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2020年1月30日 大川 晶子

『那珂川町日帰り体験ツアー「農」×「食」』に参加して来ました!【ツアーレポート】

“里山に移住して農業に携わりたい”と思う方は多いはず。迷うのは、地域や農業の始め方。そんな方にぴったりな、美しい里山・栃木県那珂川町に移住し、農業に携わる先輩と触れ合えるツアーが2019年11月16日(日)に開催されました。そのツアーの様子をレポートします。

出発!那珂川町での「農」と「食」リアルな里山暮らしを道中でも紹介

このツアーの特徴は、那珂川町での農業や暮らしを体験できること。また、「農」と「食」に焦点を絞って、那珂川町の魅力に触れます。
参加者に今回のツアーに申し込んだ理由を伺うと、「移住と食、興味のある分野が組み合わさったツアーなので」、「農業が気になっている」と、特色がはっきりしたツアーのため、参加しやすかったようです。

「東京」駅から那珂川町までは車で約3時間。行きのバス車内では、東京から那珂川町にUターンし無農薬・無化学肥料の農業に携わる「ヤヤキタ農園」車庄三さんのインタビューや、那珂川沿いで毎月1回開催される手作りや地場ものが並ぶマルシェ「ナカマルシェ」の様子がDVDで紹介されました。

おしゃれな雰囲気の「ナカマルシェ」

 

「馬頭農村塾」での「はたけ de ツアー」からスタート

訪れたのは、紅葉シーズンの初め。行楽客で道路が渋滞していたため、スケジュールを変更し、まずは農業体験ができる「馬頭農村塾」へ向かいました。那珂川町の樹々も色づいていて、とても綺麗な景色でした!

馬頭農村塾

大自然に囲まれた里山環境にある「馬頭農村塾」。古民家などを利用して、農業体験や都市・農村交流の場として活用されています。

NPO法人「馬頭農村塾」は、田舎暮らしや農業を体験できる施設。こちらで有機農家「陽だまり農場」を営む浜中陽平さん・まどかさん夫婦、そして道中DVDで紹介されていた「ヤヤキタ農園」の車さんに、那珂川町での就農についてお話を伺いました。

陽だまり農場

右から、「陽だまり農場」の浜中さん夫妻、「ヤヤキタ農園」の車さん

浜中陽平さんは、和歌山県出身。大学卒業後、農業に興味を持ち、農業学校や農家での研修を経て、新規就農しました。土作りから販路確保まで、浜中さんが体験した新規就農のステップを参加者に説明。参加者は、種はどうやって取るのかや農家の実情など、気になる点をざっくばらんに質問していました。

陽だまり農場の浜中さん

浜中さんと、穏やかな日を浴びて背中でぐっすり眠る娘さん

「陽だまり農場」では、約1町の広い敷地に、約60品目120種類も栽培。中には、スティックセニョールやルヴァーブをはじめ、珍しい野菜も数多くあります。畑を歩きながら、それぞれの野菜の特徴や育てる上での注意点を説明。参加者は栽培の大変さを実感していました。
途中、浜中さんから「食べてみますか?」と差し出された、もぎたての野菜には感動! 開口一番「甘い」と、参加者は有機農業で育った野菜本来の旨味を味わっていました。

野菜収穫体験

浜中さんの指導を受け、野菜の収穫体験をする参加者の皆さん

 

収穫した野菜をその場で料理して「いただきます!」

収穫をした野菜は、昼食の材料に。皆さんで協力して収穫したわさび菜やブロッコリーなどをサラダにして昼食作り。作業をすると皆さん仲が深まり、会話が弾んでいました。
サラダのほか、品種が違うジャガイモやサツマイモの天ぷらや具沢山の味噌汁、炊きたてのご飯がこの日の献立。天ぷらには、浜中さん自家製の大豆を生かした味噌をつけていただきました。

野菜たっぷりの料理

大根やカーボルネ(黒キャベツ)など珍しい天ぷらも

野菜は採れたてが一番! 何もつけなくても野菜の旨味で箸が進みます。浜中さんの娘さんも、ブロッコリーやにんじんをパクパク。子どもにどのように育ったかわかる野菜を食べさせられるのは、とても羨ましいことですね。
皆さんで食卓を囲みながら再び、農業についての質問タイムに。那珂川町は冬寒いものの、雪は少なく、ハウスがあれば通年で野菜を栽培することが可能とのこと。また「馬頭農村塾」がある旧馬頭町エリアは山に囲まれているため、風が強くないのもメリットだそう。
販路についても、那珂川町からは首都圏に出荷しやすいのが強み。浜中さんや車さんは、レストランに届けたり、有機栽培について理解してくれる方にネット販売しているそうです。

キウイ収穫

袋いっぱいにキウイを収穫しました

最後は、キウイを収穫してお土産に。「毎日が収穫だったらいいのに」と冗談を言いながら、収穫の喜びも体験して、大満足の様子でした。

 

住むとなったら? 住まい手募集中の土地・空き家紹介

続いては、近隣の空き家見学へ。那珂川町には歴史ある古民家が点在していますが、空き家が多くなっており、その対策が課題に。町の美しい景観を維持していくためにも、空き家バンクの整備が進められています。

空き家見学

この日見学した空き家は、手前の畑と奥の住宅・納屋など全てで約600万円とのこと

この日見学したのは、畑と納屋付きで農家民宿を開けそうなほど広いお宅。空き家になって間も無く、時折手が入っているそうで、綺麗な状態でした。日当たりも良く、皆さん好感触。暮らしをイメージして、最寄りのスーパーなど質問していました。

那珂川町いきいき田舎暮らし体験住宅

「高手の里」の一画にある「那珂川町いきいき田舎暮らし体験住宅」。薪ストーブがあります

また、町有地を無料で20年間貸し出す分譲地「高手の里」と「那珂川町いきいき田舎暮らし体験住宅」を見学しました。
「那珂川町いきいき田舎暮らし体験住宅」は、1泊1,000円、3日以上で、那珂川町への定住を考えている方が利用できる体験住宅。ゆっくり滞在することで、那珂川町の雰囲気や気候を肌で感じるとることができます。

八溝山まで見渡せる気持ちの良い環境の中、この日案内してくださったコーディネーターの戸松淑朗さんから「星空も綺麗ですよ」と聞くと、参加者から「体験住宅に泊まってみたい」との声が。
こちらの体験住宅は「高手の里」ホームページから申し込めますので、ぜひご覧ください。

 

お買い物はどこで? 地元のスーパー見学

そして、暮らしに欠かせない食料品や日用品の品揃えのチェックへ。地元の方が多く利用するというスーパー「かましん」。取り扱い商品が豊富で、クリーニング店や衣料品店も併設していて便利そうです。地場野菜のコーナーもあり、国産のキクラゲをはじめ、いもがらなど、珍しい野菜も並んでいました。

かましん馬頭店

スーパー「かましん馬頭店」。9:30から21:00まで営業

野菜に関しては、「スーパーではなく直売所で買うことが多い」と戸松さん。実は、戸松さんも東京からの移住者で、那珂川町に暮らし始めて4年目。那珂川町の方はシャイでも優しい方が多いので、気張らなくてもすぐに馴染めたそうです。
那珂川町の魅力を伺ったところ、直売所の野菜と蕎麦が美味しくて、蕎麦は東京では食べられなくなったとのこと。必要なものの買い物はネットで済み、不便はないそうです。また那珂川町は肌がツルツルになるアルカリ性の温泉でも有名で、温泉に良く行き、日々の疲れを癒していらっしゃるそう。那珂川町での暮らしを楽しんでいらっしゃることが伝わってきました。

 

道の駅「ばとう」で地場産品をお買い物

最後に、道の駅「ばとう」の直売所で野菜や特産品をお買い物。旬の野菜や果物をはじめ、名産の手づくりこんにゃくや、那珂川町産茶葉で作った紅茶など、たくさんお買い物をした皆さん。帰宅後も那珂川町の魅力を味わうことでしょう。

道の駅「ばとう」

道の駅「ばとう」には直売所のほか、地元の食材を使った料理を味わえるレストランやジェラート屋さんも

地場野菜

店頭に並ぶ新鮮な地場野菜の数々

 

今後も開催される「那珂川町日帰り体験ツアー」、気になる方は……?

那珂川町には、この日訪れることができなかった「馬頭広重美術館」や「乾徳寺」など、観光スポットも充実。那珂川町の自然の恵を味わうことができたツアーでした。実際に農家の方と話し作業を体験することで、栽培の大変さと収穫の喜びを味わえるのは、移住と就農を考える方にとって、貴重な経験ですね。

栃木県那珂川町では今後も、暮らし・仕事情報を知れるイベント・日帰りツアーの開催を予定しています。詳細は下記ページをご覧ください。
2020/3/21(土):テーマ春の那珂川で感じる「農」「食」「なりわい」

取材先

栃木県那珂川町

栃木県那珂川町(なかがわまち)は、栃木県の東部に位置し、北を大田原市、南を那須烏山市、そして東を茨城県と接する人口約17,000人の小さなまちです。まちの中心部である「那珂川」沿いの平地と、美しい里山や山間地に集落が点在しています。

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私が紹介しました

大川晶子

大川 晶子1986年、静岡県三島市生まれ。エディター・ライター。 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科(近代建築史専攻)を卒業し、住宅やインテリア雑誌の編集部を経てフリーランスとして活動しています。たくさんの人・もの・ことに触れてその魅力を伝えることで、一人でも多くの方の暮らしをより豊かなものにできたらと思っています。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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