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2022年8月13日 奈良織恵

海のすぐそばの山林(N35°)に小屋を建てました!

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3年ほど前にご縁があり、某企業から弊社(ココロマチ)が譲っていただいた南房総の山林。
16000㎡の敷地のうち3000㎡が山林、残りの13000㎡は保安林になっています。保安林の方は、伐採をしたり建物を建てたりすることはできませんが、山林の方はさまざまな活用が考えられます。

南房総2拠点大学不動産コースの課題テーマとして活用方法を考え、その後も、草刈りをしたり果樹を植えたり…と、定期的に整備活動をしてきました。
敷地内をちょうど北緯35度線が通っていることから、「N35°」と命名したその山林に、先日、6畳スペースの小屋が建ちました!

見捨てられた土地を、みんなで活用していくプロジェクト

もともとこの山林は、「手つかずの自然が残る山」だったわけではありません。
昭和初期の頃には、敷地内に建物が建っていました。詳細は調べ切れていないのですが、感染症病棟のようないわゆる忌避施設が存在していたようで、近所の方に聞くと、
「子どもの頃は、あそこには近づいちゃいけないよと親から言われていた」
というような話も出てきます。
そんなこともあってか、建物がなくなった後も、何かに使われることもなく、敷地には不法投棄のゴミがたくさん。

掘れば掘るほど出てくるゴミたち。分別して地道に片付けています

でも、枝を広げた良い感じの広葉樹も多く、トンボや蝶もいて(蚊もすごいし、蛇もいるけど)、海(サーフスポット)からも近くて、ものすごく可能性を感じる場所なのです。

敷地は海のすぐそば。将来的には展望台をつくって海が見える場所をつくろうという計画も

負の歴史があり、ゴミが捨てられて、地元の人の関心も薄かったけれど、ポテンシャルは高そうなこの場所を、ヨソモノの私たちが仲間と一緒に楽しく整備していくことができたら、地元の人にも関わってもらえる場所にできたら良いのではないか?
そんな想いから、このプロジェクトはスタートしました。

3歩進んで2歩下がる…整備活動

荒れた山林の整備ということで、まずは草刈りから始めるわけですが、夏の間はとにかく草の勢いがすごくて、頑張って刈っても、2週間後にはほぼ元通り。わざわざガソリンを使って草を刈って、また生えてきた草を刈って…結局、環境に悪いことしかしてないのではないかと、むなしくなります。
また、5月頃から11月末あたりまでは蚊が多く、無防備に滞在していると小一時間で10か所以上刺されるので、長居もできません。
そんな感じなので、この3年間、月に1~2回程度は通って整備してきたわりには、あまり進んでいないというのが正直なところですが、いくつかのことに取り組みました。

■植物を植えてみる
食べられるものがあると通うモチベーションが上がるよね、ということで、食べ物をいろいろ植えました。

果樹・野菜

果樹としては、枇杷、レモン、オレンジ、オリーブを植えました。柑橘系は軒並み元気がなく(やはり海が近すぎるのか…)枇杷は比較的良さそうです。
とうもろこしは、良い感じに出来ていたのですが、収穫直前で、何者か(小動物系)に食べられました。じゃがいもは毎年ちゃんと収穫できて、BBQなどで楽しんでいます。

■井戸復活プロジェクト
敷地内には井戸があったのですが、金網がかけられ、「あぶないから入ってはいけません」の文字があり、最初の頃は手をつけられずにいました。

井戸
井戸を開けると、蟹が顔を出すことも

地区の区長さんとお話をした際に、「あの井戸を使えるようにした方がいいよ」「ポンプを使って、まずは井戸の水を全部出してみるといい」とアドバイスをもらい、井戸を開けて、水を汲みだしてみることに。
すると、結構きれいな水(※水質調査は未)が豊富に流れ出しており、空になるまで吸い上げても、1~2時間でまた井戸がいっぱいになるほど、豊富な水量があることがわかりました。

■小川づくり
井戸の水を放水するのに合わせて、溝を掘って敷地内に小川をつくる活動も進めました。
もともと、水はけが悪く湿地帯のようになっている場所があり、そこから大量の蚊が発生しており、治水問題も大きな課題でした。

小川づくり
季節によっては、おたまじゃくしがうじゃうじゃいます

敷地内の高低差を考慮しながら溝を掘り、低い方に流れるようにしました。雨があまり降らないと枯れてしまうこともありますが、一定の雨量があれば、水が流れている状態になっています。

■原っぱ大学さんとのイベント
まだまだ荒れ地状態のN35°ですが、「この状態だからこそ面白い!」といって、場所の利用を申し出てくれたのが、原っぱ大学のガクチョー塚越さん。
「原っぱ大学×大家の学校」企画のフィールドとして、N35°を活用し、この場所の新たな可能性を見せてくれました。

半日程度で、設計も無くつくられた、ツリーハウス
大人も子どもも、思いっきり楽しんだイベントの様子

竹の切り株や、ガラスの破片、蛇など、数え上げたらキリがないくらいに「危険」がある場なので、子どもたちが自由に遊ぶなんて…と心配していましたが、原っぱ大学さんのノウハウや運営のみなさんの準備もあって、ケガもなく、とても良いイベントとなりました。

4年目にして、小屋づくりにチャレンジ

そんな感じで、これまでは、草刈りや枯れ木伐採、小川づくりなど、自然の勢いに対する制御・対応としての整備は進めてきましたが、「建物」「構造物」をつくることは、考えてきませんでした。
敷地内に残っている人工物(かつてあった建物の基礎やコンクリート、不法投棄されたゴミたち)を片付けるのに苦労している分、自分たちが、さらなる人工物を増やしてしまうということに、若干の抵抗感もありました。

が、いろいろとタイミングも重なり、やはり拠点となる小屋が1つあると、今後も人を巻き込んで一緒に整備をしていくにあたって良いだろうということで、4年目にして、構造物をつくるにいたりました。

小屋
基礎から建て方、屋根までは地元の工務店さんに依頼

当初は「ゴミを増やしたくない」ということで、中古でも流通しやすそうなトレーラーハウスやコンテナハウスが良いと考えたのですが、敷地へのアプローチの道が細いことから、運搬不可能ということになり断念し、材料を運んで小屋を建てることに。

外壁貼りなどの仕上げは、普段から山林整備をしている仲間たちとDIYで。DIYの講師は、「小屋大全」の著者で小屋DIYのプロである西野浩章さん。DIY用の資材は、地元の木材会社さんから購入。

この小屋づくりで学んだこと、感じたこともいろいろとあるので、それはまた別途まとめて書きたいと思います。

小屋を拠点にやっていきたいこと

今回建てた小屋を拠点として、今後やっていきたいことは大きく2つあります。

①ココロココとして「タイニーハウスの情報発信拠点」

小屋・タイニーハウスを、移住や2拠点、週末副業などの新しい地域やライフスタイルの入口になるものとして、発信・プロモーションをしていきます。

今回、実際に自分で小屋づくりをしてみて、「トレーラーハウスか?小屋キットか?セルフビルドか?」「6畳の小屋って実際どのくらいの広さ?」「DIY用の資材調達はどうしたらいい?」など、悩むところがたくさんありました。実際の小屋を見学させてもらったり、詳しい人にお話を聞いたり、いろいろ助けてもらって、なんとか進めることができました。
なので、希望があれば、N35°の小屋の見学も受け付けたいと思いますし、小屋づくりに興味がある人と、ノウハウを持っている人を繋ぐコミュニティ的なものをつくれたらと考えています。

その準備として、現在アンケートを実施していますので、該当者の方はぜひご回答ください!(締切は、一旦8月15日まで)
【オーナー・利用者向け】タイニーハウスに関するアンケート調査
【希望者向け】タイニーハウスに関するアンケート調査

②N35°として「DAO型組織運営の実験」

ココロマチ代表の吉山はよく「命は授かりもの、土地は預かりもの」という話をします。その言葉どおり、N35°の土地は、登記上は今現在、株式会社ココロマチが預かっていますが、これをまた、次の人に渡していくタイミングが必ず来ます。
そう考えると、持続可能な運営とするためにも、ココロマチがオーナーとしてすべてを決めていくのではなく、関わる人たちみんながオーナーシップを持って運営に参加していくコミュニティ運営ができないかと思っています。
WEB3、DAOなど、まだまだ勉強中なのですが、例えば、N35°のNFTを持っている人が運営に関われる、小屋を使える…みたいな仕組みを考えたいなと。
このあたり、詳しい人、興味のある人がいたら、一緒に勉強したいですっ!

…ということで、まだまだ発展途上なN35°ですが、小屋ができたことを契機に、次のフェーズに進めていければと思っていますので、よろしくお願いいたします。

奈良織恵
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私が紹介しました

奈良織恵

奈良織恵横浜市出身、東京都港区と千葉県南房総市の2拠点生活。 両親とも東京生まれ東京育ちで、全く田舎のない状態で育ったが、父の岩手移住をきっかけに地方に通う楽しさ・豊かさに目覚める。2013年に「ココロココ」をスタートし、編集長に。 地方で面白い活動をする人を取材しつつ、自分自身も2拠点生活の中で新しいライフスタイルを模索中。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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