参加者からのQ&A、多拠点なシゴト・暮らし、ハードルは?
―――2地域や多拠点居住の場合、交通費が気になるのですがどうされていますか?
高橋博之さん:僕は会社のミッションとして動いています。2拠点居住や平成の参勤交代をする時に、やっぱりネックになるのは交通費です。これは国や行政、大企業を含めてもっとこれから考えなければならない部分だと思います。
小友康広さん:新幹線の移動は「えきねっと」を活用すると安くなります。座席が空いていれば最大で35%引きになる時もあります。
―――最近気になる地域はどこですか?
小友康広さん:どの地域で何が面白いかよりも、そこで何をしている人がいるかだと思います。石巻や北九州もいいですね。
高橋博之さん:岐阜の石徹白(いとしろ)には、僕と同じ年齢の人がIT企業を辞めて小水力発電に取り組んでいます。彼のビジョンに共感する人があちこちから集まってくる。そこでは学校も自分たちでやろうとしている。地域の自治力はこれから大事です。
―――複数の拠点を動くことで感じる魅力や苦労は?
高橋博之さん:デメリットは息子の成長を見ることができないことですね。僕は昔、花巻で地方議員をやっていて『土』の人でした。『風』の人と『土』の人、どちらも大事だと思います。最近、ある人に「土を知った風の人と、風を知った土の人の融合がある」という言葉を聞いてとても腑に落ちました。『土』の人と『風』の人ならば、時として、お互いの異文化をわかりあえないことがあるけれど、土から風になったり。風から土になった人は、折り合える地点を見出せる。だからそのマッチングが大事で、それをうまくやっている地域は新しい価値を生み出しているような気がしますね。
小友康広さん:僕は2拠点で大変だと思うことはないですね。2拠点のメリットは、交差点に立てること。最先端のIT企業と伝統的な林業、営業と開発、地方と海外、いろんな視点から物事にかかわることで自分の知見が広がります。
―――観光と移住の中間がもっとあれば、よい方向に変わっていくと思うのですが、みなさんの考えをもう少し聞かせていただけますか?
高橋博之さん:被災地がたぶんそうだと思います。岩手の内陸にある一関市は人口10万人で、沿岸にある陸前高田市は2万人です。人口でいえば圧倒的に一関が多いけど、震災後に定期的にコミットしている都会からの関係人口は陸前高田のほうが相当多いはず。陸前高田は人口が少ないけど、定期的にコミットする第2住民みたいな存在があるから、僕はそこに未来の可能性があると思います。
支援という文脈では、一方通行の片想いだから恋愛と同じで長続きしないんです。今までの都市と地方の上下関係や主従関係もそうでしたが、これからは「連帯」を都市と地方のゴールにしたい。都市と地方がそれぞれの強みと弱みを補いあえるような関係にしたいんです。僕はコトとモノ、あるいは物々交換や、コトとコトの交換を地方と都市の人がやっていくことで、五分五分の関係になっていく余地があると思います。
高橋博之さん(話の続き):定期的に都会から地方に来ることで、都会の人は生命力を回復し、再び元気になって帰っていく。そして、地方にとっても地域の課題解決力は間違いなく上がる。いろいろなスキルやネットワークを持つ人がたくさん来て交流することは、お互いのためにもいいと思います。
小友康広さん:僕は多拠点とか自分では意識していないんです。外部環境に適応しているだけだと思うので。インターネットや交通手段の変化と、価値観でつながることができるインフラが整って、「この人いいな」と思ったらヨーロッパでも会いに行ける時代になった。だから、必然的にライフスタイルとして実現できるようになった。多拠点だといろいろな人に会えるし、いろいろな価値観に触れることができます。そういうものを満たしたいと思った結果が多拠点居住という感じではないでしょうか。
生きたいように生きるのがいいと思います。生きたいように生きるために障壁になっていること、例えば仕事というのがそのひとつ。田舎で暮らしたいけれど困難があるならば、それを僕たちは支えたい。それが花巻家守舎のミッションです。チャレンジできるようにしていく。花巻でこんな仕事をやってみたいとか、こんなスキルを持っているとか、僕たちはそれを地元の人たちにつないでいきたいです。
プログラム終了後は、日本列島のテーブルを囲んで楽しい交流会のはじまり。花巻が誇るエーデルワインで乾杯!
金婚漬けのオードブルや、ハヤチネヨーグルトのタンドリーチキンなど、カウンターには花巻にちなんだ「食」がずらり。岩手とつながりのある参加者も多く、会話も箸も進みました。