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2016年12月13日 山田智子

伊勢神宮と深い縁のある三重県明和町が産学官連携で取り組む日本酒づくり

伊勢神宮に仕えた斎王ゆかりの地、三重県明和町。伊勢市と松阪市に挟まれた小さな町が、新たなブランドづくりに挑戦している。産学官が協同で取り組む「日本酒プロジェクト」。

三重県が開発した酒米を町内で育て、明和町と伊勢市の酒造メーカーで醸造する。田植えや収穫、醸造などに皇學館大学の学生が参加して進められ、間もなく最初のお酒が出来上がる見込みだ。

明和町と皇學館大学はなぜ日本酒づくりを始めたのだろうか。 このプロジェクトの産、学、官、それぞれのキーマンにお話を伺った。

日本のこころを伝える産学官のプロジェクト

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伊勢神宮に仕えた斎王の都「斎宮」が存在し、伊勢神宮との縁が深い三重県明和町。歴史あるこの町で今年、日本の文化の継承を学び、日本人のこころを実感するプロジェクトが始まった。明和町と地元企業、そして隣接する伊勢市にある皇學館大学の産学官連携で日本酒開発を行う「神都の祈り」プロジェクトだ。

「皇學館大学は神道の大学。学生が日本の文化、特に農業を学ぶ機会として、田んぼを借りて学生が米づくりをするというプロジェクトが検討されていました。地元の松幸農産や農家の方に協力していただいてやっていこうと進んでいた中、ちょうど明和町さんが町をPRできるような新しい特産品の開発を考えておられると聞きました。米づくりを学生がやって、出来たお米をお酒にしようと明和町さんに提案したところ、それはおもしろいからぜひ産学官の連携でやろうと、このプロジェクトがスタートしました」(皇學館大学/千田先生)

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三重県が開発した酒米「神の穂」を明和町内の水田で作り、伊勢神宮ゆかりの地で醸造。約2600本の日本酒を造り、ネーミングやラベルのデザイン、販売戦略の立案は学生が行う。田植えや収穫、お酒の仕込み、販売などプロジェクト全体に関わる学生が16名、豊作を祈る祭祀を執り行う際には祭式研究部や雅楽部も参加するプロジェクトは、田植え、稲刈り、仕込みと、地元企業の協力のもと順調に進み、いよいよ年内には第1号のお酒が誕生する。

 

ヒヤヒヤの連続。初めての酒米づくり

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2016年4月27日、春のあたたかい日ざしの中、豊作を願う神事を行った後、明和町の田んぼで神の穂の田植えが行われた。「学生さんたちはわいわいと楽しそうにやっていました。お祭りも、学生さんが一から全部準備するのは初めてだったそうで、失敗もありましたけどずいぶん良い経験になったんじゃないかな。」と温かいまなざしで学生を見守るのは、酒米を栽培した農業生産法人松幸農産の松田さん。25年間おいしいお米を生産してきた松幸農産だが、過去に酒米を育てた経験がなかったため、「不安はあった。」と振り返る。

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「今だから言いますが、最初は種もみの確保が大変だったんです。『神の穂』と言う一般的に流通していない種なので、地域の農協さんに協力してもらって、必要最小限の量だけを用意してもらったんです。」ところが、育てた経験のない品種ということもあり、一部苗づくりに失敗をしてしまう。「まずいと思い、無理矢理お願いし、追加の種もみをいただきました。すぐに作り直して、なんとか間に合わせたんです。苗が出来なかったら、この計画は全て終わりですから、あの時は本当にヒヤヒヤしました。」

酒米を育てる上でもっとも重要なのは「お米を割らないこと」。「酒米を作っている方に聞いてみたところ、米が割れてしまうと精米ができないから、とにかく割るなと言われました。割らないためには、きっちり水をいれ続けるしかないんですね。温度が上がったらすぐ水を足してと、すごく気を遣いました。今年のうちの田んぼで一番手間がかかりましたね。」苦労話をニコニコと話す松田さんの表情には「手がかかる子ほどかわいい」という言葉がぴったりだ。

 

若い人たちに日本酒の良さを知ってほしい

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2016年9月17日に収穫された神の穂は、2つの酒蔵で醸造が行われる。そのひとつが明和町に唯一残る酒蔵「旭酒造」だ。明治8年創業、今年で141年目を迎える老舗酒造会社で、櫛田川の伏流水を使い、昔ながらの製法で酒造りを続けている。伊勢市にある酒蔵「伊勢萬」では11月6日に仕込みを行い、年内には完成予定。

一方、旭酒造では2017年1月初旬に仕込みを開始し、2017年3月には「神都の祈り 齋王」として発売予定だ。「良い米ができましたよ。学生さんが田植えや稲刈り、土壌の水質調査をして、酒米として、お酒に合う良いお米ができました。自分たちが努力して作った米でおいしいお酒ができたら最高ですよね。ここから責任重大です。」と話すのは旭酒造6代目の西山さん。

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「今は日本酒を飲む若い方が少なくなっていますが、このプロジェクトを通して、伝統があり、世界にも誇れる日本酒を知ってもらうことが僕らの使命であると思っています。実際に酒造りを体験し、そのおもしろさをどんどん発信してほしい」と期待する。「この明和町は伊勢神宮、伊勢物語などにもゆかりのある地。そのことを日本酒を通して全国にアピールしたい。さらにもう少し広げて世界に日本酒の良さを知ってもらいたい。」

 

ストーリーを味わうお酒

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それぞれが思いを持って、大切に襷をつないできた「神都の祈り」もいよいよ完成間近。 千田先生は「お酒そのものを販売ためのお酒というよりは、それを作ってきたストーリーを味わうお酒を目指したい。関わった人それぞれにストーリーがあって、それを聞いて共感した人に飲んでもらえるお酒にしたい」と話す。

単にお店で買って飲むのと、農作業、醸造作業に関わった人たちから話を聞いて飲むのとでは味わいは変わる。まして自分が作業に関わったお酒であれば、格別なものになるだろう 「参加した学生の中には、1年生、2年生の子もいます。彼らが成人した時、初めて口にするのが自分たちで造ったお酒っていいと思いませんか。」

そもそもお酒は、人と人とをつなぐコミュニケーションツールとしての役割を持つ。間もなく誕生する日本酒「神都の祈り」、そしてこのお酒にまつわるストーリーも、お米やお酒、日本文化を知るツールとして、飲む人と明和町をつないでいくことだろう。

 

「日本酒プロジェクト」について、さらに詳しいお話を!

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2016年12月15日(木)19時から、東京で明和町取材のイベントが開催されます。

イベントでは、日本酒プロジェクトの千田さんから詳しいお話しがあるとともに、伝統工芸の技術を使って、今の生活に合わせた商品を作り、社会に提案されている黒田さん、そして、茨城県里美地区の地域おこし協力隊を卒業後、地域に残り、起業して地域を元気にする活動に精力的に取り組んでいらっしゃる長島さんの御三方にお話しを伺います。どうぞ、12月15日(木)は三重テラスまでお越しください。お待ちしております!

お申込みはコチラまで!
https://goo.gl/forms/uR5vYd7z9IIevI7p2

・日本酒が好きな方 ・人と人をつないで、新しいプロジェクトを進行することに興味のあるかた ・三重県とはこれまでご縁が無かったけれど、気になる!という方も!

皆さまお誘いあわせの上、ご来場ください。お待ちしております。

取材先

旭酒造株式会社

住所:三重県多気郡明和町山大淀1767

http://www.asahisyuzou.jp/

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山田智子

山田智子岐阜県出身。カメラマン兼編集・ライター。 岐阜→大阪→愛知→東京→岐阜。好きなまちは、岐阜と、以前住んでいた蔵前。 制作会社、スポーツ競技団体を経て、現在は「スポーツでまちを元気にする」ことをライフワークに地元岐阜で活動しています。岐阜のスポーツを紹介するWEBマガジン「STAR+(スタート)」も主催。 インタビューを通して、「スポーツ」「まちづくり」「ものづくり」の分野で挑戦する人たちの想いを、丁寧に伝えていきたいと思っています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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