が必要です。これまでは日詰地区にある役場や保健センター、銀行などを目的にして商店街に足を運んでいる人が多かったと思います。でもこれからは、新しい価値やビジネスを起こすことで、行きたくなるお店や働く場、楽しく集うコミュニティなどのために日詰に来る人を増やしたい。それを担うことがタウンイノベーターの役割になります」
▲日詰地区にある紫波町役場・旧庁舎。この跡地も、リノベーションまちづくりの舞台となる
今回、募集するタウンイノベーター(リノベーションまちづくり推進担当)は、日詰商店街の物件で事業を起こしたい人のプロデュース・コーディネートをすることや、自らが新しい事業を起こすことも可能であり、リノベーションまちづくりを推進できる内容であれば役割を問わず、自由に活動ができるとのこと。
また、人と人、地域と地域をつなぐ存在であるタウンイノベーターには、コミュニケーション能力、外の目線で見た新しい価値の提案が求められています。
「規模の大小を問わず、年に2件くらい新しい事業がスタートできればいいかなと考えています。今、全国各地のリノベーションスクールは、ほとんどが都市部での開催なんです。紫波町は中心市街地とその周辺に農村地域が広がる町です。まちの中心部と農村部がつながるような『紫波型のリノベーションまちづくり』を一緒につくっていけたらと考えています」
実際に、新規就農をした農家がまちの中心部に住みながら農村部の畑に通ったり、農村部で作った野菜を「オガール」で売るといった循環も生まれつつあるのだそうです。
「紫波町の利点は、中心部の周りにコンテンツがたくさんあること。農畜産物だけでなく、これまで紫波町が取り組んできた環境循環型の考え方や、自転車や自然を活用したアクティビティもあります。それらをどう掛け合わせられるかがカギになると思います」
▲今後の展開について話す高橋さん
2016年9月16日(金)~18日(日)には、昨年同様、日詰地区を対象エリアとした2回目のリノベーションスクールを開催予定とのこと。
「2回目となる今年のリノベーションスクールでは、紫波町の中で実際にプレイヤーとして、リノベーションまちづくりに取り組んでいける人にアプローチしたいと思います。今リノベーションまちづくりにあまり関心のない人が自分ゴトとしてやってみたい!と思ってもらえるような場づくりをしたいですね。公とか民ではなく、やれる人がやるべき。タウンイノベーターにも、そういう意気込みを期待しています」
紫波町のリノベーションまちづくりや、地域のつなぎ役・タウンイノベーターに興味のある方は、下記より募集要項をご覧ください。