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2018年1月29日 岩手移住計画

「本州一寒い」は観光資源になる?!盛岡で始まる交流人口拡大作戦

盛岡市の中心部から北東へ車で走ること約40分の場所にあるのが岩洞湖(がんどうこ)。冬になると「氷上ワカサギ釣り」のメッカになり、多くの釣りファンで賑わいます。この岩洞湖周辺に広がる薮川(やぶかわ)地域は、氷点下30度を記録することのある“本州一寒い”場所。これが、盛岡市が“本州一寒い町まち”として知られる所以(ゆえん)でもあります。
そんな薮川地域は少子高齢化の影響で担い手が不足しており、様々な地域課題が浮上しています。人口減少は一朝一夕に解決する問題ではありませんが、盛岡市は、薮川地域を一緒に盛り上げてくれる地域おこし協力隊を新たに募集中です。今回は、担当職員と、2017年度に玉山地域の活性化を活動テーマに着任した先輩協力隊に話を聞いてきました。

岩洞湖を目的地にしたい。活かしきれていない地域資源

盛岡市農政課の高橋充さん

▲ツーリングのメッカとしても有名な岩洞湖

薮川地域の特産は、寒暖差のある気候を利用した「薮川そば」。ほかにも山菜、タケノコ、行者ニンニクなどの山の恵みが豊富です。地域内にある「岩洞湖」は、秋には紅葉と湖面が織りなす大自然のコントラストが訪れる人々を癒し、冬には広大な湖面が凍り、「氷上ワカサギ釣り」には老若男女を問わず多くの釣りファンでにぎわいます。周辺にはオートキャンプ場やバーベキューができる施設もあり、家族連れでも大自然を満喫しながら、楽しむことができます。

一方で、これらの地域資源や観光資源が担い手不足によって 充分に活かしきれていないという状態にあります。今回募集する地域おこし協力隊には、薮川地域を知り、その魅力を発掘し、岩洞湖をはじめとする地域資源を十分に生かし、地域に人を呼び込むための企画力が期待されています。

受入れ担当の玉山総合事務所産業振興課の小橋さんに、この地域はどういった課題を抱えているのか、詳しく話を聞きました。玉山地域は2006年(平成18年)に盛岡市と合併する前は、日本を代表する詩人・石川啄木のふるさと「玉山村」として、人口約14,000人の独立した自治体でした。小橋さんはこの旧玉山村出身です。

産業振興課 小橋さん

▲産業振興課 小橋さん

小橋さん「岩洞湖の周辺には市の管轄施設として、岩洞活性化センター(研修宿泊施設)、や岩洞湖家族旅行村(オートキャンプ場)、ばっちゃん亭(産直・食堂)がありますが、この2~3年で利用者数が減少しています。ワカサギ釣りは人気はあるのですが、氷が一定以上厚くならないと営業できないので、天候によってはシーズン中の営業日も減ってしまいます。秋には、きのこやバーベキューなどが楽しめる岩洞湖まつりというイベントも開催していますが、少子高齢化で地域内の人が減少していますから、これからは交流人口を増やしていかないといけません。さらにいうと、薮川地域は近隣の町への通過点になることが多いので、なんとか岩洞湖が目的地になるよう、周辺施設を活用した取り組みを、協力隊の方と一緒に考えていきたいと思っています。」

「ばっちゃん亭」

▲岩洞湖畔にある産直・食堂施設「ばっちゃん亭」

岩洞湖活性化センター

▲岩洞活性化センターの設備(ホール)

岩洞湖活性化センターの設備(風呂)

▲岩洞活性化センターの設備(風呂)

地域に活動 拠点があることを今後の取り組みに活かしたい。2人の先輩協力隊に聞く

産業振興課は2017年度から2人の協力隊を採用。活動テーマは「ユートランド姫神を軸とした玉山エリアの活性化」で、ユートランド姫神という既存の総合交流ターミナル施設を拠点とした地域づくりに取り組んでいます。今回募集するテーマとは異なりますが、既にある施設を活用するという点では参考になることも多いはず。さらに、同じ職場内で顔を合わせることも多いので、何かと頼りになる存在でもあります。今、2人がどういった活動をしているのか、松尾早恵(さえ)さんと、中里直樹さんに話を聞きました。

松尾さん

▲先輩協力隊の松尾さん(中央)

松尾さんはこれまで国際交流の分野で仕事をしており、外国人の方を日本国内の様々な地域に案内する機会がありました。そんな経験から、玉山地域で 新しい交流プログラムの作成に取り組んでいます。

松尾さん「玉山で、東北の文化とそれ以外の地域の文化が体験できる1泊2日のツアーを企画しています。このプログラムで大事にしているのは、継続的な地域間交流です。玉山に外から人を呼ぶのも必要なことですが、玉山の人と外の人がつながってほしい。そこで交流が生まれたら、『次は春に来ようか』『次は遊びに行くね』といったふうに行き来が増える。それに、異文化を知ることで、玉山の人たちも自分たちの文化がはっきり見えるようになると思うのです。それは地域への愛着とか誇りにもつながります。 今、こういう話をいろいろな人にしていて、手仕事の職人さんだとか、星空を解説してくれる人だとか“体験”の部分を提供してくれる協力者を募っているところです。」

松尾さんは、8年前に参加した「世界青年の船」という国際交流プログラムを通じて、岩手県出身者と知り合い、毎年8月に盛岡市内で行われる「さんさ踊りパレード」に参加するため、岩手を訪れていました。まさに松尾さん自身が交流人口の担い手だったと言えますが、いくつかあった協力隊のテーマから玉山エリア担当を選んだのは、別の理由もありました。

松尾さん「ユートランド姫神を拠点 にして活動できるということが大きかったですね。宿泊もできるし温泉もあります。今企画しているツアーでも、ユートランド姫神を軸に考えられるので、ありがたいです。」

中里さん

▲先輩隊員の中里さん(右)

中里さんは岩手県沿岸で、青森県境にある洋野町(ひろのちょう)の出身です。首都圏でシステムエンジニアとして働いていましたが、協力隊に採用されたことをきっかけに家族で玉山に移り住みました。趣味の域を超えて本格的にやっていた和太鼓が、中里さんの強みです。

「和太鼓は中学から始めまして、18歳の頃からは団体への指導や楽曲提供もしていました。今は、担い手不足で活動を休止している玉山の和太鼓団体を復活させるため、いろいろと動いています。地域を盛り上げるのは太鼓だと関係者の皆さんも仰っていたので、残っていた3台の太鼓を修繕に出して復活 させたいですね。4月になるとユートランド姫神がリニューアルオープンするのですが、そこを和太鼓団体の合宿に利用したり、姫神ホールで太鼓のイベントを開いたりして、その参加者ならユートランドの利用が割安になるとか、玉山地域のほかの施設とも連携しながら、地域内を人が循環する仕掛け をしていきたいです。」

こんなことにもヒントがあるかも?「本州一寒い」を逆に楽しむ

大ケ生地区の運動会

▲冬の岩洞湖。全面に厚い氷が張ればワカサギ釣りができる

ここで少し面白い昔話を聞くことができました。

小橋さん「20年ぐらい前は、地元の若手グループによる冬場のユニークなイベントがいくつかありました。氷上綱引きや、かき氷の早食いなどですね。とても寒いんですけど、大人たちが真剣に遊んでいましたね。何度かお手伝いに行ったこともあります。」

中里さん「小橋さんが話していた昔のイベントは、古い広報を片っ端から読んでいて知ったのですが、面白いなと思いましたね。私は寒いのが苦手なんですが、それでもこの寒さを積極的に楽しもうという発想に惹かれるところがありました(笑)」

20年が経ち、スマートフォンやSNSが浸透した現在、もしかしするとこんな昔話にも、地域資源を活かすヒントが眠っているかもしれません。

応募を検討している方へ

最後に、3人から応募を検討している方へメッセージをいただきました。

松尾さん「自然が好きな人なら岩洞湖と周辺施設の活用にはアイディアが沸くのでないでしょうか。岩洞湖の周りは白樺林で雰囲気もいいんですよ。私たちと活動テーマは違いますが、一緒にできることはあると思います。ぜひ楽しいことを企画していきましょう。」

中里さん「地域の人はとても温かいので、心配はいりません。時間は必要かもしれませんが、地域に根差した取組を一緒にやっていきましょう。」

小橋さん「私たちは新しい発想を求めています。例えば、食の分野やアウトドアでのご経験があれば、それを活かした取組も模索できると思います。私は昔から玉山に住んでいますが、薮川地域の人たちには特に人の好さを感じますね。お待ちしています。」

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岩手移住計画岩手移住計画は、岩手にUターン・Iターンした人たちの暮らしをもっと楽しくするお手伝いをし、定住につなげていくために活動している任意団体です。県内各地で、「岩手移住(IJU)者交流会」と題したイベントを開催しているほか、岩手県などが主催するUIターンイベントにメンバーが参加し、移住希望者の相談にも対応しています。首都圏と岩手をつなぐ活動にも力を入れています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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