テーマは「お米へ感謝する一日」。お米に魅せられた2人が開催する「第2回 ライスデー房総」【イベントレポート】

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秋の房総半島は様々な出店者が1つの会場に集う、マルシェイベントが毎週末のように各地で開催されて賑わいを見せています。お客さんはたくさんのお店を一度に見ることができる一方、出店者は自身の活動範囲だけでは、なかなか出会うことのないお客さんに知ってもらう機会になります。最近では、1つテーマに沿ってイベントを開催する場面も見られるようになりました。

千葉県のほぼ真ん中にある大多喜町。11月26日、この町の大多喜ハーブガーデンで、房総の米フェス「ライスデー房総 2杯目」が開催されました。お米に魅せられた2人の主催者の思いと、千葉県の各地から集まった出店者たちの紹介を通して「お米への感謝」をテーマに開催する房総半島の米フェスをレポートします。

2人の主催者が胸に秘めた「お米への思い」

「移住してきて、苦労して耕した田んぼで収穫した米を食べてみると、今まで食糧でしかなかった、お米への『感謝』が湧いてきました。」

そう話すのは、ライスデー房総の主催者の1人の小畑麻夫さん。03年にアパレル関係の会社を退職後、全国の有機農家を巡る旅を経て翌年、千葉県いすみ市へ移住しました。収穫を通して感謝を抱いたのは、お米だけではありません。小畑さんは、当時耕していた傾斜にある棚田を思い出しながら話します。

「この場所に田んぼを作って、代々引き継いできたと思うと、先人への敬意や感謝が生まれてきました。」

▲主催者の小畑さん(左)と坂本さん(右)愛用の米Tを着て

「NO RICE NO LIFE(お米のない人生なんてありえない)」、小畑さんはお米への感謝の気持ちをこの英熟語に込めました。この言葉が刻まれているのが、この地域でよく見かけるTシャツ、「米T(こめティー)」です。現在大多喜町在住の小畑さんは、道の駅の店長職の傍ら、「亀吉」という屋号で各地のイベントでTシャツデザイナーとして出店して、米への感謝を発信し続けています。

もう1人の主催者は、01年にいすみ市へ移住した坂本勝彦さん。11年から「おにぎり工房 かっつぁん」の店主として、この地域のお米「いすみ米」を使ったおにぎり屋を営んでいます。移住前、出張で全国を走り回る営業マン時代に惚れ込んだ「冷めてもおいしい」いすみ米の味。脱サラ後第二の人生として選んだのが、その魅力を伝えるのに最善の方法だと考えたおにぎり屋でした。

活動の原動力は「いすみ米と地域を守りたい」という情熱です。お米の消費が落ち込み、生産者の離農も進む現状を目の前で見てきた坂本さん。自宅周辺の田園風景も、太陽光パネルの設置で変わりつつあると話します。
「お米は日本人の食そのもので『ソウルフード』だと思います。このままどんどん無くなってしまう環境でよいのか。お米をちゃんと見直して、お米に再度日の目を浴びさせたい。」
坂本さんは1つ1つ冷静に、同時に力のこもった言葉でこう語ります。

歩んで来た道は違っても、お米に魅せられた2人が出会い、「お米に感謝するイベントを開催したい」という思いを共に抱くようになりました。その思いは2人が出会ってきた多くの人たちに連鎖して、16年11月に「第一回ライスデー房総」を開催。反響も大きく、出店者やお客さんの声に背中を押され、第二回の開催につながります。

「お米」をテーマに41の出店者が千葉県内から大集合

▲ 準備が終わり、出店者のテントが並びます

午前8時。会場の大多喜ハーブガーデンには、慣れた手つきで自分たちの商売道具を搬入する出店者の姿がありました。同施設は、普段は季節に合わせて200種類以上のハーブを栽培するハーブ園。同時に、ガラスハウスを活かした全天候対応型の施設として、様々なイベントの開催場所でもあります。天候に恵まれた開催当日、日中は半袖の「米T」姿の人もちらほらと。

「皆さん、本日はお集りいただきありがとうございます。開催5分前になりました。今日は一日よろしくお願いします。」
バンドのボーカルも勤める小畑さんの大きな声が会場に響き渡り、10時から、第2回房総半島ライスデーが幕を開けました。

会場に並ぶのは、お米農家、クラフト作家、飲食店ら総勢41組。千葉県は知られざる米所です。「房総米店」と銘打ち生産者が店頭に立って、お客さんへ直接自分たちのお米の魅力を語る姿が見られました。

▲ 萩原さん(右)は多古町の若手農家2人と共に参加しました

千葉県の北部、成田空港の東にある多古町は皇室献上米にもなった「多古米」の産地。この町からやってきた「たこまいらいふ萩原農場(同)」代表の萩原宏紀さんは、「多古米を広めていきたい」という志を胸に都内のイベントなどにも精力的に出店する若社長。生産から流通、販売まで手がける6次産業化も目指しています。北総地域から唯一の出店者として一日の感想をこう話します。
「お米の栽培方法や加工品のアイデア、地元ではわからない他地域の農家事情を知ることができました。」

「田んぼはいろいろなことができる場所。もっともっとオモシロイ場所だと知って欲しい。私たちは『仮の30品目』と名付けて、様々な商品を作っています」と力強く語るのは、いすみ市の農家「つるかめ農園」の代表、鶴渕真一さん。
出店ブースの机の上には、お米だけでなく、米粉にうどん、本みりんに日本酒と自身が育てたお米から生まれた加工品たちが並びます。作家さんたちは、器やお箸、しゃもじなどお米を連想させてくれる、一点物の手作り品を並べています。鴨川市から出店の「農処shiki」では、竹で作られた箸やしゃもじが並びます。店主の本業はお米と豆を中心に栽培する農家さん。隣接する竹林の竹が畑や田んぼに生えてしまい、やむなく伐採する中「こんな立派な竹を捨ててしまうのはもったいない」と独学で始めた物作りです。

▲「お米のイベント」ということで、気合いを入れてしゃもじを作ったそう

実際に食べて見つける「お気に入りの味」

お昼も近くになると、お腹をすかせた多くのお客さんが会場を賑わせていました。食べることはお米の魅力を一番感じられる瞬間です。小畑さんは、お客さんに向けてこう話します。
「食べて、お米を買って、そのお米を炊いてみて『お気に入り』を見つけてほしい。」

男手2人でようやく持ち上がる、巨大な鉄板を使って焼き上げる「そばめし」を提供するのは長生村から参加の「こがし焼きそば三ツ星」。
普段はオリーブオイルと無添加ソースを使った、イベント出店専門の焼きそば屋で、「そばめし」はお店のまかないメシとして作っているそう。店主の葛岡誠さんは「食事がそばめしだと、子供たちが喜ぶんですよ」と話します。
両手に持ったヘラで手際よく焼き上げると、香ばしい香りが食欲を刺激します。

焦げ付かないようにお鍋の中身をかき回しながら、過ぎ行くお客さんの食欲を刺激するのは、大多喜町から参加の「さすらいCAFE」。旅をテーマにした多国籍創作料理&カフェの同店が用意したメニューは「ハヤシライス」。店主の土田剛彦さんは、「前回はカレーだったので、今回はありそうでない、ちょっと特別感のあるハヤシライスにしました」と話します。
店でも使うデミグラスソースに、赤ワインを効かせた大人の味。ハーフサイズも用意して、様々な味を楽しみたいお客さんの胃袋を確かに掴みます。

お米をテーマに、老若男女様々な世代のお客さんが足を運ぶのもライスデーの特徴です。いすみ市から参加の「green+(グリーンプラス)」のメニューからは、そんなお客さんへの気使いが感じられました。
「辛いものが苦手な人もいるので、辛くない味付けにしています
そう話すのは店主の御田勝義さん。普段は肉や魚などの動物性食材を100%使わないヴィーガン料理のカフェが今回用意したのは、タイの屋台を再現したメニューたち。その1つのガパオライスは肉の替わりに豆腐を使用して、バジル風味を効かせて辛みがなくても満足できる味に仕上がっています。今回のイベントでは本場の雰囲気をより楽しめる、油で揚げた目玉焼きを追加でのせることもできます。

お昼過ぎ、「甘いものは別腹」とお客さんが集まっていたのは、いすみ市の「結農園」のブース。同市で15年から就農した関谷啓太郎さんと早紀さん夫妻が営む米農家です。
人気を集めていた、地元のチーズ工房のチーズを使ったフロマージュブラン、金鍔などの和菓子は、「地元の食材を使えるから」と独学で学んできた早紀さんの手作り。
和菓子での出店は初めてで、早紀さんが描いた可愛らしいイラストの袋に入ったお米と共に、お客さんを楽しませている光景が印象的でした。

気になる「3杯目」の「おかわり」は?

終了時間の15時を迎えても、出店者とお客さんが話し合う姿が見られるなど、大盛況のうちに終わった「2杯目」のライスデー房総。小畑さんも坂本さんも、「3杯目」のおかわり開催に意欲的です。
「地域の人も巻き込んで、地元の高校生とコラボして思い出作りのコーナーを作れたらと思います」と小畑さん。
坂本さんは、「前回に引き続き9割以上の出店者が2回目の出店をしてくれたので、出店者とお客さんの関係がより親密になったと思います。次回も、『米』の軸はぶらさず、『お米に感謝する一日』にしたいですね」と力強く話します。

今年の開催も楽しみなライスデー。開催時は、アクアラインを使えば東京から1時間程度の房総半島へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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鈴木康平

鈴木康平SUZUKI-kohei

埼玉県川越市出身です。これまで千葉、水戸に住み、現在はつくば市へやってきました。大学卒業時、お世話になった人から「どんな場所に住んでも、その街と住んでいる人を愛しなさい」という教えを受け、NPOやイベントの裏方を通して地域と接してきました。記事を通して、これまで出会ってきたアレコレを発信したいと思っています。

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