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2016年5月20日 岩手移住計画

小規模山林の集約化推進で効率的な森林づくりと価値ある製材の生産を目指す ―花巻市大迫地区の林業事情とその可能性―

花巻市の地域おこし協力隊「イーハトーブ地域おこしプロジェクトチーム」には昨年7名が着任し、活動しています。
現在、第2期として新たに4つの職種で5名を募集していますが、今回の取材ではそのうちのひとつ、花巻市大迫(おおはさま)総合支所 森林支援員の主なフィールドとなる現場を訪問し、この20年、大迫の山を見守ってきた花巻市森林組合大迫事業センター長の高橋さんにお話を伺いました。

10ヘクタール未満の小規模山林所有者が多いのが花巻市の特徴

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森林は持ち主によって国有林、市有林、民有林に区分されます。土地利用状況の87%が森林という花巻市の場合、森林面積約52,411ha(ヘクタール)のうち、10ha未満の規模で山林を所有する小規模保有が全体の67%を占めています。これらのほとんどは民有林なので、 山の持ち主が大勢いることを示しています。

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森林組合の主な仕事は山の管理と木材の利活用です。20年ほど前までは製材加工をなりわいとする民間企業も数多くいたため、製材やチップ加工は民間企業が引き受け、森林組合は山の管理を中心に、植栽などの森林づくりに比重を置いていました。現在は業界の衰退もあり、植栽から素材加工まで一手に引き受けています。

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継続的な山の手入れが進まない民有林の現状

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森林づくりの仕事は次の5つの工程に分けられますが、この1サイクルは約50年あるいはそれ以上の長い期間をかけてゆっくりと進みます。

①植栽
苗木の植え付け。通常は春か秋に行います。

②下刈り
苗木の成長を妨げないように周囲の雑木林を刈り払う作業です。主に夏に行います。

③除伐・枝伐
植栽した樹木の成長を邪魔するほかの樹種を取り除く作業です。また、節の少ない形質のよい木材にするために下枝を切り落とします。

④間伐
木々の密度を調整することで、木々どうしの競争を緩和させ、残された木を健全に育てるための作業です。主に秋から冬にかけて行います。

⑤主伐(成林)
利用するために成長した木を伐採します。
(平成27年度版「間伐のしおり」より抜粋)

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現在の大きな問題はこのサイクルが確立されていないことです。これらの作業は原則自治体に届け出たうえで実施されるのですが、民有林においては昨年度250件程度の届け出があったうち、植栽作業の割合は1割でした。製材加工のために主伐されることはあるものの、そこで得られる利益も大きくはありません。山の管理という点では伐採後の植栽が推奨されていますが、これにも費用がかかります。民有林所有者にも山の手入れに積極的になれない経済事情があるようです。

花巻市森林組合大迫事業センター長の高橋さん(写真上)によると、20年ほど前は所有者自身が除伐、枝打ちまで手入れできていましたが、高齢化により作業が難しくなったり、登記上の後継者がいても必ずしも山の仕事ができる状態になかったり、様々な事情で山の手入れが中断されている状態とのこと。国有林や市有林は管理する行政側が予算を確保することで手入れは可能ですが、民有林については森林組合が勝手に立ち入りや手入れをすることはできません。

この季節、大迫では木々の新緑豊かな山の風景が広がりますが、風景として遠くから見ているのと、管理という点で山に入って見るのとでは受ける印象が全く違うように感じました。

 

山の仕事の醍醐味は、手がけた山の木々が豊かな森林に成長していくのを見守ること

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今回お話を伺った高橋さんは平成3年に旧大迫町森林組合に入社。平成21年に花巻市内に4つあった森林組合が合併された後も、引き続き大迫地区に勤務し、山の変化を見守ってきました。

入社当初は大迫の様々な山に足を運び、植栽や間伐を手掛けるなど現場に出ることが多く、「時間はかかりますが、当時の木々が20年経過して立派な林になることや、市場に製材として出荷されていくのを見届けるのがやりがいです。この新緑の季節に山を眺めるのが好きですね。」と話してくれました。

 

期待されるのは山林所有者との関係性強化

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高橋さんによると、地域おこし協力隊として着任される方にはまず様々な現場を経験してもらい、希望や適性を考慮しつつ、山林所有者との関係性強化に協力してもらいたいとのこと。

花巻市森林組合は大迫事業センターのほか花巻市内に事務所があります。あわせて約30名のスタッフが勤務していますが、人数は必要最小限にとどまっているため、通常業務の範囲ではなかなか腰を据えて取り組めない約2200名の正組合員(山林所有者)との関係性強化が望まれています。

年に1,2件と数は少ないものの、山を手放したいと森林組合に相談に来られる方もいます。10ha未満の小規模保有者が多いので、このような場合は、隣接する森林と集約する、いわゆる「団地化」が望ましく、森林組合では関係者との交渉なども行います。集約化されることで重機の入る道も整備しやすく、作業の機械化が可能になります。

花巻市内の山林所有者がすべて森林組合に加入しているとは限らないので、組合員や市民向けに、このような「団地化」や公的な支援制度について説明、広報していくことも求められています。

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山林所有者は年齢や立場が様々で、昔は自分で手入れをしていたという経験豊富なベテランから、登記上の所有者であり山仕事はしたことがないという若い方までいると推測されますので、徐々に相手との距離を縮めて、懐に入っていくようなコミュニケーションがとれると、地域にスムーズにはいっていけるかもしれません。

 

花巻市のこれまでの動きや1期生の活動事例を見る

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岩手移住計画岩手移住計画は、岩手にUターン・Iターンした人たちの暮らしをもっと楽しくするお手伝いをし、定住につなげていくために活動している任意団体です。県内各地で、「岩手移住(IJU)者交流会」と題したイベントを開催しているほか、岩手県などが主催するUIターンイベントにメンバーが参加し、移住希望者の相談にも対応しています。首都圏と岩手をつなぐ活動にも力を入れています。

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