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2015年9月2日 清水美由紀

ミニマムな生き方を知ることで、新しい暮らしの価値感が見えてくるー「小屋フェス」レポート

「小屋って、たのしさでできてる」

メインビジュアルにはそんなキャッチコピーとともに、小屋をDIYしたり、読書や音楽を楽しむ女性の姿。「小屋フェス」のウェブサイトは、軽やかな空気で「小屋」のある暮らしを想像させます。

これまで画一的だった住宅事情に、すこしずつ選択肢が増えつつある昨今にあって、「小屋」という言葉は、シンプルな暮らしを求める人にとって魅力的なのではないでしょうか。

会場となる茅野市のホームページでは「小屋フェス」をこんな風に紹介しています。

『美味しい空気を吸って、野外で音楽を聴きながら、地元のお酒や料理を食べながら、
「小さな暮らし方」を感じる。「自分の暮らし方」を考える。「どこに住むか?」を想像する。
新しい夏フェスです。』

これからの人生をどう生きるか考え、自分の暮らしを獲得するためには避けては通れないこれらのこと。

楽しく感じ、考え、想像したいと思い、フェスへ行ってきましたのでレポートします!

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会場となったのは、長野県茅野市にある尖石縄文考古館の隣、広い空の下緑あふれる草原です。
茅野市の市街地から車で15分ほどのこの場所。東京の景色を見慣れた目には、まぶしいほどの大自然です。

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この草原の向こうが縄文考古館。
茅野市は「縄文のビーナス」「仮面の女神」という、国宝の土偶が発掘された場所で、史跡公園には縄文集落の復元住居があり、竪穴式住居を見ることができます。
この縄文文化の栄えた大自然のある街、それが茅野での小屋フェス開催に至った鍵だったよう。

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フェスというだけあって、アーティストの方の演奏が流れ、会場内はピースフルな雰囲気。
フェスには欠かせないフェス飯も充実していました。

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それぞれの販売ブースも小屋になっています。

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長野県を代表する若手農家がチームを組んだ特別なマルシェ「Agrica BAMBAATA」では
縞模様の入った珍しいゼブラトマトを見せていただきました。

 

会場を中へ進むと、広場にはたくさんの小屋が建てられています。
まず見えてくるのはこの風景。

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地元で間伐した生木を番線で結ぶ方法をベースに、古トタンや木材をつかって小屋を一棟建てる「ライブ小屋ビルディング」というワークショップが行われていて、広場は、開催期間に建てられたいくつもの小屋と櫓で埋め尽くされていました。
その時の場の空気と参加者の積み重ねた時間によって出来上がる小屋は毎日違うので、バラエティにとんだ小屋を見ることができます。

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こちらの小屋もワークショップで建てられたもの。
さらに奥へ進むと、建築家・工務店・クリエイターによる様々な小屋が並ぶスペースに入ります。

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畳を活用した茶室のような「じゃぱみのこや」(左)に、「YADOKARI」が発表したスモールハウス「INSPIRATION」(右)。
中にいる人との比較で、小屋の大きさが分かるでしょうか。

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1ユニット=6畳を最小単位として、縦や横に自由に組み合わせることで手軽に自分だけの空間を作れる「AzitO」。

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室内にはキッチン、トイレ、シャワールームがあり、ロフトで寝られるようになっていました。
こちらがキッチンの様子。コンパクトながら十分な設備です。

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大自然の中に小屋が建ち並ぶ光景は、キャンプ場のようでもあり、ミニチュア世界のようでもあり。
「小屋」という究極にシンプルにした住まいを想像してみることで、これからの自分の暮らしに必要なものを考える。
「住むなら寝室はもっと広い方がいいよね。」
「こんな風に緑を見ながら、ウッドデッキでコーヒーを飲むのって最高だよね。」

一度現在の暮らしから離れた「小屋フェス」の空間に身を置いて、そんな会話を重ねると、無理だとあきらめてしまっていた理想や、本当の自分の心の声に気が付くことができるかもしれません。

清水美由紀
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清水美由紀

清水美由紀フォトグラファー。自然豊かな松本で生まれ育ち、刻々と表情を変える光や季節の変化に魅せられる。物語を感じさせる情感ある写真のスタイルを得意とし、ライフスタイル系の媒体での撮影に加え、執筆やスタイリングも手がける。身近にあったクラフトに興味を持ち、全国の民芸を訪ねたzine「日日工芸」を制作。自分もまわりも環境にとっても齟齬のないヘルシーな暮らしを心がけている。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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