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2015年10月20日 ココロココ編集部

「米子市についてもっと知ろう 移住セミナー&交流会」イベントレポート

会場は「新橋」駅の銀座口からすぐ目の前。2014年に開館した「とっとり・おかやま新橋館」は、鳥取県と岡山県の合同アンテナショップです。1階は特産品店、2階は地元食材を使ったビストロカフェと、イベントスペースになっていますが、今回はこのビストロカフェを貸切にして、夕方から夜にかけてイベントが行われました。5名の方の講演の後には、地元産品を使ったメニューの試食会も行われるという「おまけ」付きのセミナーです。

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昨日までの雨も上がって、土曜日の夕方だったこともあり、用意していた席は開始前にすでに満席に。スタッフ席もお客さんに提供するなど、多くの方が参加されました。

来場者層は移住を強く希望している人から、買い物中にたまたま館内放送を聞いて来たという人まで、さまざま。特に小さなお子さんを連れたファミリーが多かったのが印象的でした。

米子市移住定住専任相談員 中上弘恵さん

最初のパネリストは、「米子市移住定住専任相談員」の中上弘恵さん。中上さんは市役所に常駐している相談員さんで、移住に関するあらゆることにアドバイスをくれる、移住者にとって「米子のお母さん」的な世話焼き人。2014年からこの役で活躍されています。

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中上さんの趣味は、一眼レフで本格的に撮影する風景写真。ということで、米子のきれいな写真をところどころに挟みながら、米子市が「暮らしやすさ指標の全国順位」で上位に入っているという理由について、住みやすさ、自然の豊かさ、交通の便利さ、水の美味しさ、レジャーの多さと身近さ、医療や子育て環境の充実、温かな人柄など、米子の魅力を大アピールしてくださいました。

また、米子市で行っている施策にも触れて、さまざまな助成制度や、米子独自の「お試し住宅」の制度、意外と知られていないという「移住定住促進エアサポート」なども紹介。その後の質問の時間には、「お試し住宅には何日から住めますか?」といった質問もあり、関心の高さがうかがえました。

▼中上さんのインタビューも載っている米子の紹介コラムはこちら

山陰随一の商業都市「米子」が移住先として注目される理由
https://cocolococo.jp/5146

おうちカフェ しぇあん 店主 安達毅さん

続いてのパネリストは、米子市内で「おうちカフェ しぇあん」を営んでいる、安達毅(たけし)さん。安達さんの実家は米子で、大学進学で名古屋に出て、その後名古屋で18年間の会社員生活を送ったそうですが、ある時「会社の体制の変化についていけず、これも田舎に戻るいい機会かな、と思って辞めました」とのこと。

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米子に帰ってきたのは8年前で、最初は会社に勤めたそうですが、米子市の「チャレンジショップ」の企画をきっかけに、カフェ経営への手応えを感じ、店を始めることを決意。古民家を見つけて、2010年にオープンしました。

「最初はお皿10枚あればいいな、と思って始めたんですけれど、そのうちお皿10枚では足りなくなってきて、皿を下げてはすぐに出すという状況で…」など、リアルな体験談をユーモアたっぷりに話して下さいました。今では予約もだいぶ一杯になる、人気の店になって経営も安定してきたということです。

「移住したい人で飲食に興味がある人は、うちで1日飲食業体験をしてもらっても良いので、ぜひ来てください」と、飲食で起業を目指す移住希望者にエールを送っていました。

質問タイムになって、来場者の女性から「私も飲食をやりたいのですが、本当に収入が得られるのか不安で」という質問が。安達さんは「名古屋時代よりは減りましたが、今は、米子で会社員をやっている時代よりは増えました。家賃も駐車場代も安いので、収入が少なくても生活は楽ですよ」と答えていました。

その他にも、「お試し出店の制度は今でもあるのか?」「今は無いですが、うちの店をそういう場所として使ってください」とか、「どのぐらいの商圏がありますか?」「松江、倉吉、鳥取など、広い範囲から来ていただけます」といった具体的な質疑応答があり、飲食業への関心の高さが感じられました。

NKCナーシングコア・コーポレーション 代表 神戸(かんべ)貴子さん

3人目のパネリストは、福岡県出身で神戸、東京で働き、米子への転勤をきっかけに、この地で起業し、定住したという、いわば「Jターン」組の神戸さん。

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神戸さんは看護師とケアマネージャーの資格を持っていたことから、これを生かしてビジネスをしたいと思い立ち、会社を立ち上げたそうです。事業内容は、赤ちゃんから高齢者までの「見守りサービス」。主に高齢者の病院付き添いや、買い物付き添いなどのサービスを提供しているそうで、ビジネスは好調に進んでいるとか。

米子に初めて来たのは15年ほど前だそうですが、その時感じたのは「ほどよく都会だな」ということ。「空港も近いし、搭乗手続きもあっという間なので、東京に出るのがすごく楽なんです。だから東京にもよく行っています」と、意外な距離感の近さにも触れていました。

「米子で女性が起業するのって、すごく珍しいんです」ということで、苦労話が始まるかと思いきや、「でも、みなさんがすごく協力してくださるんですよ。起業したいと思ったら手を挙げれば、どこからともなく人が集まって、物件や人を紹介してくれるんです」と、すんなり起業でき、軌道に乗せられたという意外なオチに。地方での起業に戸惑いを感じていた方にとっては、大きな励みになったことでしょう。

その他にも、医療・介護関連に明るい神戸さんからは、「子育て支援のビジネスをやっている人も多い」「クリニックの数はコンビニよりも多いかも」「産婦人科も多いので、たらい回しにはならない」「老後まで安心して過ごせる」など、暮らしの安心に関わるいろんなお話が聞けました。

株式会社TOYBOX 本田修司さん

4人目のパネリストは、米子初(鳥取県内では2番目)のスターバックス誘致に成功した本田さん。「TOYBOX」という会社に勤めており、おなじみ「ツタヤ」の店舗を米子市内で2店舗を任されています。

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2015年12月にはそのうちの一方「TSUTAYA角盤町店」の改装工事が終わり、山陰地方最大規模のスターバックスがお目見えするとか。地元であればそんな話題で盛り上がりそうですが、ここは東京。本田さんは冷静に、米子のビジネス事情について話してくださいました。

本田さんの前職はランキング等でおなじみの「オリコン」。そこで役職が付くほどの活躍をされていたそうですが、2011年の震災を機に移住を考え始め、奥さんの実家が島根県だったことから、最終的に米子に移住先を決めたとか。

「最初は山陰のどこかに不時着できればいいな、と思っていて、どこでもいいなと思っていたんです。だから広島や岡山にも行って、会社の面接も受けて、内定も幾つか取り付けていました」。

いろんな街で仕事探しをする傍ら、本田さんが熱心に行っていたのが「現地視察」。「10回ぐらいは現地視察に行きました。1回10万はかかるので、10回で100万はかかっていたと思います。最後にはお金が無くなって、引っ越しの時には自分でトラックを借りてトラックに行ったくらいなので」と、当時の思い出を楽しそうに語ってくださった本田さんですが、どれぐらいやっても足りないほど、「現地視察」は大事だということでした。

米子に心を決めた本田さん。「一度決めたら、決意を揺るがせないことが大事。だから僕は100のメリットを書いて、何度も読みなおしていました」と、不安との戦いも大事だと話していました。

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その他、本田さんが感じたのは、「ドアツードアのクルマ通勤で、通勤時間は10分」「意外と雪が降らない。天気もいい」「東京基準で生活できていた人は、絶対に米子でも生活ができる。仕事もできる」といった部分だったようです。移住者の背中を押してくれるコメントも目白押しでした。

その半面で、「そうは言ってもクルマは絶対に必要」「田舎は選択肢が無い。でも、その分すぐに行動に移せる。迷わないから」「地方には悠久の時が流れている。メールの後に電話をしたりね」など、ちょっとしたカルチャーショックの話題も。

そんな本田さんが最近強く感じているのは、「米子は不毛の地ではなく、未開の地」ということ。未開とは発展途上ということ。だから、ビジネスチャンスは沢山眠っているのだそうです。「米子は高いモチベーションがあれば何でも可能な街。やろうと思えば実現できる!」という言葉が印象的でした。

キャリアコンサルタント 桑本玉枝さん

最後のパネリストは、「キャリアコンサルタント」として、米子で就労支援活動を行っている桑本さん。もともとは「ふるさと鳥取県定住機構」や、米子のハローワークで移住や就労関係の仕事をしていた桑本さん。「移住と仕事探しのプロ」の視点から、いろいろとアドバイスをしてくださいました。

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桑本さんが強調していたのは、「仕事は人生を作っていくということにつながる」という言葉。「米子は適度な都会。小さなエリアにいろんなものがまとまっているし、普通に生活をするには困らないものが揃っています。ただ、都会と比べて圧倒的に少ないのが求人。でも、人口も少ないのですから、有効求人倍率は都会とほとんど変わりません。仕事を選ばなければ、十分に就労機会はあるはず。米子はいま、実際に売り手市場で、企業が人を欲しがっているという状態です」と、移住希望者には心強い話もいただけました。

さらに、「米子の社長さんはハローワークを重視しているので、仕事を探すならハローワークに行くのがお薦め」だとか、「遠くの方はハローワークのインターネットサービスもあるので、そちらから探すのも良い」など、具体的なアドバイスも。「都会と同じ感覚で就職サイトを探しても、情報は少ないです」と、ついつい陥りやすいポイントもしっかり押さえてくれました。

ちなみに、桑本さんによれば米子市は女性就業率が日本第3位の街で、「嫁も働く」という慣習があるそう。だから収入が低くなっても、共働きすれば世帯収入はそれなりになり、生活費も安いことから、生活が苦しくなる心配はあまり無いとのこと。「先に帰ったほうが米を研いで、洗濯物を入れる。で、後のほうが保育園に寄ってくる。だから、夕方の6時半には全員が家にいる。米子ではこういうご家庭が多いです」とおっしゃっていました。

5人のパネリストの発表が終わったら、あとの時間は米子の郷土食材を使った料理を食べながら、講師の方とフリートークができる交流会。

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沢山来ていた子どもたちも、美味しい郷土料理を食べながら笑顔で過ごしていました。大人たちは、和気あいあいと、講義中には聞けなかったことも根掘り葉掘り、色々と聞いていた模様。最後までほとんどの方が残る、楽しい交歓会となりました。

最後に、参加したお客さんの一部の方に今回の感想を聞きました。

何度も熱心に質問をされていたのは、移住を本気で考えており、これまで何度も米子に“視察”にったという神永さん一家。

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「いろんな方のリアルな話が聞けて、非常に参考になりました。いつになるか分かりませんが、本当に考えていきたいです。試食会もすごく良かったですね」と、嬉しそうな表情で話しておられました。

女性の友達同士4人と、うち1人の旦那さんと、5人で参加していた皆さん。「関西が地元で、そっち方面の田舎で移住先を探していたので、参考になった」という方もいれば、「東京出身で今は独身ですけれど、話を聞いてみて、結婚した後の選択肢のひとつとして、移住を選択するのもアリかな、と思いました」という方も。「インターネットや雑誌とは違う、住んでいる方の話を聞けてイメージができました」という意見もあり、やはり地元民やUターン経験者のリアルな話は心に響いたようです。

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ご夫婦とお子さんの3人で参加したファミリーは、「主人の実家が山口なので、いずれそちら方面への移住を考えていました。米子も比較的近いということで今回、予備知識無しで来たんですけれど、いろんな角度から情報をいただけて、すごく分かりやすかったです」「医療費の補助が出るとか、細かな話も聞けて良かったです。それに話している人達がとても人が良さそうな方ばかりで、いいなと思いました」と、それぞれおっしゃっていました。

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米子市としては初めての試みとなった、今回のセミナー&交流会。多くの方が集まり、最後まで熱心に耳を傾け、笑顔があふれる会となりました、講師の皆さんも「思ったよりも沢山の人が集まって、熱心に聞いてくださった」「子連れの方が多くてびっくりしました」と、確かな手応えを感じていたご様子。双方にとってとても良い機会になったことでしょう。

米子市では今年中にもう一度、次回は2015年11月14日に、第2回目の移住セミナーを予定しているということ。すでに本気で移住を考えている人も、将来的に長い目で移住を考えている人も、今回参加して、また別の方から話を聞いてみたいという人も、気軽に足を運んでみてください。

■米子市についてもっと知ろう 移住セミナー&交流会

☞http://www.city.yonago.lg.jp/18703.htm

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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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