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2015年7月8日 OSHULIFE

【農と人をめぐる #2】里山発「加工用トマト」を全国へ。

奥州市江刺区、山間の集落、上小田代。この小さな山間の集落で作られるトマトピューレはいまや東京のホテル・レストランとも取引があります。岩手県が開発した加工用トマト「すずこま」から作られるトマトピューレやトマト味噌ラーメンなど、農作物の栽培だけでなく加工・販売にも積極的に取り組む農事組合法人上小田代(以下上小田代)の組合長伊藤周治さん。

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自分たちの世代で農業を途絶えさせないために、様々な取り組みを行う上小田代は、雑誌現代農業に取り上げられるなどその取り組みが様々な媒体で取り上げられています。2001年に営農組合、2004年には特定農業団体を立ち上げ、耕作放棄地になりそうな農地を転作田にしたり、大豆の作付けや加工トマトの栽培などに取り組んできました。

上小田代

現在は約20ヘクタールを19人の役員などを中心に、米やトマト、大豆を栽培している同法人。組合員のほとんどは地域の方が中心で平均年齢は60歳前後で、どの地域でも抱える農業の高年齢化はここ上小田代でも同様の課題となっています。

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若い方の大半は外に働きに出てしまいます。しかしこうした課題をそのままにしていては、いつかこの地域の農業が途絶えてしまう。そう感じた伊藤さんは、大きなトラックやコンバインが入れない農地の区画整備やトマトの加工品を販売する6次産業など、地域では今まで取り組まなかったことにチャレンジすることで少しでも農業をしやすい環境をつくり、後継者が就農しやすい環境を整えています。

家業である農業の手伝いとなると、賃金が発生しないことがほとんどなのが田舎の常識。しかしそれでは農業=タダ働きのイメージで、農業から離れてしまいます。農事法人上小田代では、土日に若い方に作業を手伝ってもらっていますが、そこはしっかりと賃金を支払い、お互いにフェアな関係を築いていきます。雇う側にも手伝う側にもメリットがあると自然と継続性が生まれ、農業の後継者不足の解決を目指しています。

 

ピンチをチャンスに。加工用トマト「すずこま」の栽培。

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上小田代では平成19年からトマトを作り始め、今年で8年目。当時大手の加工品会社との契約栽培でトマトを最大75アールほど手がけていましたが、従業員の賃金を差し引くとほとんど利益が残らない状況に。徐々に大手メーカーのトマトを作る生産者がこの地域から減ってしまい、メーカーも集荷に来なくなるという悪循環に陥ってしまいました。そこで当時岩手県が開発していた加工用トマト「すずこま」の栽培を開始。
日本では大半が生食で消費されているトマト。そのためほとんどの品種が生食に適した品種です。しかし生食用のトマトを加熱調理すると色が薄い、酸味・旨みが少ない、水分が多いなどあまり加工には向いていないものが多かったのです。すずこまは岩手県が2012年に開発をしたトマトで、加熱調理することで美味しさの本領を発揮するトマトです。

写真右が生食用の桃太郎。左がすずこまを使用したトマトピューレ。加熱処理しても色鮮やかです。写真右が生食用の桃太郎。左がすずこまを使用したトマトピューレ。加熱処理しても色鮮やかです。

 

きっかけはお母さんたちのつくる余り物レシピ

トマトを栽培していると、どうしても規格外等で市場に出せない商品が出てきてしまいます。規格外といっても味には問題のないものですから、お手伝いのお母さんたちが持ち帰るんですが、次の日にそのトマトがケチャップやおやつなどになってテーブルの上に乗っているんですね。作ったものをみんなで持ち寄って食べる。田舎ではよくある事なのですが、そこにヒントが隠れていました。

ある日、ひとりのお母さんがトマトを寒天のようにして持ってきた。それが美味しくて「もう少し手を
加えたら売り物になるんじゃないか?」と思ったのが6次産業へ取り組むきっかけになりました。

最初に作ったのはトマトプリン。トマトの他にも山葡萄・米粉のプリン・おはぎプリンなど4種類のプリンを加工業者へ製造依頼をしました。
順調に販売 していたところに思わぬトラブルが。加工業者の業績不振により製造ができなくなってしましました。生産・加工・販売すべての業者が連携しなければ地域ぐるみでの6次産業は成立しない。その難しさを経験した瞬間でした。

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元々はお母さん達の息抜きとして、地域のイベントに出店してみようというのがきっかけで取り組んだトマトの加工販売も今では東京の有名ホテルやレストランに「すずこま」を使ったピューレを使いたいとの声も出るように。

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伊藤さんが6次産業に取り組む上で大きな課題は、販路の開拓と言います。

農家は栽培のプロであって販売のプロではありません。良いものを作っても販売戦略や販路がなければ売れる商品にはなりません。

販路を広げるにも、ノウハウがない。奥州市にはそこを補い合える人材が不足しています。地域のこと・6次産業を理解してくれてる方に協力隊として来てもらいたい。まずは奥州市にどっぷり浸ってもらう、そして現場の声を聞いて長い目でやってもらえるような人が来てもらいたいと思います。

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伊藤さんを先頭に6次産業に取り組む上小田代。チャレンジしなければ成功も失敗もありません。多くの課題を抱える農業にも希望はあると話す伊藤さん。ピンチはチャンス。小さな取り組みを積み重ねることが農業の抱える問題解決の糸口になるはずです。

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