新卒で利島にやってきた本田さんの島暮らし
「株式会社TOSHIMAで働く人が実感する「島で生きること」とは?<仕事編>」では、TOSHIMAのメイン業務である港湾業務を中心にご紹介しましたが、事務スタッフとして働く移住者もいます。
本田晴菜さんは、船客待合所での発券業務などの事務作業を担っています。2021年に新卒で就職を決めたという本田さんは福島出身。大学も実家も県内で、利島のことは全く知らなかったのだそう。
求職者と企業をつなぐ就職エージェントのWEB面接を経て紹介されたのがTOSHIMA。採用を担当した海老沢さんと縁が繋がり、「離島という意識はあまりなく、イチ就職先として」単身利島へとやってきました。
細い坂道ばかりで小さな集落だけの島の生活。車の運転に最初は手こずったものの、半年もすると慣れたと話す本田さん。
とはいえ、いきなりの島暮らしで大変ではないかという質問には、「料理が好きで、自炊する際に必要な材料がすぐに揃えられないことがあるけれど、宅配便などを利用すればそこまで不便とは感じない」と前向きな答えを返してくれました。
利島には光ファイバー回線も入っているので、ネット環境も快適なんだそう。
利島での暮らしは、勤務外に使える自由な時間も多いため、趣味のお菓子作りをしたり、管理栄養士の資格獲得のための勉強を始めたりと、とても充実している様子です。
また離島とはいえ、利島は、高速ジェット船に乗れば2時間程度で都心にアクセスできる立地なので、美容院などのちょっとした用事で都心に出かけていくこともあるのだとか。
「新卒で離島に就職」と聞くと、かなり思い切って決断をしたのではないかと想像してしまいましたが、本田さんのお話からは、ごく自然に、島の暮らしに馴染んでいる様子が伺えました。
買い物・子育て・住宅など気になる暮らしのポイントをご紹介
利島での暮らしについて、もう少し様子を知るために、海老沢さんに島内を案内してもらいました。急坂が多く、意外にも車社会な利島。まずは港から集落の中心地を目指します。
島のミニスーパーとして機能する利島農協。食品や文具などの生活必需品だけでなく、利島産椿油やTシャツなどのお土産も販売しています。船が到着する日は品揃えが増えるので、お客さんも多いのだとか。
島には保育園と、小中学校があります。離島は高齢化が進んでいるというイメージがありますが、高齢化率は約25%と全国平均程度、移住者家族の子どもが多くいることもあって、15歳未満の人口比率は約19%と、全国平均(約12%)よりも高いそう。
利島には高校がないので、15歳になると多くの子どもはいったん島を出ていきます。伊豆大島の高校に行く子もいれば、都心の学校に通う子もいます。利島出身者のための寮などのサポート体制があり、離れた場所でも島のコミュニティは続いています。
島では、小中学生の習い事や大人のサークル活動も盛んです。サッカーや柔道、剣道、利島太鼓、フラダンス、フットサル、バドミントン、バスケットボール、バレーボール、書道などが行われています。
人口が少ない分、世代を超えて子どもと大人が一緒に参加するサークル活動も多く、多世代での交流、家族以外の大人と接する「斜めの関係」が豊かだという点も、利島での教育環境や地域活動の特徴といえそうです。
続いて、島の住宅事情について。
利島には不動産会社は存在せず、移住者は基本的に村が保有する公営住宅に居住することになります。中にはログハウス型の住居もあり、空きがあれば入居できることも。
利島らしい風景、ツバキの森へ
スーパーや保育園、学校、役場、住宅などの生活施設は、ほぼすべてが小さな集落の中に揃っています。集落を抜けると、そこは島の面積の約80%を占めるというヤブツバキの森です。
冬場になると激しい風が打ち付ける利島では、風に強くしっかり根を張る椿が植えられ、椿油の生産も行われてきました。
利島で椿油の生産が始められた年は定かではありませんが、1760年頃椿油で年貢を納めたという最初の記録が残っています。以来200年以上にわたり代々受け継がれ、その生産量は日本一を誇ります。
椿油はヘアケアとしての利用が知られていますが、オリーブオイルよりもあっさりした風味のため、食用としてサラダのドレッシングやパスタソース用として新たな商品開発も行っています。
式根島旅行がきっかけだった、海老沢さんの利島移住
最後に、海老沢さんが家族でよく訪れるという、一番展望のよい場所、南ケ山園地にやってきました。
「家族でピクニックしたり、のんびり物思いに浸りたいときなんかにここに来るんです」と海老沢さん。奥に見えるのが新島、その先にあるのが式根島と神津島だと教えてくれました。
海老沢さんが利島に移住したのは2017年。それまで都内で全く別の仕事をしていた海老沢さんは、休暇で式根島に旅行した際、帰りの船が利島に立ち寄ったときに、偶然、島を離れる男の子を島の人がお見送りしているシーンを目撃しました。
海老沢さん:「その様子になぜか感動してしまって。それから利島のことが気になりはじめて、都内で開催されていた離島関連のイベントに行ったことが転機になりました」
人口約300人の利島では誰もが顔見知りのような存在。後に、その見送りされていた子が実は利島に戻っていて、今では一緒にフットサルをする仲になっているそうです。このように、子どもや大人が混じっての交流が多くあるのも、都会とは違う魅力のひとつだと海老沢さんは話します。
島の未来を一緒につくる、仲間を募集します
株式会社TOSHIMAでは現在、ともに働く仲間を募集しています。
募集しているのは、海老沢さんと同じように、メインとなる利島港での港湾業務を担ってくれる人。具体的な業務内容については、「株式会社TOSHIMAで働く人が実感する「島で生きること」とは?<仕事編>」もご覧ください。
利島での暮らし、TOSHIMAの仕事に向いているのはどんな人なのかを伺ってみました。
清水さん: 「人口約300人の島で、島民の名前や顔はだいたいわかる、という規模感で生活をするので、島に合いそうな人というのも、なんとなく分かってきますね(笑)。家族との時間を増やしたいとか、趣味の釣りを楽しみたいなど「自分がこんな風に暮らしたい」という、島での生活イメージをはっきり持っている人が向いているのではないかと思います」
海老沢さん: 「あとは、お年寄りや小さい子からも愛されるような、人当たりがよく愛嬌がある人は、島の雰囲気に馴染みやすい気がします。元気よく挨拶をすればみんな返してくれるので、すぐに顔と名前も覚えて貰えますよ」
清水さん: 「僕は以前から『カフェをやりたい』って言い続けてて。飲食、簡易宿泊施設やコワーキングスペースなどのような、島の人が集う場所をつくりたいなと思ってるんです。利島に移住してきた若い人の可能性を増やしてあげたいし、高校で島を離れた子がまた島に帰ってきたときにも、そういう場所があるといいんじゃないかなと思うんです」
「別にカフェに限定するわけではなくて、島で生活していく上で必要だとか、「こういうのがあったらいいな」ということに対して、自分自身もアンテナを張りながら、一緒に考えていけたらいいですね」
現在、3名ほどの社員募集を想定しているという株式会社TOSHIMA。
「利島の人口が1%増えます」と笑いながら話をしてくれる清水さんは、社員を増やし、新しい事業を展開していく会社の未来、移住者が増え、豊かな暮らしが広がる島の未来を見据えているようです。
人口約300人の島ならではのあたたかいコミュニケーションのある暮らし、その島の暮らしを支え、未来を一緒につくっていく仕事に興味が湧いた方は、ぜひ株式会社TOSHIMAへの問い合わせをしてみてください。
(前編:<仕事編>はこちら)