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2021年7月2日 フジイ ミツコ

家族と過ごす「今」と「将来」を考えて。新築住居での2拠点生活という選択

首都圏からの移住や2拠点生活の場として、注目されている千葉県南房総地域。

都心で仕事をしながら南房総に通い、古民家や空き家を改修リノベーションしながら住む人も少なくありません。また、Iターン・Jターン移住や二拠点生活というと、初期投資を抑えるために賃貸住宅や中古住宅購入というパターンが多く、新築住居を建てるという人はまだ少数派なのではないでしょうか?

しかし、2016年ごろから2拠点生活をおこなっている川鍋宏一郎さんは、自分と家族の今の楽しさと将来の南房総生活を両立するために、中古リノベーションではなく、新築住居を選択しました。その選択に至った経緯とこれからの生活について、お話をうかがいました。

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「10年も経てば、都心にいなくてもいい。」

現在、横浜の綱島と千葉県南房総で2拠点生活を過ごす川鍋さんは今年で37歳。仕事は、外資系IT企業のシステム営業をしています。職業柄コロナ禍以前からリモートでの仕事が多く、積極的にリモートでの仕事にシフトしていったと言います。

「仕事は対面での打ち合わせが必要でなければ、オンラインで十分なので南房総でも可能です。現在のコロナ禍では週1程度の出社なので、対面の予定が入っていなければ1週間ずっと南房総にいる週もありますよ。」

プライベートでは小学5年生と3年生の女の子のパパでもある川鍋さんは、家族の将来についてこう語ります。

「今は子どもが小学生ですが、あと10年もすれば成人して子育ても終わります。その時には、都心にいる必要はなくなっているのではないかと考えています。今は子どもの学校や習い事などがあり、子どもが住み慣れた網島を完全に離れるのは難しいかなと思うので…」

2拠点ポテンシャルの高い南房総へ

川鍋さんが2拠点生活をはじめたのは今から5年前の2016年。その前から移住を検討しながら「仕事は都心にあるけれど移住先から東京に毎日通うのはなんだか違う」と感じていたそうです。そんな時に出会ったのが、東京と南房総の2拠点生活を書いた建築ライター・馬場未織(ばばみおり)さんの『週末は田舎暮らし』という本。この本で、2拠点生活というライフスタイルを知り、2拠点生活を検討し始めます。

「横浜の自宅から通える範囲で色々な地域を検討しました。神奈川県内も考えましたし、山梨県なども検討しましたが、『行き帰りの車が混む』『雪が多い』などデメリットを感じてしまいピンと来る場所がありませんでした。そこで思い出したのが、キャンプで何度か訪れていた千葉県南房総。温暖で、横浜から約1時間半で来れるのに時間をずらせば道も混まず、海も山もあって、自然が濃い。2拠点の場としてポテンシャルが高くて魅力的だなと思いました。」

「最初は横浜のパパ友たちと古民家をシェアすることも考えていたんです。複数家族で遊ぶとなると、宿泊も一苦労だったので。ただ、古民家をいきなり買うのも管理できるか分からず少し不安でした。修繕などのDIYの知識を得たいなと考えていたときに『ヤマナハウス』の存在を知りました。」

ヤマナハウスとは、『シェア里山』と呼ぶ築300年の古民家とその周辺を、都心に住む会員メンバーを中心に自分たちで修繕・開墾など自由に楽しむ大きな意味でのDIYコミュニティ。年齢や職業もバラバラのメンバーができることや興味のあることを持ち寄って、どんどん変化し進化しており、2021年で6年目を迎えます。

川鍋さんは2017年春に正式メンバーとしてヤマナハウスに通うことになりました。

「ヤマナハウスの活動にはほぼ毎週通っていた時期もありました。妻と子どもも一緒に来ることも多く、特に子どもは横浜では味わえない自然の中の遊びを楽しんでいました。色んな大人と遊んでもらえたのも良かったと思います。僕自身、DIYスキルが磨かれ、多くの2拠点の先輩ができたのが本当に良かったです。」

家族との今を優先し、「BESSの家」の新築を決意

川鍋さんの土地は母屋と納屋が敷地内に立ち、裏側の野山を含めて4500坪という広大な物件でしたが、当初賃貸で借り、最終的には350万円で2019年に購入しました。

当初は母屋をDIYで手入れして拠点とする予定でしたが、母屋は古く基礎がしっかりしていませんでした。3~40年住むのは難しいと考えた川鍋さんは「古い母屋にお金をかけてリフォームするより、新築住宅を建てよう」と決意します。

「新築で建てるメリットは、すぐに生活が始められること。古い母屋が残っていた時はキャンプ的にシュラフで寝たりしていたんですが、妻も子どももなかなか一緒には来てくれなくて(笑)。子どもが今のように一緒に週末を過ごしてくれるのはあと少しかもしれないと思うと、早くこちらでも生活ができるようにしたいと思い、新築住宅を選択しました。」

そこで選んだのは、雑誌で見かけて馴染みのあった『BESSの家』。

BESSは、株式会社アールシーコアが全国展開する企画型住宅で暮らしを提案するブランドです。シリーズごとのコンセプトをデザインに表した企画型住宅で、ベーシックでありながら個性的な5つのラインナップを展開。BESSの単独展示場LOGWAY(ログウェイ)は全国40拠点で展開中です。

川鍋さんが選んだのは『ワンダーデバイス』というシリーズの『FRANK』というデザイン。四角い十字のデザインが印象的な二階建ての家で、正面には大きな窓があり、リビング部分は吹き抜けになっています。ウッドデッキとの境目を感じさせないオープンなリビングは家にいても外の空気を感じられ、解放感抜群。2階部分にはロフトと二つの部屋があり、4人で週末暮らすには十分なサイズだと川鍋さんは言います。

「他の住宅も資料を取り寄せたりはしましたが、結局展示場に足を運んだのはBESSだけでしたね。とにかくBESSの家のデザインがかっこよくて。時間が経つごとに味わいが増していくことや、”家を道具のように使う”というコンセプトも気に入り、BESSに決めました。カスタマイズもできたんですが、ほぼパッケージそのままで建ててもらいましたね。これから少しずつ自分でカスタムしていく予定です。」

実際に、古い母屋の時は足を運ぶことが少なかった家族も、新築住宅が完成してからは、ほぼ毎週一緒に南房総へやってくるようになりました。土地が狭く人の多い都心ではなかなかできないキャッチボールや裏山の探検、家のすぐそばの川での川遊び、車で少し走ったところにあるお気に入りの磯で海遊びなど、子どもも楽しんでいます。最初は苦手だった虫や生き物にも段々抵抗がなくなってきたそうです。

東北出身で田舎暮らしに興味が薄かった奥さんも「2拠点生活が仕事のモチベーションになるならやらせてあげよう」というスタンスで2拠点生活を認めてくれています。今年の6月には家族で家の前を舞うホタルを見たそうです。

地域に馴染み、日常に馴染む南房総生活

一般的に、移住や2拠点生活のハードルと考えられている地域との交流については不安はなかったのか聞いてみました。

「そうですね、今の家はヤマナハウスの近くなので、ヤマナハウスに通っていたことや、メンバーの一人として草刈り行事にも参加したりしていたことで、地域の人に顔を覚えてもらえるきっかけになっていました。全くのゼロスタートではなかったのは助かりましたね。今も草刈りには参加しています。オープンな住宅なので、オンラインで商談中にふと窓の外を見たら近所のおじさんが立っていてビックリしたこともあります(笑)。あとは、移住者や2拠点生活をしている友人がいるので、友人たちとの情報交換ができるのも地域交流に役立っています。」

では、川鍋さんの南房総での日常のスケジュールを見てみましょう。

南房総で平日を過ごすときは、愛犬のクロマメくんと一緒に南房総に残ります。6時半ごろに起床し、10時の始業まで朝食を食べたり、クロマメくんの散歩などをしたりしてのんびり過ごし、10時から18時頃まで、オンラインでの商談や会議などをこなします。

「こちらの家は本当に静かで自然の音しかしないので、横浜の家より仕事に集中できますね。会議の合間に草刈りなど外仕事をしてリフレッシュしたりすることも。仕事が終わったら、好きなお酒をひとりで呑んだり、近くに住む友人と呑んだりしています。横浜から食料を持ってくることも多いですが、近くのローカルスーパーに買出しに行くこともありますね。魚介類が豊富で新鮮なので気に入っています。」

2拠点生活を前向きなリスク分散と考えて

横浜の住居も持ち家だという川鍋さん。現在は二重ローンという状況だそうですが、経済面で2拠点生活で新築を建てるという判断にいたったのはなぜでしょうか。

「正直、二重ローンは大変ですが、将来的には横浜の家を売却することを視野にいれています。売却できるいいタイミングがあれば、賃貸に移るということもできるので。横浜の家は正直あまり思い入れがなく、建売に出ていたのをたまたま買ったという感じなんです。実際、経済面のリスクも考えましたが、横浜の家をいい条件で売却できる可能性や、災害などがあった場合に南房総にすぐに移ることができることなどを考えると、ある意味2拠点生活がリスク分散になると思い、決断しました。」

今の自分を残して将来の自分につなぐ場所

「二拠点生活はRPG(ロールプレイングゲーム)的な感覚がある」と川鍋さんは話してくれました。

「南房総の家でやったことをPRG的に言うセーブ(状況を保存)して、横浜に帰ることができる喜びがあるんですね。僕は昔からキャンプが好きで、色々な場所でキャンプをしてきましたが、基本的に来る前の状態に戻して何も残さずに帰らなければなりません。それが寂しいなと感じていたのですが、今の生活なら、木を切ったり裏山を開墾したりしてそのまま残して帰っていい。そしてまたその場所からスタートできるのが嬉しいんです。今は、横浜はお金を稼ぐ場所、南房総は住む場所という意識が強いですね。」

改めて南房総の家でやってみたいことを聞くと、「移住している友人に養蜂をやっている人がいるので、教えてもらって始めたいと思っています。南房総の移住者は、ストイックすぎなくて、完全な自給自足を目指すとかではない、肩の力が抜けている感じの方もいて素敵なんです。そんな風に生活できるといいなと思います。あと、米作りのお手伝いをはじめたので最初の収穫が楽しみですね。」

 

今の自分の興味や家族を大切にし、南房総での活動成果を積み重ねながら、2拠点生活を続ける川鍋さん。こだわって選んだ新築住居で楽しく過ごす笑顔の瞳には、しっかりと描いた将来が映っていました。

取材先

川鍋 宏一郎

2016年頃より、子供たちに田舎を作りたいという想いから、横浜と南房総で2拠点生活を始める。
南房総にはBESSの家を建て、毎週のように家族で足を運んでいる。
完全移住を目指し、着々と準備中。

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フジイミツコ

フジイ ミツコ山口県出身のフォトライター。海を愛するパートナーに連れられて千葉県南房総に移住。男児ふたりの母。個性的な人材が集まる南房総で子どもがつなげてくれたご縁がふくらみ、ライターを中心にパラレルワークを楽しんでいる。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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