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2016年6月23日 ココロココ編集部

“まちづくり”を画期的な研修制度でサポート  ~那須烏山市で地域おこし協力隊第1期生を募集中!~

 

里山風景が広がる那須烏山市は、国の重要無形民俗文化財に指定されている「山あげ祭」や、「龍門の滝」や温泉、那珂川の清流に育まれた「烏山和紙」など、豊かな歴史と文化、自然環境に恵まれた栃木県東部の城下町。

那須烏山市では6月1日から地域おこし協力隊員の募集が始まった。今回、地域おこし協力隊と一緒に任務を行う人たちを訪ね、ユニークな募集内容と受け入れ体制、那須烏山市の魅力を伺った。

新たに発足した那須烏山市役所のまちづくり課の職員と、彼らと共同で隊員をサポートする「NPO法人とちぎユースサポーターズネットワーク」のメンバーに直撃インタビュー。地域に根差しつつ、幅広いネットワークで多彩な活動を展開したい方、必見!

 

“遊び場”を一緒に作りたい!

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「正直に言えば、街のなかに遊び場が欲しいなあって思ったんですよね。行政の一員としては、問題発言かもしれませんけど!?」
そうユーモアを交えて話すのは、那須烏山市まちづくり課の佐藤篤さん。市としては初めての試みとなる地域おこし協力隊募集の“いいだしっぺ”だ。街なかで、働く場所・住む場所・遊ぶ場所の3つを完結できないかと思ったのが、そもそもの提案のきっかけだった。

佐藤さん
「新たに場づくりを始めようにも、地元にいる同世代の仲間はすでに仕事や家庭を持っているので、一念発起して事業を興せる人は、なかなか見つかりません。でも、全国各地を見渡してみると、創造力に満ちあふれた人たちが地域に移り住み、新しいことに精力的に挑戦しています。那須烏山にも、そんな人たちに来てほしい!と思ったんです。」

 

本格的な研修制度で持続可能な活動を

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今回の募集では、市の地域資源の発掘・開発・販売支援や、空き家の活用、駅前の活性化などに取り組み、任期終了後も、地域で就労・起業する意欲のある人材が求められている。副業や、2,3人でのグループ応募も可能。そして、なんと言っても任期終了後の生業作りのための研修が受けられるのが、最大の特徴だ。全国の過去の事例から、最長3年間の任命期間だけでなく、4年目を見越した出口戦略の必要性を感じ、導入を決めたという。

佐藤さん
「他の地域の協力隊員から『3年後も、ここにいられるかどうかは正直分からない』という声を聞く機会があり、残りたい気持ちはあっても、生業を作るための長期的な展望やノウハウを隊員本人が見出せないことが、協力隊の抱える課題だと気づかされました。そこで、人材育成のためのスキームを作ろうと動き始めたんです。」

まちづくり課と一体となって研修制度を担うのは、宇都宮を拠点とする「NPO法人 とちぎユースサポーターズネットワーク」。若い人たちの力で地域を活性化させることを目的に、企業・大学・行政をはじめとする幅広い組織・個人と連携し、イベントやセミナー、トークセッションを開催。インターンシップや新規事業立ち上げの資金調達などを通して、起業を目指す若者を支援している。

「NPO法人 とちぎユースサポーターズネットワーク」の古河大輔さんは、研修・人脈・相談の3つの柱で、隊員を支えたいという。「社会人経験と、起業して事業を継続する能力は別物ですし、都会と那須烏山では、できることが違います。その間に立って、ローカルで事業を展開するために必要な知識や技術、ネットワークを提供したいですね。」

 

開かれた環境で人と人を繋げる

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―今回、市役所が民間団体に協力を要請した経緯は?

佐藤さん
「隊員の皆さんが1年、2年と活動を続けていくなかで、必ず市役所のメンバーには相談できないことが出てくるはずです。そんな時に受け皿になってくる第三者がいれば、風通しが良くなり、僕たちにはない視点で問題を解決できると思います。」

古河さん
「同時に、面白い事業を始めても、外の人たちと繋がらなければ、最終的には続かないですよね。芽が出るタイミングで地域外にも発信し、盛り上げることができれば、可能性は爆発的に広がります。そういった意味でも、『ユース』の幅広い人脈が役立つのではないかと期待しています。」

隊員の着任前に、想定される「失敗」や「障害」に対処。まちづくりを街のなかだけで完結させず、開かれたネットワークで進めていく環境が整備されている。

 

那須烏山市ならではの魅力と可能性

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近年、那須烏山市では、空き家情報を収集・公開・利用促進する「ハウスブックプロジェクト」や地元農産物の生産・加工・販売を行う「烏合の手」、那須烏山市のコミュニケーションデザインチーム「glabo(グラボ)」、観光ツアーを主催する「クロスアクション」など、20代から40代が中心となった起業活動や市民団体の立ち上げが活発化している。

宇都宮市から那須烏山市に移り住んだ「とちぎユースサポーターズネットワーク」のプログラムコーディネーター、渡邊貴也さん(写真:左)は、那須烏山市の魅力をこう語る。

渡邊さん
「宇都宮市は人口51万人の都市なので、異業種交流会で市内の団体を網羅的に集めることは、ほぼ不可能ですが、人口3万人弱の那須烏山市では、住民同士の距離がとても近い。行動を起こせば響く環境なので、まちづくりには最適な場所だと思います。今、何かしらの団体に所属しつつ、点として動いていた市民同士がどんどん繋がっています。」

古河さん
「アイデアを持って行動している若手が、これだけ揃っていることには驚かされますね。とにかく面白い3年間になると思いますよ。こんな人になりたいという理想像や、実現させたいことの具体的なイメージを持っている方に、是非来てもらいたいです。」

佐藤さん
「夕暮れどきに家の外に折りたたみ椅子を出してビールを飲んでいると、必ず近所の人たちが集まってくるんです。そんな田舎ならではの時間を楽しみつつ、それぞれの力を持ち寄って、3人にしかできない“まちづくり”を実現させてもらえたらと思っています。」

地域内外の多彩な人とのコラボレーションを通して、どのような化学反応が生まれるのか。三者三様の経験や夢に、大きな期待が寄せられている。

 

那須烏山をさらに深く知るために

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現在、様々な市民団体が「那須烏山を元気にしたい!」という志を持って活動しています。実際に市民活動されている方とお話ししてみませんか?

6月25日(土)co-ba shibuyaにて「地域の場づくり論―ニア東京・栃木で始める新しい仕事のイロハ―」が開催されます!
今回、記事に登場してくださった皆さんも、那須烏山からいらっしゃいます! この機会に、ぜひ会いに来ませんか?

取材先

那須烏山市役所まちづくり課・NPO法人とちぎユースサポーターズネットワーク

那須烏山市役所 まちづくり課(写真:左)
まちづくり課は、2015年(平成27)年に策定した「那須烏山市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づく政策・施策の着実な推進と新たな行政課題に的確に対応するため、2016(平成28)年に新たに新設されました。市民協同によるまちづくりの推進を担う「まちづくりグループ」と、定住事業の充実を担う「定住推進グループ」の二つのグループで運営しています。
一日一工夫一改善による効率的な行政経営と経営感覚を養うことと、官民連携した新たな制度の構築を目指し、「民間と行政が知恵を出し合い、共に公を担う意識の醸成」が産み出されるよう日々取り組んでいます。

WEBサイト:http://www.city.nasukarasuyama.lg.jp/
定住促進WEBサイト:http://www.nasukara-teijyu.jp/

NPO法人 とちぎユースサポーターズネットワーク(写真:右)
地域×若者=とちぎの新しい物語をキーワードに、地域と若者をつなぎ、地域の若き担い手の育成と地域の課題解決/活性化をプロデュースしている団体です。地域で活躍する会社やNPOに若者を派遣し、組織の課題解決に取り組む実践型インターンシップ「GENBA CHALLENGE」や、若者が社会をよくするためのアイデアを形にするスタートアッププログラム「iDEA→NEXT」など、若者の社会をよくするチャレンジの場づくりに取り組んでいます。
近年は都市部在住者が栃木県に通いながら地域プロジェクトへ参画する「始まりのローカルコンパス」をはじめ、地方での居場所づくりや多様な働き方をテーマとした事業に携わっています。

WEBサイト:http://www.tochigi-ysn.net
プログラムWEBサイト:http://sozo.tochigi-ysn.net

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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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