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2018年1月25日 ココロココ編集部

食べて、歩いて、感じる、白石のまち歩き 。対照的な風景に見る白石のポテンシャル

宮城県白石市は、蔵王連邦を西に望む豊かな自然と、白石城をはじめとした武家屋敷の歴史・文化が残る城下町。特に東北新幹線沿線より西側にある白石市役所周辺は、風情を感じる建築物が残るエリア。一方で、東側のエリアは白石蔵王駅を中心に大手チェーン店や新興住宅が立ち並びます。この2つの対照的なエリアを、白石市役所の加藤詞美(ふみ)さんに案内してもらいながら、まち歩きをしてきました。

「温麺(うーめん)」は赤ちゃんの頃からお世話になる白石のソウルフード

白石のソウルフード温麺

白石には伝統的な特産品3つを総称した「白石三白(しろいしさんぱく)」という言葉があります。その3つは温麺(うーめん)、和紙、寒くず。どれも白い色をしていることから名づけられましたが、残念ながら和紙、寒くずは生産が途絶えてしまいました。

白石市を紹介する時、地元の誰に聞いても外さないのが、白石三白のひとつ「うーめん」です。そうめんより太く、ひやむぎより細い乾麺ですが、製造過程において油を使用していないこと、長さが9センチに切り揃えられていることが特徴です。

うーめんには約400年の歴史があり、こんな言い伝えがあります。当時、病気の父親に、胃に負担の少ないものを食べさせたいと思案していた息子が、油を使わない麺の製法を旅の僧から学び、試行錯誤の末に小麦粉と塩だけで麺を完成。父親に食べさせたところ病から回復しました。この話を聞きつけた、時のお殿様が、息子の優しくて温かい心をたたえ、「“温”麺」と名付けました。

うーめんは油を使っていないこともあり、赤ちゃんの離乳食にも使われます。まさに白石のソウルフード。乾麺なので、温・冷どちらの調理方法にも向いていますが、何よりも9センチという短さのために茹で時間が短縮され、さっぱりした味わいなのでスープも具材も選ばない万能乾麺です。家庭では箱買いが基本で、食事を簡単に済ませたい場合にも重宝されるようです。

自家製手延べうーめんが自慢の光庵で鶏うーめんを食べる

白石市内の「光庵」で温麺を食べる詞美さん

白石市内にはうーめんを提供する店が17店ありますが、その中でも今日は、茅葺き屋根の古民家がレトロな雰囲気の「光庵(ひかりあん)」に行ってきました。案内してくれた詞美さんは、白石生まれ、白石育ち。やはり彼女も離乳食はうーめんだったとか。正真正銘の白石っ子ですね。家庭でのおすすめうーめんは鶏肉とねぎを具材に卵とじでいただくこと。寒い季節はあんかけもよいそうです。

白石市の光庵の外観

▲光庵。茅葺き屋根が珍しい

光庵は、卓越した職人技術が光る手延べ製法にこだわった、株式会社きちみ製麺が運営する直営店です。驚いたのはその豊富なメニュー。冷やしうーめん、釜あげうーめん(冬季限定)、とろ玉うーめん、なめこおろしうーめんなどなど目移りしましたが、ここはシンプルに「鶏うーめん」を注文。これまで乾麺が油を使っていることを知りませんでしたが、言われてみればうーめんはさっぱりしていて、お酒の〆にはラーメンよりもいい感じ。ほどよい短さも実は食べやすく、重宝されるのも分かる気がしました。

光庵の鶏うーめん

▲光庵の鶏うーめん

さらに、白石市観光協会が発行している「うーめんまっぷ」を見ると、ほかにもカレーうーめん、けんちんうーめんなど、お店によっても個性があることが分かりました。たかが短い乾麺と侮るなかれ。うーめんのとりこになりそうです。

うーめんマップ

▲白石市内でうーめんが食べられる店を紹介している「うーめんマップ」

たっぷり、ずっしり!濃厚なカスタードが入ったやなぎや菓子店のシュークリーム

白井市のやなぎや菓子店

光庵を後にし、腹ごなししながら歩くこと約10分。中町商店街の中ほどにある「やなぎや菓子店」 に到着しました。羊羹や最中といった和菓子もありますが、ここのイチオシはシュークリーム 。この日の冷蔵ケースには、抹茶、チョコ、あずき、ずんだなどのシュークリームがありましたがどれも150円(税別)。基本のシュークリームに至っては120円(税別)です。

シュークリームと詞美さん

店内にはイートインコーナーもあるので、さっそくいただいてみました。やなぎや菓子店のシュークリームの特徴は、なんといってもその大きさとたっぷりというかずっしり入った濃厚なカスタードクリーム。これで120円(税別)というのは企業努力の賜物ではないでしょうか。外側の生地はやわらかめで、昔ながらのシュークリームです。

▲大き目のシュークリームはがぶっといくのが詞美流

シュークリームは通販でも買うことが可能 で、レビューを見るとなかなか好評なことが分かります。ほかにも同店は、白石商工会議所が主体となっている「新・白石三白ブランド」プロジェクトにも参加中。このプロジェクトは、地元産の白い食材を使い、料理やスイーツなど新たな特産品を生み出そうというもの。2017年12月には、蔵王山麓の牛乳からできたクリームチーズをベースに、白桃ジャムをあわせて食べる新商品「レアチーズ」を販売開始。白石の新たなお土産として期待できそうですね。

城下町ならではの風情感じる壽丸屋敷(すまるやしき)

白石市の壽丸屋敷

やなぎやから歩くこと徒歩3分で到着するのが「壽丸屋敷」 です。明治中ごろに建てられた町家建築で、当時豪勢を誇った商家・渡辺家の屋敷として使われてきました。屋号の「壽丸」は渡辺家の家紋に由来しています。門からのアプローチや鯉が放たれた池など、そのつくりには城下町で財をなした当時の住人の勢いを感じさせます。

壽丸屋敷の池

▲優雅に泳ぐ池の鯉たち

壽丸屋敷の廊下

▲雰囲気のある長い廊下

現在の「壽丸屋敷」は白石まちづくり株式会社が管理運営にあたっており、屋内外で様々な催し物が行われてきました。「白石は住みやすいところ。地元愛にあふれた学生とUIターン者が語る白石市の魅力」で登場した学生団体ガクセイズム主催の「ひとのわフェスティバル2017」や「きものまつり」もここを会場に行われました。門前の広場は「すまiるひろば」と名付けられ、ほかにも様々なイベントが開催されています。

▲壽丸屋敷の玄関を入って右手の部屋で展示販売されている手芸品

▲普段のすまiるひろば。駐車スペースにも使われる

▲すまiる広場で行われた「ひとのわフェスティバル2017」のひとコマ。白石高校の吹奏楽部による演奏

白石市が担い手育成に取り組んでいる白石和紙

白石和紙の展示

屋敷の中を奥に進むと、「白石和紙」が展示された一角がありました。冒頭で紹介した「白石三白」のひとつです。「白石和紙」の起源は、平安時代から東北でつくられていた和紙「陸奥(みちのく)紙」に関係します。「陸奥紙」は高品質なことで知られていました。江戸時代になると、伊達藩主・伊達政宗公の奨励とその重要な家臣であった白石城主・片倉家の保護のもと、白石は和紙の生産に取り組みます。それによりひとつの産業として定着した「白石和紙」ですが、その特徴は丈夫さと、この地域で育つ植物(カジノキとトロロアオイ)を使うことにあります。

「白石和紙」は明治時代には衰退しますが、昭和初期に白石市内の遠藤忠雄さんによって技術が再興され、忠雄さんが亡くなった後も、2015年までは妻のまし子さんが主宰する「白石和紙工房」により、原料の栽培と紙すきの技術のすべてが引き継がれてきました。2015年3月に白石和紙工房が廃業後は商業的生産が途絶えましたが、現在、白石市は白石和紙の技術を後世に残そうと担い手の育成に取り組んでいます。

白石和紙でできた卒業証書

▲白石和紙でできた中学校の卒業証書

趣のある風景とは対照的なエリアへ。ホワイトキューブはコスプレイヤーの撮影スポットとしても人気

ホワイトキューブと呼ばれている「白石市文化体育活動センター」

最後に案内してもらったのが、東北新幹線「白石蔵王駅」から徒歩5分の場所にある、通称ホワイトキューブ。正式名称は「白石市文化体育活動センター」といって、白石文化体育振興財団が管理する施設です。可動式の仕切りによって、同時に複数の用途で使うことができます。白石市で盛んな新体操の教室も開かれています。

▲奥では卓球の練習が行われ、手前は新体操教室の準備中

実はこのホワイトキューブ、アニメのコスプレイヤーたちが撮影会の会場として使うことがあります。大きな窓から差し込む自然光や白い階段、そして2階にあるオブジェなどが撮影には効果的のようです。

ホワイトキューブのロビー付近

▲ホワイトキューブのロビー付近。奥に見えるUFOのような物体は開業当初はカフェだった

レフ版効果のある白い階段

▲白い階段はレフ版効果もあって、絵になる撮影スポット

お土産はもちろんうーめん!

案内してくれた詞美さん

▲ぜひ白石に遊びに来てくださいね!(詞美)

いかがでしたか?城下町の風情ある建築とコスプレイヤーも集まる近代施設。一見対照的なようですが通じるものを感じました。まち歩きの帰りは蔵王連峰に沈みゆく夕日を眺めながら、白石蔵王駅へ。お土産はもちろんうーめんです。手延べのほか、食塩不使用で鍋のシメにもそのまま投入可能という手軽なものも購入。しばらくはうーめん三昧になりそうです。案内してくれた詞美さん、ありがとうございました。

(文 藤野里美/株式会社キミドリ)

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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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