移住スタイル3 自分らしいライフスタイルを実現したい。 その選択肢が「移住」
1と2の中間的なケースもある。
例えば「慌ただしい都会暮らしをずっと続けることに疑問を抱き始めていた…」という「目的の卵」と、「facebookに友人が書き込んでいる里山の生活が楽しそうで気になり始めてきた…」という「場所の卵」が生まれ、徐々に大きくなり近づき始め、あるきっかけでクロスオーバーしたことが移住へのスタートとなった、というケースだ。
このスタイルの場合は、最初は移住のことなど考えもしていなかったけど、新しいライフスタイルを模索している中で、「やりたいこと」と「住みたい場所」が徐々に姿を現わし始め、両方のニーズを実現できる選択肢が「移住」であると気づいた、という人も多い。
そのため、移住先にはそれまで「全く縁のなかった場所」ではなく、なんらかのゆかりのある土地や、友人がいる町などが選ばれることも多いようだ。「子どもに安全な食材を食べさせてあげたくなって、妻の実家がある山梨の地で野菜をつくることに思い至った」といったパターンも該当するだろう。
都会の暮らしでは得られない「何か」を得るためのアクション「自分らしい暮らし方を実現するための手段」がたまたま移住だった、ということだ。この場合だと、都会と新しい土地での2拠点生活を送りながら、徐々に新しい拠点での足場を整えていく、という方法も考えられるだろう。
実例コラム
CASE7 WEBデザインと農業を両立させられる場所に一戸建てを建てる
千葉県に移住したHさん一家(30代・妻、子供2人)。 Hさんは東京でWEBデザイナーとして非常に多忙な暮らしを送っていたが、同じ業種の友人が家を建てて野菜を育てる生活を始めたことに刺激を受け、農業との関わりのある新しいライフスタイルを模索し始めた。たまたま釣りとレジャーも兼ねて房総半島を訪れたとき、偶然見つけた里山に近い土地に奥さんが一目ぼれ、「ここに住む」と決めたそう。
一戸建て住宅を建てられる土地だが、近くには借りられる農地があり、地元の農家さんたちから指導も受けられるという条件もあって、農と関われることが一番の決め手だった。
WEBデザイナーの仕事はフリーランスとして自宅で続け、その傍ら野菜を育てる生活。農業は素人同然だったが、なんとか野菜の収穫ができるまでに。子ども達ものびのびと元気に育ちたくさんの友人もできたそうで、正しい選択をしたと喜んでいる。
CASE8 新しい仕事のために住み始めた土地で田舎暮らしに目覚めた
岐阜県に移り住んだMさん(20代・女性・単身)。 最初は移住するつもりなどまったくなかったが、それまで勤めていた会社のグラフィックデザイナーという仕事に行き詰まりも感じていた。何か環境を変えてみたいと思っていた頃、たまたま岐阜県郡上市にある企業が募集していた緊急雇用対策事業の人材募集を見つけ応募。全く知らない場所で新しい仕事につき、働き始めたことからライフスタイルが大きく変化した。
変化の一番のきっかけは里山の暮らし知るためのグループに参加し初めて「田舎暮らし」を体験したこと。農業を手伝ったり地域の集まりに参加するようになり、田舎暮らしの良さを知るようになった。その後は移住推進協議会の活動にも参加するようになり、そのまま移住に至った。
まだ20代なのでずっと住み続けるかは分からないが、経験を活かして町おこしの活動を続けて行くことが新しい目標になったそうだ。
CASE9 あきらめかけたパン作りの夢が高知の地と結びついたことで実現
高知市で小さなパン屋さんを営むOさんは東京からの移住者。 小さい頃からパン屋さんになるのが夢だったOさんはパン作りの技術も学び、東京のお店で働いていたのだが、自分の店を持つまでには至らず夢はしぼみかけていた。
気分転換も兼ねて旅行で訪れた高知のカフェの大ファンとなったOさん、何度も訪れるようになり、そこで働くために移住を決意。
勤め始めてみてからオーナーのアドバイスもあって、パン作りを少しずつ始めることになり、もともとの夢も再び膨らみ始めてきたのだ。カフェでの販売から出張販売と規模を大きくしながら、今では小さいけれど念願のショップを開店できるまでなったそうだ。
「やりたいこと」と「住みたい場所」が少しずつ大きくなって近づいていった移住スタイルの好例だといえそうだ。