「ビジョン作成の段階で一番気をつけていたことは、本当に「実行」することを前提としたビジョンにすることですね。」
よくある話なんですが、行政がビジョンとか計画を策定する場合、「作ること」が目的になってしまうことある、と広田教授は指摘します。
「そこに時間をかけるのって無駄じゃないですか。昨年度の13本のトライアルプロジェクトについては、普通はビジョン策定の前に事業を実行することはあまりないんですけど、(実行した)市の本気度を感じましたね。市役所のやる気を感じて、チーム員もやる気になっていました。」
奥州市の地域6次産業化を進めるにあたり、「何のためにやるのか」を外してはいけないと広田教授は言います。
「私の考えでもあるんだけど、“奥州市を食で売り込む”のが目的。奥州を知っている人はたくさんいると思います。奥州藤原氏・奥州街道とか。でも“奥州市”となると知っている人は少ないし、ましてや特産品・観光地が奥州市にあるということはまず分からない。」
「江刺のりんごは有名ですが、奥州であることを知らない。だから、食の6次産業を通じて奥州市ブランドを確立することが大事。奥州市の知名度を上げるために、内輪(市民)の盛り上がりも重要で、ちゃんと地元が地元を意識していないと。」
さらに、「米、肉、野菜など、奥州市という名前がつけばなんでも付加価値がつく状態」をめざすために必要な活動として、奥州市の持ち味・良さ・魅力を発信する際に、奥州市の食の魅力の共有し、外部に向けても、市民に向けても、コンセプトを持つことが必要だと話します。
「例えば、“神戸”や“横浜”とつけばなんでも美味しそうにみえて、“盛岡”プリンより美味しそうに感じますよね。奥州市はそれを目指すだけのポテンシャルを持ってると思うので、地元の人がそれだけの農畜産物の生産、加工、料理をできるという認識で進めたいです。形はいろいろあってもいいと思うんですが、奥州市の食材や料理の良さを知ってもらって市民に自信を持ってもらう。食材を売り込むのではなくて、奥州市を売り込むんです。」
と、奥州市の戦略を語る広田教授の地域おこし協力隊への期待も大きい。
「専任者がいると起動力がちがう。協力隊にも、食を通じたブランドを確立することが目的であると理解してもらいたい。まずは奥州市の食をひととおり味わってもらう。自分自身が美味しいと思えてないと説得力がないじゃないですか。そういうことをわかってもらえる人に来て欲しい。」
地域おこし協力隊にしてほしいことは、「奥州市のものをおいしく食べること」。「実行」に重きを置いてきた奥州市の地域6次産業化、まずはここからスタートとなりそうです。