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2015年1月17日 伊藤 圭

ものづくりの街、燕三条に生まれたシェアスペース「燕三条トライク」

ものづくりで有名な新潟県燕三条。ここにクリエイターや職人、地元企業など、さまざまな分野の作り手が集まり、新しい価値や商品を生み出す場所として、2014年10月にシェアスペース「燕三条トライク」がオープンした。

その場に居合わせた人とアイデアを共有したり、知合った人と新しい商品を生み出したり、人と人、そして地域とつながって、新しい物が生まれていく、そんなワクワクが広がっていくスペースだ。

ものづくり文化に惹かれて埼玉県から燕三条に移住し、「燕三条トライク」をオープンさせた小山雅由さんにお話を伺った。

 

ユーザー、メーカー、デザイナ―の3者が交わる場所

「燕三条トライク」は、三条市の一ノ木戸商店街、昭栄商店街、中央商店街の3つの商店街が交わる交差点にあり、かつて「とらまつ」という愛称で親しまれていた旧商店。昔は三条の象徴的な建物だったそうだ。そこをオフィスとして使えるシェア空間へと改築した。

小山雅由さん

「『衣食住』をコンセプトにしたスペース、被服室と調理室と工作室を作り、そこに商品の使い手であるユーザーが集まる。集まったユーザーにメーカーは商品を使ってもらい、もっとこういう道具があったらいいね、という意見をデザイナーが形にしていく。ユーザーとメーカーとデザイナー。この三者が交わって新しいものづくり、新しい価値が生まれる場所にしていきたいというのが一番大きなコンセプトです。」

「トライク」という名称は、元々は虎松商店なので「トラが待つ」だったのが、新しくここが出来て「トラが行く」というダジャレだと小山さんは笑う。よくよく聞いてみると、三条市の「三」や、「三つ」の商店街の交差点に位置する所、ユーザーとメーカーとデザイナーの「三者」、オート三輪を「トライク」ということなど、「3」を意味する「トライ」と、挑戦するという意味の「トライ」。そんな思いが込められているということだ。

巨大な本棚が人と人をつなげる

1階はメインのフリースペースの他、和室、キッチン、DIYルーム、被服室、ショップ、暗室、そしてなぜか防空壕がある。2階は広い和室と個別のブース席が用意されている。

トライク内観

ここがものづくりの現場になるように、パソコン、スキャナー、プリンター、FAX、プロジェクター、スクリーン、ラミネーターなどのオフィス用品や、裁断機、レーザーカッター、カッティングマシンなどの工具類も用意されていて、自由に使うことができる。

本棚

1階のフリースペースには「人と人がつながるライブラリー」をコンセプトに、巨大な本棚を設置。ひとり5冊以上の本を置くことを条件に、ひと棚をレンタルできる。どういう本を置くのかは本人の自由。本棚を通して自分をプレゼンすることができる。

本

「後々、こっちに仕事場を作りたいから、本だけ置かせてほしいという人もいます。移住したいクリエイターは多いけれども、東京に比べると仕事が少ないから、2拠点で行ったりきたり。できるだけここで宣伝して、仕事につながるような役目をできたらいいなと思っています。本棚から移住ができそうな気がしています。」

燕三条との出会い

小山さんは埼玉県出身。東京で別の仕事をしていたが、ものづくりに関心があり、日本のものづくりを支援するNPO「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」で活動していた。そこで燕三条の方と会う機会があり、一緒に何かやらないかというお話を頂いたのが、燕三条との出会いだった。

小山さん

2008年から月に一度は燕三条に通うようになり、2009年には「燕三条プライドプロジェクト」という地域ブランドのプロジェクトに関わるようになる。それがきっかけとなり、翌2010年に、大学院に入り直すことになり、先生や仲間とも話をするうちに、考えが変わってきたという。

「技術のある地場産業に、いろんなクリエイターが入っていく場を作り、若いプロダクトデザイナーが、自分のブランドを発信していくような仕組みを作っていくのがいいと思うようになりましたね」

より深く地域に入り込んで研究、活動したいと考え、2011年3月に大学院を休学し、燕三条に移住した。当初は仕事も決まっていなかったが、アルバイトをしながら可能性を探っていった。

物件発見!

2013年10月に現在の物件に出会う。以前は、明治時代から時計や宝石、写真などを扱っていた商店だったところ。秘密基地的な雰囲気があって、ずっと気になっていた。そこが賃貸物件として貸出されることになり決断した。

空き物件

開店資金はクラウドファンディングで集めたのと、三条市の古い建物を活用する助成金をもらうことができた。

「燕三条出身で将来Uターンしようと考えている人が、クラウドファンディングを見て、今後こっちに戻ってくるときの拠点に使いたいという話はすごく多いです。」

ライト

店内のレイアウトは、「燕三条トライク」に賛同したクリエイター達がアイディアを出し合い、実際の改築では、友人の大工さんが手伝ったり、みんなで作業した。細かい設計図を作らずに「ここからここまで壁をぶち抜く」など、イメージとフィーリングを重視して行われた。

情報のハブとなるスペースに

「燕三条トライク」ができて完成というわけではなく、まだまだ展開していきたいことがあるという。

「まず情報の格差をなくして、最先端の情報をここで得られるような場所にしていきたいですね。技術ライブラリを作りたいと思っていて、こっちの技術を東京に届けるような仕組みを作ります。コワーキングスペースやシェアスペースが、これからハブになっていくと思っていて、そこの連携は増やしていきたいです。」

 話し合い

「将来的には、東京側にも同じようなスペースをつくりたいなとも考えています。モノを作って、使いながらためして、その場で販売もできるような場所を作りたいです。さらにそこで燕三条をアピールして移住してくれる人を増やしていきたいなと考えています。」

次々と面白い手を打っていく小山さん。「燕三条トライク」も現状で完成ではなく、昨日はなかったものが今日はあったりと、どんどん進化しているようだ。いろいろ考えてから行動するのではなく、まず動くという小山さんが、次は何をするのか楽しみだ。

クリスマスパーティ

取材日、「燕三条トライク」では会員の方々でクリスマスパーティが行われていたので、参加させてもらった。会員の方同志でも、この日初めて会うという方もいて、この出会いが新しい価値、新しい商品を生み出すと思うと、非常にワクワクする会だった。

取材先

Toraik

営業時間:月〜土 11:00-23:00(日曜日定休・年末年始除く)

住所:〒955-0063 新潟県三条市神明町

電話番号:0256-55-4178

メール:info@tsubamesanjo-style.jp

HP:http://tsubamesanjo-style.jp/

伊藤 圭
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私が紹介しました

伊藤圭

伊藤 圭青森県北津軽郡、旧金木町出身。写真家。 日本写真芸術専門学校を卒業、新聞社を経てフリー。 東京都在住ではありますが、基本的に田舎者。都会を離れ自然豊かな青梅に住んでいる。 アウトドアが大好きで、各季節ごとのキャンプは欠かせない。 2児の父。ライフワークで津軽の写真を撮り続けている。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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