南房総市の水と館山市の銘菓でおもてなし
房総半島の南端に位置し、山と海、そして温暖な気候と恵まれた環境の南房総市と館山市。都心部から車で2時間程度と交通の便も良いことから、二地域居住にちょうどよい地域として注目を集めています。中でも南房総市は、2017年度の総務省による地方への拠点設置を促す「お試しサテライトオフィスモデル事業」に採択され、実施されることが決まっています。
今回の参加者は、40代以上の男性を中心に若い女性までの幅広い世代から20名ほど。リフレッシュできる環境を、また新たな働き方の可能性を求めて、両市に興味を示していることが伺えました。
参加者には南房総市の水と館山市にある「房洋堂」の房総銘菓「花菜っ娘(はななっこ)」が振舞われました。
南房総市は可能性を秘めたフロンティア
まずは、南房総市の紹介から。相川健吾係長と渡辺秀和主事から、南房総市について美しい風景のスライドとともに説明がありました。南房総市は、内房エリアと外房エリアで表情が異なります。内房エリアは静かな海で、山側は里山風景が広がり、一次産業が盛んです。一方、外房エリアの海は波が立っていて、サーフィンや海水浴などマリンスポーツを楽しむ人で賑わいます。また、陸地には温暖な気候を生かした花畑が広がります。 最後に「南房総は自然豊かなエリアですが、逆に言えば必ずしも便利とは言えない部分もたくさんあります。移住まではいかなくても、二地域居住というスタイルで南房総というフロンティアを開拓しにきてください」と渡辺さん。「南房総市の環境を知るには、実際に来て歩いて体感するのが一番なので、ぜひ足を運んで地元の人や先輩とつながってください」とメッセージが贈られました。
館山市は海を生かしたライフスタイルを提案
続いては、館山市。移住促進PR動画「館山暮らしのその先に」とともに、行縄俊一係長と池田英真主任学芸員から説明がありました。PR動画には、ゲストの土屋裕明さんをはじめとした先輩移住者のコメントや、館山への移住を支援するNPO法人おせっ会の取り組みがまとめられていて、館山市への移住によって、希望の暮らしに近づける点がアピールされました。
館山市では「館山スタイル」と題し、“海を生かして住む・遊ぶ・働く・食べる・憩い”を軸にしたライフスタイルの提案をしています。カヌーの競技やビーチランなど、海辺でのイベントが盛んに行われているので、ビーチスポーツが好きな方、仕事にしたい方にオススメです。
移住政策では、NPO法人おせっ会と連携。移住希望者の住居や仕事、学校など「住んでから」のことを大事にし、地域に馴染めるようなサポートが行われています。また、2017年8月31日まで地域おこし協力隊を募集中とのこと。気になる方は市のHPをチェックしてみてください。
移住は焦らず時間を掛けて
ゲストトークのトップバッターは、南房総市の公認プロモーターである永森まさしさん。現在は築300年の古民家を活用したシェア里山「ヤマナハウス」にて様々な活動に取り組みつつ、東京でのビジネスも進める二地域生活を送っています。既に二地域生活が軌道に乗っている永森さんですが、「移住にあたっては、実際に踏み出すのが難しい。ですが、私自身実際に移住している南房総市はかなり移住しやすいです」と振り返ります。
永森さんは2007年に館山市九重地区にワンルームを借り、月に2回ほど訪れる二地域居住をスタート。2009年に南房総市千倉でシェアハウスでの生活を開始します。「シェアハウスはコストを抑えられるのでオススメ」だそう。そして2013年に都内の拠点を引き払い、南房総市平群(へぐり)へ。移住から「ヤマナハウス」の運営を始めた2015年まで8年かかりましたが、「みんな時間掛かっているので、焦ることはありません」とアドバイスを贈りました。
東京と南房総市との二地域生活について、「格好付けて言うと、“季節を旅している”感じ」と永森さん。そのほか、ホームセンター御用達になる、外食が減るといった変化や、価値観が多様化するといったライフスタイルの変化を感じているそうです。今後はシェア里山「ヤマナハウス」を、リフレッシュできる場、そして地域の場にすることが目標とのこと。また、草野球や草サッカーのように楽しめる「草農家」「草大工」を増やしたいとお話されていました。
“動きながら待つ”の姿勢で理想のエリア・暮らしを
続いてのゲストトークは、土の環・代表の土屋裕明さん。スポーツインストラクターとして館山と都内で活躍しつつ、館山市で自宅に隣接する築100年の古民家を改修して、農家民宿・農業体験や、ヨガ教室、食に関わる講座を企画していく予定だそうです。
千葉県北部の農家に生まれた土屋さんは、農業とは違った形で体を扱うスポーツインストラクターという仕事に携わっていましたが、“農のある暮らし”こそが肉体作りだけでなく、精神衛生上も理にかなっているのではと感じ、農に改めて触れてみようと思い、2014年にまず南房総市に移住したそうです。
現在はご家族と館山市で暮らしている土屋さん。電車で行くには不便だが、バスで都内に通勤できること、有機農業が盛んだったことが、南房総市・館山市を移住先に選んだポイントでした。
「南房総市は新規就農者向けの住宅がありますし、県の支援策を活用して給料をいただきながら農業研修できたのでよかったです」と振り返ります。
現在の暮らしをスライドで紹介しながら、狭い地域で色んなことを楽しめるのが魅力だと教えてくれました。南房総市・館山市は都内からでもふらっと行ける距離なので、実際に訪れて地域の人と小さな繋がりを作るという“動きながら待つ”の姿勢が、理想とするエリアを探すのに大切だそうです。
今ある暮らしを最適化してくれるのが二地域居住
最後は、館山市の漆原秀さん。館山市の中でも多くの店があり賑わっている湊エリアにあった公務員宿舎を、賃貸・ゲストルーム・DIYレンタルガレージ・カフェ(準備中)等を併設した複合施設「MINATO BARRACKS TATEYAMA 3710」に改装、2017年4月にオープンさせました。現在も大家さんとして二地域居住のための施設を提供しています。庭先にエアストリームのキャンピングトレーラーを置いて貸別荘にするなど、現在も手を加え続けている様子を動画で紹介してくれました。
入居者が部屋をリノベーションすることも可能で、現在7組が入居中でファミリーも2組いらっしゃるそうです。夜はウッドデッキで一品持ち寄って集まったり、季節ごとにイベントを開催するなど、入居者同士の交流も行われています。
漆原さんが館山市へ移住することになったきっかけは、母親が病気を患ったことでした。その際に、収入源として現在とは別のエリアに購入した投資用物件を、リノベーションしたことが雑誌に取り上げられ、現在のスタイルを思いついたそう。
「自分のやりたいことすべてを都内でやろうと思うと莫大なコストかかります。経済的に合理的で、活動範囲を広げてくれるという意味で、今ある暮らしを最適化してくれるのが二地域居住です」と、二拠点居住の魅力を伝えてくれました。
地方では取捨選択と自力での交通手段が必要
続いては、イベント開始前に行われたアンケートの結果に基づきながら、「新しい生活の魅力と不安」をテーマにしたクロストークが行われました。
不安な点として挙がったのは、日常生活の利便性についてです。「スーパーは、あるところにはあるし、ないところにはない」と土屋さん。土屋さんは子どもの教育環境を重視してスーパーにも困らない場所を居住地に選んだそう。そのことを聞いて永森さんは「自分に必要な物事を確認して、エリアを選ぶことが大切ですね」と話します。漆原さんの居住地は、富浦ICから7分ほどでお店がたくさんあるエリアですが「便利ではありますが、古民家みたいな醍醐味はありません」と言います。また、お店では「A店orB店」などの選択肢はない、シネコンがない、など、都市部にいると当たり前の環境ではないことを改めて教えてくれました。
もう一つ多く寄せられた不安点は公共交通機関について。永森さんは「東京からのアクセスは良いが、現地に着いてからの足がない」。漆原さんも「賑わっている新しいバイパス沿いにバスが通ってないですし、車がないと生活できません」と暮らしの実感を参加者に伝えつつ、両市に改善を訴えました。その中で漆原さんは「移動の足が無いなら作ってしまえということで、カーシェア・Anyca (エニカ)に登録して実験しているところです」と、行政に頼り切るのではなく自ら開拓していこうという姿勢を見せてくれました。
南房総の食の恵みをいただきながら気になるポイントを解消
2部は軽食をいただきながらの交流会。「puer(プエル)」さんによる南房総市の農家から仕入れた素材を使ったケータリングが振舞われました。
メニュー:「鶏肉とオクラのパクチー和え」、「千両茄子のマリネ」、「デストロイヤー(じゃが芋)の揚げサラダ」、「エシャロットチーズとセミドライトマト+バゲット」
そして、参加者・ゲストが、永森さんの「里山体験、シェアハウス、ビジネス」、土屋さんの「スポーツ、農家民泊(古民家)、子育て」、漆原さんの「DIY、都市型居住、働き方」という3つのテーマに分かれてグループトーク。それぞれが自己紹介と今後どうしていきたいかなどを話し合っていました。
いかがだったでしょうか。
ゲストや両市の担当者の皆さんが大切だと仰っていたのは、「現地を体験すること」。
9月30日(土)~10月1日(日)には1泊2日の「南房総・館山での二地域居住体験モニターツアー」を実施予定。ゲストが運営する施設を訪れたり先輩移住者との交流が行われます。こちらも是非参加し、現地の雰囲気を体感してみてください。