丸森町の現状と課題
丸森町は1954(昭和29)年、金山町・大内村・大張村・耕野村・小斎村・舘矢間村・筆甫村が合併して誕生しました。当時は、これから住民が増えていく期待もありましたが、年間の統計でこれまで一度も増えたことはありませんでした。少子高齢化や人口減少はどんどん進行し、2014(平成26)年には、消滅可能性都市の指定もされてしまいました。
人口を増やすことは難しくても、せめて人口減少率を抑えようと様々な対応策を練ってきた丸森町。しかし、なかなか思うような結果は出ませんでした。
「大きな転換期となったのは、国の政策として地方創生が始まった2014(平成26)年頃です。このとき町では、起業支援推進事業が始まります。そしてここから、移住を考えている起業家を支援する“まるまるまるもりプロジェクト”の立ち上げにもつながっていきます」。
こう語るのは、丸森町商工観光課の八島さん。プロジェクトは順調で、これまでの6年間で18名が起業し、新たな産業を町に生みだして来ました。
しかし、さらなる変化を期待していた矢先、2019(令和元)年10月の台風19号で大きな被害を受けてしまうことに――。約180世帯が仮設住宅に移っただけでなく、町内外の“みなし仮設住宅”にも約100世帯が移り住みました。帰る場所を無くした方々もおり、たいへんな思いで、毎日を過ごされています。
丸森町の出身で、町のために奔走している八島さん。丸森町の抱えている課題からお話はじめた事が印象的でした。移住のための説明会でも、まずは町の課題からお伝えしているとの事。丸森町の魅力を発信することはもちろん、現状抱えている課題を一緒に解決してくれる新しい仲間を求めています。
なぜ丸森町は起業家に着目したのか
「以前は、大きな企業や工場を誘致さえできれば町が元気になると考えていました。確かにそれも事実かもしれませんが、町が元気になるという目的を達成するための手段は、他にもあるのだと気づきました」。(八島さん)
東日本大震災を機に宮城県庁に派遣されていた八島さんは、仙台市内で開催されたイベントを訪れます。東北の起業家向けプログラムの運営などを手がけている「MAKOTO WILL」が関わるイベントでした。起業した人、これから起業しようとしている人たちの生き生きとした表情を目の当たりにして驚かされたと言います。
それでも当時は、「起業家の活躍が、本当に町を元気にする力となるのかと半信半疑でした」と苦笑いの八島さん。しかし1年、2年と経ち、起業した人たちによって着実に地域社会が変わっていく様子を目の当たりにしたことで、起業家に来てもらって丸森町に活力をもたらそうという考えに。そして、起業だけではなく、より町と深い関わり方ができる地域おこし協力隊の制度を活用することにしました。
“まるまるまるもりプロジェクト”を支える人たち
そうした「MAKOTO WILL」との出会いをきっかけに“まるまるまるもりプロジェクト”は始動しました。移住と同時に仕事づくりも応援する。このプロジェクトを経て10名の起業家が誕生し、丸森町の抱える課題を解決しながら、地方での柔軟なライフスタイルを創り上げています。
皆さんに伴走し、事業全般の相談に応じてくださるのが「MAKOTO WILL」の島さんです。
島さん:「0からの仕事づくりは簡単なことではありません。“まるまるまるもりプロジェクト”では、地域おこし協力隊の制度を利用したベーシックインカムを最長3年間支給、住居や店舗物件の紹介、町内コミュニティの紹介、ベンチャー支援の専門家による事業化サポート、クリエイティブの専門家(株式会社ラナエクストラクティブ)による見せ方・伝え方のサポート等が行われています。町の情報と起業家向けの情報、双方を加味した手厚いサポートを受けられるのが最大の特徴ですね。」
島さん:「基本的には、応募者の方が“やりたいこと”で起業していただくのを応援したいと考えています。もちろん何らかの町への貢献は求められますが、“やりたいこと”と“町への貢献”を繋げるために一緒に検討していければと思っています。こうした雰囲気で起業家さんを受け入れられるのは、丸森町の特殊性のひとつかもしれませんね。町がグランピング施設をつくろうと考え、その経営者を募集するだけならそこに興味がない方との接点は生まれません。テーマフリーならではの新たな出会いを楽しみにしています」。
すでに活躍している起業家の先輩に聞いてみた
丸森町ですでに起業している1人、山下さんは元リラクゼーションのセラピストでした。より自然を身近に感じられる環境で施術がしたいと行き着いたところが丸森町でした。理想の環境が見つかったことに喜ぶ一方で、「環境が変わったのに、これまでやってきたことを丸森町にそのまま持ち込むだけというのもどうなのかな」と思い、島さんに相談をしてみたとの事。
島さん:「丸森町には、利用価値があっても地区内で消費されていない素材・原材料は多いんです。例えば石塚養蜂園さんで副産物として出る蜜蝋(みつろう)。活用したいと思っていながらも中々きっかけがなく…」
山下さん:「蜜蝋を知った当初は、施術するときのクリームに混ぜて使うことを考えていたのですが、それでは消費量が少ないので、もっといい活用方法が無いか探してみることにしました。」
そうして誕生したのが、蜜蝋(みつろう)でつくったミツロウラップでした。ミツロウラップとは、綿100%の布に蜜蝋・天然樹脂・植物油を染み込めせ、何度も使えるようにしたエコ食品ラップのこと。手で温めて柔らかくすれば、色々な形の便利な蓋になります。
八島さん:「様々な課題が重なって、山下さんと島さんがいたからこそ、出来上がったものだと思っています。こういったケースで出来上がっていくものや、課題解決されていくことは多い気がしますね。」
数ある選択肢のなかから丸森町を選んだ理由
山下さん:「丸森町の掲げる“新しい生き方を応援するプロジェクト”への興味と、先輩起業家さんたちの自主性が重んじられている様子を見れた事が大きいですかね。さらに自由度の高さと、サポート体制の充実も決め手になりました。これならクリエイティブな交流をしながら仕事に邁進できそうだなと。不安はなかったかと聞かれることもありますが、それ以上の“新しい生き方”への期待感が大きかったですね。丸森町の方から、ぜひ来てねと言ってもらえことも嬉しかったです。」
八島さん:「“新しい生き方”というのは、今までの生き方を否定しての“新しい”ではなく、興味・関心の追求や、ステップアップするひとつの手段として“新しい生き方”があると考えています。そのような方々のために最適な環境を整えています。町長はじめ役場職員の強いバックアップも、プロジェクトを進めやすくしていますね。」
丸森町が整える環境の一つとして、町の文化財である齋理屋敷の蔵を改装したインキュベーション施設「CULASTA」があります。集合を意味する【cluster】と【蔵】の造語で、様々なプロジェクトの拠点としても活用されています。
まずは気軽にオンライン説明会へ
八島さん:「丸森町のキーパーソンに連絡を取ったり、必要であれば会って話す場面のセッティングも出来ます。もし町内で解決できないことがあれば、それに最も相応しい方を紹介することも可能でしょう。しかし我々はあくまでも黒子でしかないので、“こういうものをつくってほしい”、“あの夢を叶えてほしい”といったことは言いません。寄り添いながら一緒に課題を解決しましょう」。
“まるまるまるもりプロジェクト”や丸森町の地域おこし協力隊について少しでも気になれば、まずはオンライン説明会へ。現時点で事業アイディアを持っている必要はありません。そこから先、起業内容をブラッシュアップする1泊2日のツアーも準備されているため、実際に現地を見て・聞いてから煮詰めていく事も出来るでしょう。もちろんオンライン説明会だけの参加でもOK。詳細は下記の関連情報よりご確認ください。