人々が集う「場」を訪ねて岩手をめぐる 岩手県移住交流体験ツアー第2弾レポート

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広大な岩手の人や地域資源の魅力に触れ、岩手での暮らしのイメージをつかんでもらう「岩手県移住交流体験ツアー」。スタートから4年目を迎えた2018年度は「岩手で暮らす・働く・生きる 今こそ知りたいイワテの旅」を共通テーマに、4本のツアーを実施する予定です。第2弾となる10月のツアーは「みんなの『居場所』とつながる旅」のテーマで、2泊3日で岩手の内陸と沿岸をめぐりました。その様子をご報告します.

「県民でも知る人ぞ知る」タイマグラからスタート

前回の第1弾ツアーhttps://cocolococo.jp/25714はご家族での参加限定のモニターツアーでしたが、第2弾と第3弾は岩手への移住や多拠点暮らしに興味がある方全般が対象。第2弾は16名で実施されました。ご家族やご夫婦で参加したのが3組、ほかはお一人で参加の方々でした。

盛岡駅で集合しバスは一路、東へ。宮古市川井地区のタイマグラを目指します。タイマグラはアイヌ語に由来し「森に続く道」という意味だとか。岩手に暮らす人でも名前は知っていても行ったことはない土地ということで、参加者の期待も高まります。

迎えてくれたのは、25年前にタイマグラに移り住み、夫とともに民宿「山小屋 フィールドノート」を営む山代陽子さん。東京で出版社に勤務していた20代のころ、友人の紹介で訪れたタイマグラに魅了されて移住。その少し前に移住していた奥畑充幸さんと結婚し、3人の子どもたちを育てながらたくさんの訪問客を迎えてきました。

島根出身で25年前、東京から岩手に移住した山代陽子さん

現在は移住者ばかり4世帯のみとなったタイマグラですが、山代さんが訪れた当時は長く暮らしたおばあさんが存命で、その方から極寒の地ならではの保存食の作り方や暮らし方を教えてもらううちに、「暮らしを自分の手に取り戻していく」感覚が得られたと言います。「東京にいたころは、希望する仕事に就けたのにいつも何か足りないと思っていた」と振り返る山代さんのお話に参加者は共感した様子でした。

山代さんお手製のランチと栗を使ったお菓子をいただきながらお話をうかがい、タイマグラの集落を散策、厳しくも美しい自然の中での暮らしに思いをはせました。

アツい若者たちが集まる宮古 まちづくりや復興を知る

同じ宮古市内を東へ向かうと、海の近くに宮古市の中心部があります。その商店街の中に、今年8月にオープンしたのが「ゲストハウス3710(みなと)」です。初日の宿はこちら。ゲストハウスの若いメンバーとツアー参加者とでお酒を飲みながら交流し、翌朝は地元の市場や古い蔵をリノベーションしたイベントスペースを案内してもらいました。

初日夜の参加者と先輩移住者らとの交流会では、宮古市の移住定住担当者から市の取組みについて紹介。現在、募集中(2019年3月15日まで随時募集)の地域おこし協力隊や宮古-室蘭間のフェリー定期航路開設に伴って市が力を入れる観光などについて説明してもらいました。

20~30代の移住者が中心の3710メンバーや地元の人たちでオープンをお祝い(ゲストハウス3710提供)

2日目午前中のプログラムは、東日本大震災直後、復興支援のために駆けつけた福岡県出身の早川輝さんがコーディネート。早川さんは仲間たちと3710を立ち上げ、さらに観光客向けに市内の体験プログラムを提供する事業も進めています。早川さんといっしょに宮古の復興について学び、「潮風のハーブ園」ではハーバリウムづくりを体験しました。

「潮風のハーブ園」で記念撮影

女性たちがいきいきと活動する山田町、大槌町

岩手の内陸部と沿岸部、それぞれの暮らしや地域性を知ってもらうのもこのツアーの目的のひとつ。宮古市の南隣に位置する山田町では、地元の漁師さんといっしょに牡蠣やホタテの浜焼きの昼食を取り、復興が進むまちなかやスーパーを回りました。

ここでも、マリンスポーツや体験プログラムの窓口となっているのは移住者です。山田町観光コーディネーターの服部真理さんは東京都出身で山田町に来て5年目。漁師さんや町の人たちと連携し、自然を生かした体験コンテンツを提供しています。

スーパーでは海の町ならではの海産物をチェック

(ツアーのチラシや県北観光ホームページ上の旅程に記載していた「養殖いかだ見学」は台風による強風のため中止になりました)

さらに南下して大槌町へ。大槌町でも元気な女性たちが参加者を待っていてくれました。「Chari Café(チャリカフェ)」を切り盛りする内金崎佳代子さんです。

お店を紹介する内金崎佳代子さん(左)とご家族

チャリカフェは、自転車店とカフェを併設したお店。震災前は夫や家族とともに大正時代から続く自転車店を営んでいましたが、津波で店舗は流されてしまいました。震災直後に双子を出産した内金崎さんは「子育て中のお母さんがゆっくりできる場所をつくりたい」との思いを持っていたため、自転車店とカフェを備えたお店をつくることにしました。

ランチとカフェの営業のほか、義母手づくりの大福などをイベントで販売したり福祉施設で出張カフェを開いたり、さまざまな取り組みをしています。「人口が少ない地域だから、お店をやっていくためにはさまざまな工夫が必要です」とさまざまアイデアを出しながら楽しんでいる様子が伝わってきました。

大槌町の交流会では、町担当者から、町に移住し新たに住宅を建てる世帯向けの一律100万円の補助金や空き家改修の補助金などについて説明。小中一貫校など特色ある教育制度についても紹介してもらいました。

ツアー始まって以来の外国人の先輩移住者も

交流会には子育てをしながらキッチンカー(調理施設のついた移動販売車)で飲食店を開業した女性も参加。参加者はアクティブな女性たちとの交流を楽しみました。

移住者の起業支援が充実の遠野

最終日は、内陸の遠野市へ。同市の起業型地域おこし協力隊「Net Commons Lab」(NCL)事務局の多田はるかさんと木内真美子さんにLabメンバーが運営するスペース「小上がりと裏庭と道具 u」を案内してもらい、NCLのシステムについても説明していただきました。地域おこし協力隊の3年間のあいだに起業して事業を回していくための支援策などについて活発に質問が出ました。「遠野は車社会で雪も多い。その移動しにくさを逆手にとったところにビジネスチャンスがあるかもしれない」というおふたりのお話に参加者もうなずいていました。

多田さん、木内さんからの説明についてたくさんの質問が

その後、NCLメンバー3人が今夏オープンしたブリュワリー「遠野醸造TAPROOM」でランチとビールをいただきました。移住者でもある袴田大輔さんから、起業のこと、遠野での暮らしのことについてうかがいました。起業から間もなく忙しい日常でも「東京にいた時よりも自分のペースで暮らしをつくりながら生活していける」と話していたのが印象的でした。

ビールをいただきながら袴田さんのお話をうかがいました

協力隊から経営者へ Uターン者が活躍する花巻

いよいよ2泊3日のツアー最後は花巻。盛岡出身で、JR花巻駅近くでゲストハウス「meinn」をオープンした福田一馬さんを訪ねました。自身も妻も元自衛官の転勤族。「家族や友だちとの時間を大切にしたい」という考えていたところ、妻の「岩手で子育てをしたい」との言葉に背中を押されて、3年前花巻市の地域おこし協力隊に。任期中にリノベーションの腕を磨いて起業、ゲストハウス経営とリノベーションを支援する「リノベーション大工」として活動しています。福田さんは「『幸せ』を考えて出した結論が移住でした。成功に必要なものは『覚悟』ですね」と熱く語ってくれました。

2泊3日をふりかえっての参加者の声も聞いてみました。移住と起業に関心があり夫と一緒に参加した佐藤真実さんは「盛岡の出身ですが、全く知らなかった岩手の魅力にふれることができました。ツアーで出会った方々から具体的なヒントをいただけたので、一歩前に進めた気がします」と話してくれました。

自らリノベーションしたゲストハウスのロビーで取組みを紹介する福田さん

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2018年度は4本のツアーを予定している「岩手で暮らす・働く・生きる 今こそ知りたいイワテの旅」。第3弾「スポーツを愛する貴方にささげる旅」
http://www.kenpokukanko.co.jp/immigration-tour/
の参加者を11月12日まで募集しています。来年には釜石でのラグビーワールドカップも控えた岩手はスポーツが盛んな地域です。スポーツという切り口で岩手をめぐってみませんか。

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手塚 さや香

手塚さや香TEZUKA-Sayaka

2014年10月より釜石リージョナルコーディネーター(通称「釜援隊」)。釜石地方森林組合に派遣され、人材育成事業「釜石大槌バークレイズ林業スクール」の事務局業務や、全国からの視察・研修の受け入れを担当。任意団体「岩手移住計画」を立ち上げ、UIターン者や地域おこし協力隊・復興支援員のネットワークづくりにも取り組む。新聞記者の経験を活かし、雑誌等への記事執筆のほか、森林組合のプレスリリース作成や取材対応、県内の事業所、NPOのメディア戦略のサポートも行う。

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