そもそも「裏サミット」というからには、「表サミット」があるわけですが、この翌日の8日には「地域おこし協力隊全国サミット」という総務省が主催する会合が行われることになっており、その前夜祭的な位置付けで、「タテマエではなく本音をぶつけあう場所」として企画されたのが、“裏”サミットです。
全国各地から集まった「地域おこし協力隊」のメンバーと、地域活性化に関心のある一般来場者、100名以上が集まって、“裏”サミットは始まりました。
企画したのは、協力隊のネットワークづくりをしている「村楽LLP」の皆さん。
サミットは「ここが変だよ地域おこし協力隊」と題して、活動報告と問題提起を行う第1部と、「ローカルビジネスピッチ」と題して、地域おこしに関心をもつ企業が協力隊に対してアピールを行う第2部に分かれて行われました。
最初は活躍している協力隊からの事例報告。活動内容や苦労した点などについて、リアリティのある話が続きます。
トップバッターは、福島県の西会津町。 市役所職員の小澤さん、協力隊の小堀さんが登壇しました。
この冬マスコミでも大々的に取り上げられ、話題となった「ジョセササイズ」。 大変な作業である「除雪」を「エクササイズ」として捉えようというユニークなこの企画、協力隊のメンバーが中心となって考えたものだそうです。
「ジョセササイズ」が人気となったのは、説明イラストが「すごく楽しそう」なのが一因ですが、そのイラストを書いているのは協力隊の小堀さん。
配属当初は水鉄砲洗いなど、得意分野であるデザインとは無縁の仕事をしていたそうですが、「これではいけない」と立ち上がり、自分の意見を言うようになってから、「ジョセササイズ」をはじめ、廃校をリノベーションして交流施設にする企画や、国際芸術村での新しいアートプロジェクトなど、新しい道筋が開けたといいます。
日本ジョセササイズ協会:http://jjxa.strikingly.com/
続いての事例報告は、滋賀県湖南市の協力隊、黄瀬絢加さん。
黄瀬さんは福祉を学ぶ現役の大学院生ですが、現在は一時的に休学して、協力隊の活動に取り組んでいます。
湖南市は人口5万人と、協力隊が活動する自治体の中では比較的大規模な街ですが、人口減少が進む地方都市の典型でもあります。黄瀬さんは「都市近郊型地域おこし協力隊」と位置付けて、未来を見据えた街おこし活動に取り組んでいます。
活動としては、コミュニティスペースの運営、イベントの企画や協力など幅広く行っているそうですが、中でも力を入れているのが地域情報誌づくり。 「住民の皆さんは何も無い街だと言うけれど、本当は地元の魅力って沢山あるんです。それをもっと知ってほしい。だから地域情報紙を作りました。地元を知れば、何かの行動につながるはず!」と、熱い思いを持って取材を行っているそうです。 「特産の弥平とうがらしを紹介するために、全国の唐辛子の味比べをして悶絶した」 「駅で張り込んで、美人の取材をした」など、体当たりの活動内容に、会場からは大きな笑いが起こっていました。
3番目の事例報告は、兵庫県洲本市から、村楽LLPの代表でもある山下勉さん。
山下さんが活動拠点としている洲本市は、協力隊の活動が制限される制度(週5日勤務、副業禁止など)について、千田良仁さん(株式会社アイファイ、
山下さんが地元の観光資源としてもっとも注目しているのは「馬」。
「あわじシェアホースクラブ」を作ったり、お祭りに馬、自身も馬に乗って結婚式を挙げたそうです。地域にすっかり溶け込んだ山下さんの様子に、会場はまたまた笑いの渦に。そんな山下さんは、今、自宅近くの牛小屋をリノベーションして、
3名の発表が終わった後は、会場に集まった他の協力隊メンバーも交えてのグループディスカッション。 それぞれのメンバーが抱えている疑問や問題などを持ち寄って、熱い議論が交わされました。
ディスカッションに際して掲げられたテーマは3つ、
1 どうなる?どうする? 地域おこし協力隊のこれから
2 協力隊に向いている人?向いていない人?傾向と対策
3 任期終了後の自立について
ディスカッションの後、グループごとに発表がありましたが、3つのテーマの中で一番関心が高かったのは、「任期終了後の自立」だったようです。
協力隊の任期は最大で3年。契約満了後は自力で生計を建てる必要があります。「任期終了後は農作物販売をしてみたいが、どうすればいいか分からない」など不安の声もありましたが、「協力隊をちゃんとやっていれば、人とつながっていける。そうすれば、その地域に仕事が生まれていく」という意見が多かったようです。
「向いている人、向いていない人」については、まず「メンタルの強い人」が向いている、というのが多く聞かれました。
「地元の人からけっこういろいろ言われて、傷つくこともある。でも自分は寝ちゃえば気にしないので、続いている。」という声も。やはり、地方に入って活動するには、苦労もあるようです。
このほかにも、「うまくいかない時、思ったような仕事ではなかった時、ついつい役場のせいにしがちですが、実は事前に告知されていたということも多い。仕事の内容については、事前にしっかりと確認をしたほうが良い」といった意見や、「今はとりあえず今後の自立のことは考えずに、とにかく一生懸命に取り組むべき。1年毎の契約ではあるので、3年やらないといけないわけではない。合わなければほかへ行ってもいい。必ず3年やって、そこに住まなくてはいけないという契約ではないのだから、将来のことは3年間の間で考えればいい」といった意見もありました。
お互い、同じ立場で似たような悩みを持つ人同士で、良い意見交換の場となりました。
第2部は「ローカルビジネスピッチ」ということで、企業からの協力隊へのアピールタイムとなりました。
各企業が地域に関わる自社の事業・取り組みを紹介し、「自分の街でこれをやりたい!」という協力隊とのマッチングを行うという企画です。
参加した企業・団体は下記のとおり。
・ゾイシア株式会社:http://www.zoysia.jp/
『地場商品開発に取り組む』
・株式会社スペースマーケット:https://spacemarket.com/
『空き家、セミナールーム、廃校などの空きペースを貸し出す取り組み』
・ヤフー株式会社:http://business.ec.yahoo.co.jp/shopping/
『出店料、手数料無料のショッピングサイト』
・株式会社インビテーション・ジャパン:http://aitabi.jp/
『“旅上級者”向けの旅行プランを提案するサイト「あいたび」
・なりわい承継メディア:http://businessbaton.com/
『ビジネスバトン』
・株式会社地元カンパニー:http://gift.jimo.co.jp/
『「地元のギフト」プロジェクト』
・株式会社ダンクソフト:http://www.dunksoft.com/work/satelliteoffice
『徳島県神山町でサテライトオフィスを構え、雇用を拡大』
どれも興味深いプロジェクトで、話を聞く協力隊のみなさんも真剣。
この場でマッチングが行われ、新たなローカルビジネスが生まれるかもしれません。
こうして開会から5時間。長時間にわたった“裏サミット”は終わりましたが、その後も徒歩圏内の根津某所にあるという「東京キチ」で懇親会が行われ、普段はなかなか会えない隊員同士、また協力隊に興味を持つ企業や一般参加者の間に、新しい出会いと絆が生まれていたようです。