日立市・高萩市・北茨城市・常陸太田市・常陸大宮市・大子町の6市町で構成され、美しい里山の風景が残る茨城県北地域。この地域には、まだまだ知らない人・場所・コトがたくさん眠っています。
そんな茨城県北や地域の未来をみんなで一緒に考えたい!との想いから、茨城県北の“さとやま”に暮らす「ナカ」の人と、茨城県北に想いを寄せる「ソト」の人が、一緒に地域の未来を考えるイベントが「いばらきさとやま未来会議(以下、未来会議)」です。
今回「未来会議」の会場となったのは、地域に根差したユニークな宿泊プランが話題の「里山ホテル ときわ路」。当日、ホテルに到着すると既に多くの人が会場にいてイベント前から熱気が感じられました。
常陸太田市地域おこし協力隊で「未来会議」の実行委員を務める竹村幸耶さんの開会のあいさつで始まりました!
まずは、近くに座っている人同士で小さなグループになり、お互いに簡単な自己紹介などを行うアイスブレイクタイムが設けられました。最初は皆さん緊張気味でしたが、いつの間にか笑顔で話す方がどんどん増えていって、会場は和やかな雰囲気に。
「自遊人」の岩佐十良さん基調講演
岩佐十良(とおる)さんによる基調講演が始まりました!岩佐さんは、温泉や食に関する記事が人気の雑誌「自遊人」を2000年に創刊。その後、日本の主食である“米”を学ぶため、活動拠点を東京・日本橋から新潟・南魚沼に移し、2014年には新潟県大沢山温泉に旅館「里山十帖」をオープンしました。
岩佐さんが「共感メディア」と表現した「里山十帖」の、オープンまでの経緯について触れ、その考え方のキーワードとして挙げたのが「デザインシンキング」です。それは、現在でも主流とされる「ロジカルシンキング」では不可能と思われること(旅館でいえば稼働率や客単価の達成)を、「デザインシンキング」から生み出された新たな価値によって実現していくこと。そして、茨城県北でも不可能と思われていることを実現できるはずだ、とメッセージを送りました。参加者の皆さんも、茨城県北地域をさらに盛り上げていくにはどうしたらいいのか、そのヒントをつかもうと真剣に聞き入っていました。
続いて、「茨城県北に可能性はあるのか?」をテーマに、岩佐さんと「里山ホテル ときわ路」取締役の藤野龍一さん、アーティストで「茨城県北芸術祭」にも関わるミヤタユキさん、日立市を中心に活動する地域コミュニティ「ヒタチモン大學」学長の菅原広豊さんをパネラーにお迎えしてトークセッションが始まりました。
パネラーの方がそれぞれの活動から感じる、茨城の魅力や課題について話が上がる中で、藤野さんが語った「真似をせず無理をせず」という言葉にはミヤタさんや菅原さんも共感した様子。また、震災を経験して、茨城県の助け合う県民性を再認識したというミヤタさんは、「良いところ悪いところはどこの地域でもある。大事なのはどのくらいの人が面白がることができるか」という関わる人の数と意識について、そして菅原さんは自身の活動を通じて感じた「溜まり場」やコミュニティの重要性についても語っていました。さらに、地域の魅力を自分たちが信じていくことの重要性について岩佐さんから話があると、耳を傾ける参加者の多くがうなずいていた様子が印象的でした。
分科会に分かれて未来を考える
次はテーマ別に設定された分科会に分かれて茨城の未来を考えます。
■第1分科会
第1分科会は地域の魅力を活かした新たなビジネスプランを考え、ブラッシュアップしていく「地域の魅力を仕事にする」がテーマ。
この第1分科会では、「里山ホテル ときわ路」の藤野さん、「greenz.jp」プロデューサーの小野さん、「(株)スマートデザインアソシエーション」代表取締役の須賀さんらを迎えて同じ会場で先に行われていた「さとやまビジネスキャンプ」に合流するかたちで、今県北に足りないもの・イケていないもの、そして県北の良いところの洗い出しを行い、それらをアイデアの力で掛け算させて、ビジネスチャンスを探すワークショップが行われました。
古民家を動物と過ごすことができるシェアハウスにするプランや県北の食材が楽しめる電車居酒屋のプランなど、地域の魅力を知ってもらう、十人十色のビジネスプランが生まれました。どれも実現して欲しいワクワクするプランばかり。ここで生まれたつながりをもとに、今後の展開にも期待したいですね。
■第2分科会
第2分科会テーマは「地域の魅力を発信する」。「茨城県北芸術祭」の開催により盛り上がる県北地域の魅力発信を行いました。
休日を楽しむためのおでかけプランを提案・シェアするWEBサービス「Holiday」を提供する「ホリデー株式会社」の岩楯さんを講師に、そしてアーティストのミヤタユキさんをゲストに迎えて、実際に「Holiday」アプリを使ったワークショップが行われました。それぞれのグループが観光ガイドブックや「茨城県北芸術祭」のパンフレットを資料に、「ソト」の人から見た県北の魅力あるスポット、「ナカ」の人がおすすめのスポット、そして「茨城県北芸術祭」の作品を組み合わせて、オリジナルのおでかけプランを作っていきます。
グループごとの発表では、秋の県北女子旅プランや、県北地域の海、滝、ダム、川など水にこだわったプランなど、バラエティに富んだおでかけプランが提案されました。なかには、前菜のバイキングが付く地元に愛されているラーメン屋さんの情報など、一般的な情報誌には載っていないものもあり、他の参加者からも、え!地元にこんなステキお店があったんだ!?今度いってみよう!というような声が聞こえてきました。「ナカ」の人が知っている情報と、「ソト」の人が感じる地域の魅力が合わさることで、発信する情報や方法もより魅力的になっているようでした。
■第3分科会
そして第3分科会テーマは「若者×茨城県北~地域との関わり方を考える~」。茨城県北地域で新しい取り組みを検討しているゲストと共に、一緒に具体的な活動内容を考えていきます。
第3分科会は、地域おこし協力隊など茨城県北地域で活動する若者有志による企画です。さらにゲストも3人迎え、全6人のプレゼンターが自分が考えている新しい取り組みをプレゼンテーション。その後、参加者は興味のある取り組みを選び、プレゼンターと共に今後の具体的な活動内容を検討しました。
日立市で立ち上げたローカルメディアで取材やライターをしてくれる人が欲しい、常陸大宮市でつくる子ども食堂の企画に賛同して欲しい、といった具体的プランをもとにした話し合いも。多くの参加者が、プレゼンターの想いに共感し、みんなでやってみよう!という気持ちになっていたのが印象的でした。ここで考えたことを実現していくことが、茨城県北地域の未来へとつながりそうです。
分科会での気づきを振り返り&シェアしよう
分科会の後は、全体会で各分科会の報告が行われました。地域の魅力を新たに発見できた、県北の為に何か次につながる一歩になった、という声も参加者の人たちからも多くあって大変盛り上がりましたね!
その後に参加者のみなさん同士で4、5人のグループになって、今日参加してみて気づいたこと、参加して得たこと、今後やってみたいことを話し合って共有していました!県南から参加した人からは、県北の良いところは今、何が必要なのかという論点がしっかりと上がっているところが素晴らしく刺激を受けた、との声もありました。
最後に岩佐さんからは、「今地方にとっては、やろうと思えば何でも始めていける、10年に1回のチャンスが来ていると思います。地方同士がいろいろなところで盛り上げていって日本の中心は地方にあるんだ、ということを国内外に伝えていきましょう。」とお話がありました。岩佐さんは、参加者の皆さんや茨城県北に熱意、やるぞ!という気迫を感じてくださったそうです。
さらに県北振興課の澤田さんから、県北振興事業についてのお話もありました。
その後は、希望者が参加する懇親会も開かれ、地元でとれた食材のBBQを頂きながら、話したりなかったこと、これからの具体的な活動に向けた話などアツい議論が続いていました。
未来会議は翌日も続く!茨城県北フィールドワーク
未来会議の翌日、常陸太田エリアと常陸多賀エリアをバスで巡りつつ、「茨城県北芸術祭」作品を鑑賞するフィールドワークを開催。盛り上がっている茨城県北地域を、実際に見て感じていただきました。
午前中は、常陸太田鯨が丘エリア。未来会議にゲストとして参加いただいたミヤタユキさんの作品説明を聞きながら散策します。やはり説明があると、より作品について知ることができるとの声も。
鯨が丘エリアの各所で目立っていたのは、「サインズ オブ メモリー2016:鯨ケ丘のピンクの窓」という作品のピンクの窓です。エリア全体が作品のようでした。
ほかにも、1日の行動を21の色に置き換え、時間軸に沿って記録した「Life Stripe」や、物々交換をしながら地域の空き店舗をみんなの居間に変えていく「リビングルーム」などを鑑賞しました。名物の「くじらやき」もいただいて大満足。
その後、鯨が丘エリアからすぐのところにある「手打ちうどん いづみや」さんで昼食タイム。地元で人気の極太うどんを味わいました。
鯨が丘エリアを後にし、続いては常陸多賀エリアへ。常陸多賀駅前商店街を散策しながら作品を鑑賞します。
常陸多賀エリアの街路樹や看板など街のいろいろなものをニットで包む「ニット・インベーダー in 常陸多賀」や、古い家電を新たな電子楽器として蘇生させた「エレクトロニコス・ファンタスティコス! in 日立」などを鑑賞。このエリアは作品同士の距離が近いため移動に時間がかからず、コンパクトに鑑賞できるのが魅力でした。
また、元商店をリノベーションした「街角縁側 かどや」も見学しました。かどやには、カフェやパン工房に加え、オフィスもあります。
ここに入居しているデザイン会社の「Digital Dish」高橋さんとお話しもでき、常陸多賀での暮らしなどについてうかがいました。常陸多賀で暮らすメリットだけでなくデメリットもお話しいただき、今後の茨城県北を考えるヒントを得ることができました。
今回は2エリアのみのフィールドワークとなりましたが、参加者の皆さんからは、ぜひ他のエリアも行ってみます!との声もあり、茨城県北の魅力を感じることができた1日でした。
130人を超える参加者が集まった「いばらきさとやま未来会議」
茨城県北地域について様々な思いをもった「ナカ」の人と「ソト」の人、そして実際に各地で活動しているゲストの方々が集まり話し合った今回の「未来会議」は、参加した皆さんにとって充実したイベントになったのではないでしょうか。茨城県北地域の盛り上がり、感じていただけましたか?