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2015年12月28日 山田智子

【まいばら みらいつくり人#1】「もっと米原をおもしろくしていきたい」~米原の自然の豊かさを表現し続ける切り絵作家・早川鉄兵さん~

まいばらの魅力を発見し、新たな民藝創生に挑戦しようという作り手、「水源の里まいばら 民藝創生みらいつくり隊員」を募集している滋賀県米原市。

「みらいつくり隊」の1期生として5年前に米原市に移り住み、現在は米原を拠点に切り絵作家として活動する早川鉄兵さんに、米原市の魅力や「みらいつくり隊」の活動についてお話を伺った。

「いつかここに住みたい」という想いが現実に

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──「水源の里まいばら みらいつくり隊」に応募したきっかけを教えてください。

大阪でカメラマンをしていた頃、たまたま仕事でこの地域に来る機会がありました。
僕はもともと自然や動物が大好きで、北海道や小笠原の無人島で自然や動物をテーマに作品を撮影していたので、ここの豊かな自然を見てすごくいいなと感じました。いつかこんなところに住みたいなと冗談半分で思っていた時に、「水源の里まいばら みらいつくり隊」の募集があることを知り、エントリーしました。

──「みらいつくり隊」ではどのような活動をされていたのですか?

最初は活動のベース作りとして、(今住んでいる)この家の改修を行いました。20年くらい空き家になっていたので、北側の部屋などは床が腐っている部分もあり、この家に暮らしながら少しずつ自分で直していきました。

 

地域の自然の豊かさを”切り絵”で発信

── 空き家の改修以外にはどのような活動を?

当初は写真でこの地域の魅力を発信したいと考えていました。「伊吹の天窓」というイベントで、会場となったお寺の障子に切り絵を飾ったり、灯籠をつくったりしたことをきっかけに、段々と切り絵で声がかかるようになったので、結果的には写真ではなく切り絵でこの地域の自然の豊かさを発信することになりました。

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切り絵は、3歳の頃に母が子どもの遊びとして教えてくれたのをきっかけに始めました。その後は子ども服の撮影のときなどに、ちょっと切って子どもたちと仲良くなったり、幼稚園のクリスマス会でボランティアで切ったりしていましたが、まさか切り絵が仕事になるなんて考えてもいませんでした。

「伊吹の天窓」をきっかけに、甲津原交流センターにあるカフェ「麻心 magokoro」で企画展をすることになりました。さらにその企画展を観に来てくれた方から「うちでもやってほしい」「こういうものを切ってほしい」と声がかかり、そういう話が徐々に増えて、自然に切り絵作家としての活動が広がってきた感じです。

また、「みらいつくり隊」として活動していたことで、滋賀県内新聞が取材にきてくださって、それを見た関西のテレビ局が取り上げてくださったことも大きいです。
米原は新幹線が止まるので、大阪へは30分、東京へも日帰りで行けますし、いいバランスで仕事ができています。

 

米原の豊かな自然が、作品づくりのインスピレーションになる

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── 米原の生活はいかがですか?

(部屋の窓から見える景色を眺めながら)紅葉もきれいですし、雪になれば白いですし、夏の緑なんかは日に日に緑が濃くなっていく様子を毎日見られる。本当に贅沢だなと感じます。
夜になると、鹿は出てくるは、イノシシは出てくるは、タヌキにキツネに、何でも出てくる。ナイトサファリみたいな状態です。意識をして何かを観察しなくても、ここでは生活の中で自然に見ることができます。理屈抜きに、僕の作品はここにいないと作れません。
大阪も好きだったんですけど、僕は石川県の自然のあるところで育っていたので、ちょっと大阪では子育てしたくないなという気持ちがありました。今後、娘がここでどう育っていくのか楽しみです。

あと、ここにいると餓死することだけはないですね(笑)。村の端まで歩いて帰ってくると、たいてい野菜とかで両手がいっぱいに。お金には換えられない贅沢です。

── すっかり地域に馴染まれていますね。

ここの人たちはある意味都会的なんです。必要以上の干渉はされなくて、でも相談をするとすごく力になってくれる。すごく良い距離感です。田舎なので、総普請(そうぶしん)といって、一軒一人ずつ出てみんなでお寺の雪下ろしや水路の掃除などをする機会があるので、地域の方の知恵を学べて楽しいです。

 

行政との距離感もちょうどいい

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──「orite米原」のパッケージをデザインしたり、「米原」駅で展示を行ったり、市のお仕事も多いですね。

行政との関係はとてもいいですね。例えば、僕が大阪市に住んでいて、大阪市と何かやろうとしても簡単ではないですよね。小さい町だからこそ、距離が近くて、一緒に色々なことができるので、とてもおもしろいです。

「伊吹の天窓」を行う時も、僕らのわがままに一生懸命応えてくれます。普通は行政と何かをやる時には色々な縛りがあると思うんですけど、米原市は極力僕らが思いっきりやれるような環境を作ろうとしてくれる。すごくやりやすいです。単に助成金を出すだけではなく、一緒に作っている感じで楽しいです。

 

みらいつくり隊はまたとないチャンス。米原をもっとおもしろく!

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── 最後に「水源の里まいばら 民藝創生みらいつくり隊員」への応募を考えている方へ、一言お願いします。

民藝創生は、すごいチャンスですよ。僕も一度住民票をどこかに移して、エントリーしたいくらい(笑)。

いつかはやりたいと思って悶々としているくらいなら、2年間やってみたらいいと思います。ここで成功すれば外へもアピールできます。僕も都会で切り絵作家としての活動を始めていたら、きっと埋もれていたと思います。競争率の低いところでやったからこそ見つけてもらえて、それを米原市も一緒に育ててくれたので、今につながっている。

こんなことを言っていいのか分かりませんが、ここで花開いて、大阪や東京に戻りたければ戻ればいいと思います。でも一度住むと、戻る気にならないですけどね(笑)。 タイミングとしても、今米原市はおもしろい。これからもっとおもしろくなるだろうと思うし、僕らもおもしろくしていきたいと思っています。

取材先

切り絵作家・早川鉄兵さん

切り絵作家。1982年、石川県金沢市生まれ。小さいころに、母親と一緒に切り紙遊びをしたことをきっかけに切り絵を始める。滋賀県米原市の山間集落に拠点をおき、日々出逢う自然や動物をテーマに制作活動をしている。精密な切り絵作品にとどまらず、大掛かりなインスタレーションやライトアップを手がけるなど、新しい切り絵表現の可能性を模索している。

HP:http://hayakawateppei.jp/

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私が紹介しました

山田智子

山田智子岐阜県出身。カメラマン兼編集・ライター。 岐阜→大阪→愛知→東京→岐阜。好きなまちは、岐阜と、以前住んでいた蔵前。 制作会社、スポーツ競技団体を経て、現在は「スポーツでまちを元気にする」ことをライフワークに地元岐阜で活動しています。岐阜のスポーツを紹介するWEBマガジン「STAR+(スタート)」も主催。 インタビューを通して、「スポーツ」「まちづくり」「ものづくり」の分野で挑戦する人たちの想いを、丁寧に伝えていきたいと思っています。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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